二次元至上主義の腐女子が初めて芸能人のファンになりXの深淵をのぞいた話
前置き
私が大好きな漫画家兼エッセイストのカレー沢薫先生は、1日48時間Twitter(現・X)をやっていて、以前から
SNSというのはキレイなものから汚いものまで、何でも流れてくるガンジス川のようなもの
とおっしゃっていた。
Xのヘビーユーザーの方からすれば「何を今さら」と呆れるくらいの常識なのだろうが、もともとTwitter(X)を好きな漫画家さんの情報収集用に使う程度のライトユーザーだった私は、本当の意味を理解していなかった。
しかし、この度、生まれて初めて芸能人のガチファンになり、毎日Xを見るようになった途端、その方の熱愛報道が流れ、カレー沢先生が常々「ドブ川」と呼んでいたSNSの深淵をのぞき見ることになった。
よくある「心が疲れた時はSNSから離れましょう」という勧告に従って、私は少しだけXと距離を置き、数日頭を冷やした。
そして、今回体験した初めてのファン心理とXから得た教訓を表出したくなり、結局いつものようにnoteに記事を書くことにした。
Xと比べてnoteはうっかり記事が目に入ってしまう可能性が低く、あえてこの記事を読もうとしてくれた方の目にしか触れないし、以前から私の長文に付き合ってくださっている奇特な方は、きっと私の気持ちを理解してくださると信じている。
注:普段書いているようなBL作品の感想や考察ではないので、途中でこの記事無理だな、つまらないな、と思ったらいつでも引き返してください。
本題
私は10代の頃から二次元至上主義で、今まで芸能人のファンになったことは一度もなかったのだが、映画「10 DANCE」で完全に竹内涼真さんの虜になった。
すぐにファンクラブに入会し、「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(以下、じゃあつく)を配信で、「再会」は数年ぶりに地上波ドラマをリアタイで見て、その演技の振り幅に圧倒された。
最近出演されたバラエティや動画は繰り返し見て、雑誌や新聞なども全てチェックして買い、2026年4月のミュージカル公演は東京・大阪公演のチケットを確保して、毎日竹内さんへの愛をXで呟かずにはいられないほど夢中になった。
こんなに可愛くてかっこよくて爽やかで清々しくて明るくてポジティブでセクシーで魅力的な人が存在するなんて信じられなかった。
役作りに対する真剣さや俳優としての姿勢、豊かな表現力に加えて、「10 DANCE」で共演した町田啓太さんへの感謝と信頼をはっきりと言葉にされる素直でまっすぐな人間性が本当に素敵だと思った。
それでも、私は周囲には
「ファンと言っても、もう大人だから恋とかじゃないし、ちゃんと距離感わかってるから。竹内さんが結婚して子供ができても祝福するし」
と自戒を込めて宣言していた。
仲の良いご家庭で育った竹内さんのことだから、きっと早めに結婚して子供もたくさん(自分がそうだったように3人くらいは)欲しいと思っているだろうな、と想像していたし、「実際にそうなっても私は平気。私が好きなのは俳優としての竹内さんだから」という謎の自信があった。
今までアイドルや俳優の熱愛や結婚が発覚すると、彼らのファンがショックを受けて「寝込む」とか「仕事休む」とか「ファンやめる」とかいうのを聞く度に、その気持ちが全くわからなくて、「推しと自分が付き合ったり結婚する可能性なんて全くないのに、なぜそんな気持ちに?」と無神経なことを考えていた。(さすがに本人には言わない)
しかし、先日竹内さんの熱愛が週刊誌によって報道された時、私は予想以上にショックを受け、今まで全く縁がないと思っていたファン心理を痛感することになった。
お相手が「10 DANCE」で共演された女優さんだったことが、一層私を打ちのめした。
その方は、竹内さんとバランスよくペアを組めるほど背が高くてスタイルが良くて長くてまっすぐな美脚で、幼い頃からバレエで鍛えただけあって見事なダンスを披露されていた。
撮影中、落ち込む竹内さんを励ましたエピソードや、Xmas ウォッチパーティでの気さくで優しい話しぶりから性格の良さが伝わって来たし、竹内さんともすごく良い関係なのがわかった。
竹内さんのお相手としてこれほど好感が持てる女性もいないだろう。
それなのに、とてもお似合いで祝福したいと思う一方で、めちゃくちゃショックを受けて呆然とする自分がいた。
私、ものすごくダメージを受けている……
これがファン心理?
それとも鈴木信也は杉木先生のものだという腐女子心理?
