都営三田線新型車両(6500形)の概要
都営三田線は1968年(昭和43年)に開業し、2000年(平成12年)の目黒~三田間の開業により全線が開通しました。そして、2018年(平成30年)には開業50周年を迎えました。
開業当初には、セミステンレス製車両の6000形で運行されていましたが、1993年(平成5年)から2000年(平成12年)までの間に、オールステンレス製車両の6300形が導入され、その後22年が経過しています。
現在の三田線は、東京メトロ南北線と接続し、東急目黒線と相互直通運転を行っています。
東急目黒線を含め沿線地域の開発が進み、三田線をご利用のお客様のさらなる増加が見込まれることから、混雑緩和を図るため8両編成化を進めることとしました。抜本的な輸送力増強と更なるサービス向上を目的とした8両編成の新型車両として、6500形車両1次車全13編成104両を導入することとなりました。
デザインコンセプト
(1)デザイン検討チームによるデザイン検討
設計当初の検討事項である車内外の主要デザインについては、三田線の認知度や魅力の向上を目指すべく、車両部門以外の部署を含めて構成されたデザイン検討チームにより検討を進めました。基本構想は、「スマート+コンフォート」をコンセプトとし、通勤車両として長年愛されるように無駄がなく機能美を感じさせるものに仕上げました。
エクステリアデザイン(外装)は、移動を担う都市の一部としての存在感を表現したスマートな造形としました。先頭部も含めてシンプルな箱型とすることで、行先表示器や前照灯に対しては視覚的なノイズとなる要素を極力抑えた収まりとなりました。
インテリアデザイン(内装)は、路線カラーの青色を用いながらガラス素材を多用した透明感や清潔感のあるデザインとしました。車端部の座席は優先席とし、フリースペースも全号車に設けました。吊手は握りやすい新形状とし、一部を低い位置に配置することで縦握り棒と合わせて多くのお客様に掴まる機会を提供できるようになりました。荷棚の高さも低めに配置することで利用しやすくなりました。このように、「人にやさしい車両」を目指し、随所にユニバーサルデザインの考え方を取り入れました。さらに車内案内表示器として全ドア上に3画面タイプの液晶ディスプレイを導入し、多言語かつ視認性の高い情報発信を行うことで、訪日旅行客にも十分な案内の提供が可能となりました。


主要諸元と編成
編成は西高島平方を1号車、目黒方を8号車とし、西高島平方からTc1+M2+M3+T4+T5+M6+M7+Tc8の8両編成としました。
車体断面は、軒部形状を雨ドイ兼用とするなどの工夫により側面が垂直に立ち上がるフラットな構成としました。床面高さはホームと逆段差が生じないよう考慮して1130mmとし、さらに出入口クツズリ部を車両限界3mm以内とするなど、車両乗降時の段差及び隙間が可能な限り小さくなるよう設定しました。
M車は2両1ユニットの構成で、パンタはM2、M6車に2台ずつ配置しており、M2車からM3車、M6車からM7車にDC1500Vが供給されます。低圧電源装置は、IGBT素子を使用した静止形インバータで、出力は三相440V,260kVAとしています。

車両概要
(1)車体構造
車体構造はアルミニウム合金製ダブルスキン構造であり、大型の押出形材を入熱量が少なくひずみを低減しながらも深い溶け込みが得られるレーザー・MIGハイブリッド溶接で組み立て、高い構体強度を確保しています。先頭構体もアルミニウム合金を用いた骨皮構造とし、必要な箇所に必要な強度、剛性を確保しました。
(2)客室設備
客室設備は、ユニバーサルデザインの考え方を多く取り入れています。床面色の区別によるドア付近の明確化に加えて、側引戸内張板に黄色のテープ状標記を配し、戸先部の視認性を向上させています。
窓ガラスは、IRカットグリーンガラスを採用し、熱暑感を低減しています。側引戸の窓には複層ガラスを用い、冬季のガラス表面での結露発生を抑えるようにしています。
座席は片持ち式のロングシートで、扉間を6人掛けとすることでドア付近の空間を拡大し、乗降時の流動性を向上させています。一人当たりの座席幅も従来車よりゆとりある寸法としています。座面は各席を区分したバケット形状で、中間に設けた保護棒と合わせて一人分の着席位置を明確化し、より多くのお客様に座席をご利用いただけるようになりました。一般席の表布は濃い青色のモケットで、汚れが目立ちにくいよう杉綾柄をアレンジした細かな模様を配しています。優先席は青系と親和性が高い緑系の色を採用し、統一感を維持しながら一般席との識別性も付与しています。また、座席横の袖仕切は大型化し、お客様同士の接触を妨げる等の安全性にも配慮しています。
戸閉装置は、ブラシレスモータによるラックアンドピニオン方式の電気式戸閉装置を搭載しています。ドアの開閉制御はマイコン式制御装置にて行っており、開閉速度・クッション制御、戸挟み防止制御等の多様な制御を行うことが可能となっております。

