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ENIAC誕生と巨大コンピュータ時代の幕開け - - 世界を変えた「巨獣」の記憶

弾道計算への渇望

 普段何気なく使っているスマートフォンやパソコンの「始まり」を考えたことがありますか。

 サクサク動くアプリ、瞬時に開くウェブページ。
 いまや当たり前のこの快適なデジタル体験は、ある一つの巨大な機械の誕生から始まったのです。

 時は1940年代。第二次世界大戦の最中です。
 戦争の行く末を左右するのは、正確な「計算」でした。
 特に、大砲で打ち出した弾丸がどこに落ちるかを予測する「弾道計算」は、あまりに複雑で、人の手による計算では何日もかかってしまう難題でした。

 当時の計算手(ほとんどが女性でした)たちは、ただひたすらに膨大な計算用紙に向き合っていたのです。

 こうした「計算への渇望」が生み出したのが、史上初の汎用電子式デジタルコンピュータ、ENIAC(エニアック)でした。

01-Two_women_operating_ENIAC

1.30トンの「巨獣」がもたらした衝撃

 1946年2月、ペンシルベニア大学でENIACは正式に発表されました。
 その姿は、まるでSF映画に登場する秘密基地の装置のようでした。

 「巨獣」と呼ぶにふさわしいそのスペックは、いま聞いても驚きしかありません。

 重さは30トン、設置には体育館のような広い部屋が必要でした。
 内部には、なんと18,000本以上の真空管が組み込まれていて、その発熱と消費電力は、周囲の街の明かりを一時的に暗くしてしまうほどだったそうです。

02-Replacing a bad tube meant checking among ENIAC's 19,000 possibilities

 しかし、その能力は、それまでの計算機の常識を根底から覆しました。
 手動の機械式計算機では到底たどり着けなかった、毎秒5,000回の加算という驚異的なスピードを実現したのです。

 何日もかかっていた弾道計算を、わずか数十秒で完了させたという事実は、当時の科学者たちにどれほどの衝撃を与えたことでしょう。

 このENIACの設計図を見ると、その巨大さ以上に、当時のエンジニアたちが「なんとかして早く正確に計算したい」という、熱狂的な情熱を真空管一本一本に込めていった「執念」のようなものが感じられるのです。

03-File:World's First Computer, the Electronic Numerical Integrator and Calculator (ENIAC)


2.巨大コンピュータ時代、熱狂の幕開け

 ENIACの成功は、世界中に「電子計算機」の可能性を示しました。
 これが、後の「巨大コンピュータ」(メインフレーム)を中心とする時代の幕開けとなりました。

 「コンピュータは、大きな組織が使う、大きな部屋に鎮座する巨大な機械である」という固定観念が生まれたのも、この時代です。
 大学や政府機関、そしてやがては大企業が、競って巨大な計算機を導入し始めました。

 銀行の預金管理、国勢調査、原子力の研究など、かつては想像もできなかった規模のデータ処理が可能になり、社会の仕組みそのものが変わっていったのです。

 ちなみに、この時代のコンピュータのプログラム作成を担ったのは、「プログラマ」と呼ばれる新しい専門職の人々でした。
 彼ら彼女らが、未来のデジタル社会の基礎を築いたのです。


3.過去の熱狂が未来をつなぐ

 やがて、ENIACが使っていた真空管は、より小さく、熱を持たないトランジスタに取って代わられます。

 そして、さらに小さな集積回路(IC)が生まれ、コンピュータはどんどん小型化して、性能は爆発的に向上しました。

 30トンもあったコンピュータが、私たちの手のひらに収まるスマートフォンへと変貌を遂げたわけです。

 ENIACの開発者たちが、もし現代のこの世界を見たら、きっと目を丸くすることでしょう。

 しかし、彼らが「高速で汎用的な計算」という夢を追いかけ、熱狂的に創り上げた技術の系譜が、現代のAIやIoTといった先端技術の根底に流れていることは間違いありません。

 巨大なENIACの熱狂から始まったデジタル化の波は、今も衰えることなく、私たちを未来へと連れて行ってくれるのです。


おわりに

 「ITと技術の過去・現在・未来」を考えるとき、その原点であるENIACの存在は欠かせません。

 もし興味を持たれたら、当時の熱気を伝えるドキュメンタリーや、関連の書籍に触れてみるのもおすすめです。



書籍紹介

・復刊 計算機の歴史 ―パスカルからノイマンまで― 単行本 –
 ハーマン H.ゴールドスタイン (著), 末包 良太 (翻訳), 米口 肇 (翻訳), 犬伏 茂之 (翻訳)
 共立出版 (2016/7/9)
 著者H.ゴールドスタインは,ENIACの開発プロジェクトで重要な役割を果たし,その後,IBM社において計算機開発の歴史とともに歩んできた人物。本書はパスカルの計算機から始まり,ノイマンによるプログラム内蔵方式の電子計算機誕生までの歴史を述べた。『計算機の歴史 パスカルからノイマンまで』として1979年初版発行後,以来,長年にわたり多数の読者にご愛読いただいてまいりました。この度,多くの読者からの要望を受け単行本に改装し発行するものです。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)

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02.Replacing a bad tube meant checking among ENIAC's 19,000 possibilities

03.File:World's First Computer, the Electronic Numerical Integrator and Calculator (ENIAC)


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