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副業診断士として「何を売る人なのか」を言語化する


はじめに

中小企業診断士として登録し、本業を続けながら、副業で経営支援・業務改善の活動を始めた。稼働に充てられるのは週に最大8時間ほど。本業にかける時間をおろそかにはできない。

限られた時間の中で最初に直面したのは、「案件が来ない」という、ごく基本的な壁だった。

そもそも知られていない

資格も実務経験もある。RPA導入による工数削減、紙伝票の電子化、外注費の大幅な削減など、数字で語れる実績も積んできた。それでも案件にはそうそう簡単にはつながらない。

考えてみれば当然だった。自分は所属企業の中では、それなりに何をしてきた人かを知ってもらえている。日々の仕事ぶりや過去の成果、人となりまで含めて、時間をかけて信用を積み上げてきたからだ。多少説明が足りなくても、「あの人ならこういうことができる」という補完が働く。

しかし、社外ではその前提が一切ない。副業診断士として外に立った瞬間、自分はほぼ「誰でもない人」になる。資格を持っていることも、改善実績があることも、相手にとっては最初から知られているわけではない。

しかも副業という立場では、使える時間が限られている。長い時間をかけて関係を温めたり、多くの場数で少しずつ理解してもらったりするやり方には限界がある。だからこそ社外では、短時間で「この人は何をしてくれる人なのか」が伝わらなければ、そもそも検討の土俵に乗らない。

ここで気づいたのは、「知られていない」という問題は、単なる露出不足ではないということだ。もちろん知ってもらう量は必要だが、それ以前に、自分が何を売る人なのかが一言で伝わる形になっていない。案件につながりにくかった理由は、能力不足というより、この説明不足にあるのではないか。そう考えるようになった。

そこで集客に動く前に、自分の軸を言語化する作業に時間を使うことにした。

自身の経験とは?

最初にやったのは、経験の棚卸しである。これまでの取り組みを、業種や肩書きではなく、「どの課題に、何をして、どれだけ効いたか」という成果の単位で並べ直した。すると、自分の仕事には一貫した型があることが見えてきた。

提案だけで終わらせず、現場に入って何が時間を奪っているかを見て、自分の手で直すところまでやる。それが共通していた。

次に、その型を一行に凝縮した。

「経営を診る目と、システムを作る手。その両方で、現場の余白をつくる」。

余白とは、定型業務や手戻りに溶けていた時間を取り戻し、本来価値を生む活動に振り向けられる状態を指す。自動化も分析も、それ自体が目的ではなく、この余白をつくるための手段だと整理できた。

つまり、自分が売りたいのは「診断士資格」そのものでも、「ITが分かること」そのものでもない。現場の時間を軽くし、経営が前に進む余白をつくることであり、そのために「診る目」と「作る手」の両方を使う人間だ、ということである。

判断基準も言語化する

あわせて、受けるべき案件かどうかの判断基準も決めた。

  • 現場から入る仕事か

  • 相手の時間が本当に軽くなるか

  • 診る目と作る手の両方が要るか

この三つである。限られた時間を、軸から外れた仕事で埋めないための歯止めでもある。

この作業の途中で、過去に応募して通った文面と通らなかった文面を見比べる機会もあった。そこで分かったのは、結果を分けていたのは経験の多寡ではなく、見せ方の差だったということだ。

通った文面は、相手の課題に自分の経験をどう結びつけるかが具体的に書かれ、要点が短時間で伝わる構造になっていた。通らなかった文面は、内容は悪くないのに、自分の経歴の説明が先行し、相手にとっての意味が読み取りにくかった

社内なら経歴の背景を知っている人が補ってくれる。だが社外では、それは起きない。だからこそ、「何をしてきた人か」より先に、「何を任せられる人か」が伝わる形に編集する必要がある。能力ではなく、編集と構成の問題だと気づいたことは、軸を整える作業の後押しになった。

実世界での具体的活動

ここまでを一枚のシートにまとめ、同時に、成果を数字で示した実績の一覧も作った。誰のどの課題に、何をして、どれだけ効いたか。読み手が短時間で判断できる形を意識し、職務経歴の要約ではなく、何を任せられるかが伝わる資料にすることを心がけた。数字を前面に出すのは、経験を印象ではなく事実として伝えたかったからだ。

並行して、複数の公的支援機関や専門家登録の制度にも登録してきた。ただ、登録しただけでは案件は動かないことも分かってきた。これからは、チャネルをやみくもに広げるより、関係をつくれる窓口に絞り、担当者に自分の強みを一行で覚えてもらう動きに時間を割くつもりだ。

副業の立場では、動ける量に限界がある。だからこそ、広く薄く知られるより、必要な相手に「この人はこういう仕事をする人だ」と明確に認識してもらうことのほうが重要になる。

現状は、過去に手がけた案件が一区切りし、新しい依頼につなげるための土台を組み直している段階にある。派手な成果はまだない。それでも、「何を売る人なのか」が自分の中で定まったことは、限られた時間で動くうえで確かな足場になっている。

おわりに

資格や実績は、それ単体では仕事を連れてこない。社外ではまず、「この人は何をしてくれる人なのか」が伝わって初めて、実績や資格が意味を持つ。そんな当たり前のことを、遠回りして再確認した。

副業診断士にとって、時間は最も限られた資源だ。だからこそ、「とにかく知ってもらう」より先に、「どう知られるか」を整える必要があるのだと思う。

次は、この軸を携えて、実際に縁をつくる動きへ移していく。その過程も、折を見て書き残していきたい。

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