「ピースメーカー」 - - 現実と映画の世界観
「ピースメーカー」と言う言葉があります。
昨今の世界情勢を見ると、「平和を作る者」と言う直訳の意味を、素直には受け取れない気がします。
映画「ピースメーカー」も交えて、この言葉の表す現実を考えてみたいと思います。
(タイトルイラスト:「見えない敵に戦いを挑む若き日のドンキホーテ、それに驚くサンチョパンサ」)
1. 「ピースメーカー」とは何か
「ピースメーカー(Peacemaker)」とは、直訳すると「平和を作る者」を意味します。これは単に戦争を終わらせる人を指すのではなく、紛争や対立を解決し、安定した平和を築く役割を果たす人物や組織を指します。
しかし、歴史を振り返ると、「平和のため」と言いながらも、強硬な手段を取ることで逆に混乱を招いた事例も少なくありません。ピースメーカーは「救世主」にもなり得ますが、時には「悪魔の使者」として語られることもあるのです。
2. 歴史に見る「ピースメーカー」の例
(1) ナポレオン・ボナパルト
ナポレオンはフランス革命後の混乱を収束させ、ヨーロッパに秩序をもたらそうとしました。彼はフランス国内では法律を整備し、近代的な統治を確立しましたが、ヨーロッパ全土を征服しようとしたため、結果的に戦争を拡大させることになりました。彼の「平和」は、武力による支配の上に成り立っていたのです。
(2) ウィンストン・チャーチル
第二次世界大戦中、イギリスの首相としてナチス・ドイツと戦い、連合国を勝利へ導いたチャーチルは、平和を勝ち取るために徹底的に戦いました。彼の指導のもと、ヨーロッパはヒトラーの支配から解放されましたが、その後の冷戦の火種も残すことになりました。
(3) キューバ危機のケネディとフルシチョフ
1962年、アメリカとソ連が核戦争寸前まで対立した「キューバ危機」。このとき、アメリカのジョン・F・ケネディ大統領とソ連のニキータ・フルシチョフ首相は、ギリギリの交渉で戦争を回避しました。彼らは平和を守ったピースメーカーとされますが、その影には世界を恐怖に陥れた核の脅威がありました。
3. 映画『ピースメーカー』のテーマとは
1997年に公開された映画『ピースメーカー(The Peacemaker)』は、冷戦後の世界を舞台にしたサスペンス・アクション映画です。主演はジョージ・クルーニーとニコール・キッドマン。物語は、ロシアから盗まれた核弾頭がテロリストの手に渡り、その使用を阻止しようとするアメリカ政府の専門家たちの活躍を描いています。
(1) 物語の流れ
ロシアの核兵器が輸送中に奪われ、核テロの危機が発生。アメリカ政府は核兵器専門家のジュリア・ケリー博士(ニコール・キッドマン)と、軍人のトム・デヴォー大佐(ジョージ・クルーニー)を派遣し、事件の背後に潜む陰謀を追います。
(2) 映画のテーマ
この映画では、「平和のための戦い」という矛盾が描かれています。核兵器を使わせないために武力を行使する、正義の名のもとに敵を排除する・・・。こうした「ピースメーカー」の行動は、本当に平和をもたらすのか、それとも新たな混乱を生むのか。映画は、その問いを観客に投げかけます。
4. 参考となる書籍
(1)戦争と平和(一)〜(四)
(新潮文庫) 文庫
トルストイ (著), 工藤 精一郎 (翻訳)
新潮社 改版 (2005/8/1)
19世紀初頭、ナポレオンのロシア侵入という歴史的大事件に際して発揮されたロシア人の民族性を、貴族社会と民衆のありさまを余すところなく描きつくすことを通して謳いあげた一大叙事詩。1805年アウステルリッツの会戦でフランス軍に打ち破られ、もどってきた平和な暮しのなかにも、きたるべき危機の予感がただようロシア社交界の雰囲気を描きだすところから物語の幕があがる。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
(2)第二次大戦回顧録抄
ウィンストン チャーチル (著)
毎日新聞社 (翻訳)
中央公論新社 (2001/7/25)
ノーベル文学賞に輝くチャーチル畢生の大著のエッセンスをこの一冊に凝縮。連合国最高首脳が自ら綴った、第二次世界大戦の真実。チャーチルの大著からその要所を余すところなく抜き出してこの一冊に凝縮。ヨーロッパで、そしてアジアで、どんな決断を迫られたのか。連合国最高首脳自らが迫真の名調子で綴る第二次世界大戦史の決定版。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
(3)冷戦―その歴史と問題点
ジョン・L. ガディス (著)、 河合 秀和/鈴木 健人 (翻訳)
彩流社 (2007/6/25)
ドイツとベルリンは、ソ連と米英仏の共同占領の下におかれ、冷戦が進むにつれ、東西ドイツと東西ベルリンに二重に分割される。それにたいして日本は、原爆の威力によってアメリカが日本占領の主導権を握った。やがて、東西両陣営で従属化された中小の国々はかえって自立性を主張し、さらには冷戦の中立勢力や第三世界のさまざまな勢力が、「尻尾が犬を振る」という現象を起こしたが、日本は、アメリカに自立の気配を見せることもなかった。そのため、冷戦の意識が薄く、冷戦は終わったという意識も薄い。それが国民の政治意識と政府の内外政策にいかに反映しているのか、日本の読者に問いかけられている。
( ※ 書籍の解説等は原則としてリンク先(Amazon)における解説をベースに記載しています。詳細内容はリンク先を参照願います。)
おわりに
ピースメーカーとは、単なる「平和を愛する人」ではなく、時に強硬な手段を取ることで平和を守ろうとする存在です。しかし、その方法が常に正しいとは限らず、歴史には「平和のため」と称して戦争を引き起こした例もあります。
私たちが平和を考えるとき、それがどのような手段で実現されるのか、そしてその結果は本当に平和なのかを見極めることが重要なのかもしれません。
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