「心が2つある~」とハチワレちゃんのように叫び狂った。
リアコじゃないつもりだったのに、なぜ私はこんなに傷ついているのだろう。
竹内さんのお相手が、「じゃあつく」や「再会」の共演女優さんだったらどうだろう…と妄想してみて気づいた。
他の女優さんならここまでショックを受けないのだ。
どうやら私は「鈴木信也を演じる竹内涼真」に恋をしていたようだ。
輝く金髪、鍛え上げられた肉体、すらっとした立ち姿、可愛い笑顔、タバコを咥えるセクシーな仕草、エルメスのブレスレットをつけた前腕の筋肉、小さな炎のようにカーネリアンが光る小指のリング、鋭くて情熱的な眼差し、杉木の唇をはむっと噛んだ唇……その全てが魔法のように美しく、私は完全に幻惑されていた。
フィクションと現実は違う、役と俳優さんは別物と頭ではわかっていても、毎晩毎夜「10 DANCE」を見てあの世界にどっぷりと浸るあまり、夢と現実の境が薄れていたのかもしれない。
だから、大好きな鈴木信也をアキちゃんに奪われた、信也には杉木先生がいるのに!!という歪んだ心理に陥ってしまったようだ。
「10 DANCE」で鈴木とアキが一緒にいるシーンを見たら、邪念が生じて作品世界に没入できないのではと心配になった私は、その晩、自分がどんな感情になるのか検証するため、傷つくのを覚悟でドキドキしながら「10 DANCE」を見た。
しかし、結局は何の心配もいらなかった。
私がどんなに穿った目で見ても、映画の中で竹内さんが演じる鈴木が愛しているのは、間違いなく町田さんが演じる杉木ただ一人だった。
現実がどうあろうとも、物語の中の二人の愛は永遠で、決して揺らがない。そこにはどんな邪念が入る隙もなかった。
だが、Xに流れてくるポストを見ると「もう10 DANCEを純粋に楽しめない」と考える人もいるようだった。
私がXの深淵をのぞいたのはここからで、まず「熱愛報道出たからチラついてドラマ見られないとか、どれだけ繊細なの?」というポストに腹が立った。
カレー沢先生が常々、「ネット議論は不毛だからやめておけ」とおっしゃっていたから、リプは我慢したが(ここには書く)
ああ、繊細だよ? 普通の人より繊細だから腐女子なんだよ!
と心の中で反論した。
(もちろんそうでない方もいると思いますが、腐女子って他の人が気づかないような微妙な関係性とか行間とか表現とかに敏感なところありませんか?)
さらに「役柄と役者を分けて考えられないあなたが悪い」とか傷ついている人をさらに傷つけるような意見もあって、「これがファン同士が傷つけ合い、殴り合うというXの地獄か!」と深淵を垣間見た私は、さっさと逃げ出すことにした。
一旦冷静になっておそるおそるXを開くと、やはりいろいろな意見があったのだが、私が特に気になったのは以下の2つだ。
① そもそも町田さんは既婚者だ
町田さんは既婚者だということと、今回のことは全く意味合いが違う。
比べるなら、もしも町田さんが独身で、共演を機に房子役の女優さんと付き合い始めたら町田さんのファンはどう思うかだ。
② 古の腐女子の教え
「私は古の腐女子(or BLオタク)ですが」みたいな前置きから始まって「俳優さんの恋愛で作品の世界観が壊れるとか言う人がいると、良質なBL作品に俳優が出てくれなくなる。これからもいい実写化をやってほしいから役と役者は分けて見てほしい」と説教みたいなポストもあって、古と自称するからには30代後半以降の方なのだろうが、年を取ると感受性が鈍くなるからいろんな物事に対して図太くなるけど(私にもその実感はある)、まだ感性が瑞々しい10代、20代の若いお嬢さんならショックを受けても仕方なかろう…とその無理解と想像力の欠如に悲しくなった。
大抵の人は「役柄と役者が別」なのはわかっていると思う。
でも、頭で理解していることと、心がそれに追いつくかはまた別問題だ。
竹内さんと町田さんが異性愛者なのは理解している。
愛し合っているのは現実の二人ではない。
そんなの、みんなきっとわかっている。
でも、同じ画面に出てくる俳優さんたちがこの共演をきっかけに交際が始まったと知って、現実世界での関係性を無視できず、作品世界に没入することができなくなってしまったという人がいるのも仕方ないではないか。
結局、それは作品を愛しているから生じる感情なのだ。
お相手の女優さんを攻撃するとか、作品に対して反転アンチになるとかならともかく、作品を愛しているからこそ傷ついている人に対して追い打ちをかけたり、感情を否定したりするなよと心底感じた。
そういう意味では学びがあった。
私はと言えば、「10DANCEが好きすぎてのめり込んでいるのでしょうね。いい映画なので仕方ない」という慰めなのか批判なのかよくわからないリプに「余計なお世話だ!」と少しイラっとしながらも結局納得し、お陰で冷静になれた。
確かに、映画「10 DANCE」が夢のように素晴らしく、竹内さんが魅力的過ぎて理性を失い、すっかりのぼせ上っていたようだ。
今回の熱愛報道で頭から冷水を浴びせられて、「10 DANCE」への熱狂的な執着と情熱は少し冷めた。
それでも、愛は変わらず残っている。
私はこれからも「10 DANCE」を愛するし、以前より少し離れた場所から俳優・竹内涼真を見守ろうと思う。(ファンクラブも入ったままだ)
今回の出来事で私は、以前は全く理解できなかったファン心理を実感することができた。
「人間は、人によって生き方、感じ方、考え方が全く違う」(カレー沢薫「1億総SNS時代の戦略」)ことを肝に銘じ、無神経に他人の感情を否定することがないよう気を付けようと思った。
とりわけ、その感情の源に愛がある場合には…。