(3)列車情報制御装置(TCMS)
6300形に搭載されている列車制御情報管理装置(TIS)からさらに機能を拡張させた列車情報制御装置(TCMS)を採用しています。
従来のTISが各中央装置・ユニット局で演算/制御を行う分散制御方式であったのに対し、TCMSでは各種演算機能を中央ユニットに集約する中央集約方式を採用しています。このため、TISにおいて各車に配置されていたユニット局は、TCMSではデータの伝送機能に特化した伝送ユニットとなっています。
車両間伝送速度は、TISの9600bpsから100Mbpsへ大幅に向上しており、車両の運転保安上重要な制御系を二重回線としています。
(4)制御方式
主回路は、全閉式三相誘導電動機を2レベル式VVVFインバータで制御する方式です。1台のインバータで主電動機4台を制御する1C4M方式を採用し、インバータ箱1箱につき2群のインバータを備えた構成としています。主回路素子には低損失で高温動作可能なSiC(炭化ケイ素)を使用したHybrid-SiC制御装置を使用しています。従来品と比較して回生ブレーキ特性を向上させることができるため、消費エネルギー削減といった省エネ効果も期待できます。
運転台からの力行・ブレーキなどの指令は、TCMSがノッチ条件や車両の荷重条件等を加味し、トルク演算を行った後、各VVVFインバータ装置及びブレーキ制御装置へ引張力やブレーキ力を割り振る形で指令を伝えます。
(5)台車
台車はコイルばね軸ハリ式ボルスタレス空気ばね台車としています。空気ばねについては、低床化のため全高を低くし、急曲線を滑らかに通過できるよう水平方向剛性を低くしたものを採用しています。
踏面ブレーキはブレーキストロークの調整が不要なユニットブレーキ及びワンタッチ式のシューコッタを採用することで、メンテナンス性の向上を図っています。

レール塗油装置については、従来の機械的検出方式より高精度であるジャイロ式曲線検知器を採用し無駄のない塗油を実現しています。
(6)ブレーキ
ブレーキ方式は、回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキであり、ブレーキ種別としては、常用ブレーキ、非常ブレーキ、保安ブレーキ、耐雪ブレーキ、駐車ブレーキの5つがあります。
常用ブレーキは、TCMSによる編成ブレーキ力制御にて、応荷重制御と電空協調制御を行います。M車の回生ブレーキを優先して作用させることで、省エネルギー運転と制輪子の摩耗量の低減が可能となります。
駐車ブレーキは三田線車両で初めて搭載され、留置中にバネ力によりブレーキ力を作用させて車両の転動を防止することができます。
ブレーキ時滑走での車輪フラット及びブレーキ距離の延伸を防止するため、滑走した台車のブレーキ力を一時的に弱めて再粘着を促進させる滑走再粘着制御機能を設けています。
(7)乗務員室機器配置
運転台にはTCMS画面を2台配置しております。これにより、運転情報や編成内装置の故障情報のほか、各種表示灯や計器類も表示することが可能です。1つの画面が故障した場合でも、残りの健全な1つの画面で2つの画面分の情報を表示することで対応できます。また、TCMS画面とは別に映像表示器を設置しており、非常通報器が動作した際には、該当の車両の防犯カメラの映像を映像表示器に映すことで、ワンマン列車における迅速な状況確認が期待できます。
主幹制御器については、ノッチ段数は6300形と同様に力行4段、常用ブレーキ7段となっております。また、ドアの開閉や出発を扱う主要なスイッチ類は、直通車両規格に準じた色や配置でテーブル面に並んでいます。

(8)車両情報収集システム
より良い輸送サービスの実現に向けて、車両の状態や故障状況、さらには運転情報などのデータを自動で収集できる車両情報収集システムを導入しました。
このシステムは、TCMSが収集した情報を車両に搭載された高速無線通信機器を利用してクラウドサービスへ送信し、車両の各種データを地上側PCで確認できるものです。このシステムを導入することで、「車両状況のリアルタイムな可視化」と「車両データの自動蓄積」を実現します。
「車両状況のリアルタイムな可視化」は、走行中の車両状態(ブレーキ、速度、混雑状況など)や車両異常時の状態を、運転士だけでなく指令員や保守作業員も詳細かつリアルタイムに共有でき、状態に応じた車両運用やより迅速な故障対応等が可能となりました。
また、「車両データの自動蓄積」は、TCMSが収集したデータを自動的に蓄積することで、機器ごとの詳細な傾向分析などが可能となります。その結果を活用して、劣化傾向の把握や部品交換周期の最適化など、より効果的な予防保全を目指します。

さいごに
6500形の最初の編成となる6501編成は、大阪府東大阪市に工場を持つ近畿車輛株式会社で製作され、越谷貨物ターミナルへの甲種輸送を経て、2020年(令和2年)11月3日から11月6日にかけて志村車両検修場に陸送しました。その後、各種試験調整や走行安全性の確認と並行して6500形車両の第2編成以降の製造・搬入を行い、地上設備の8両化対応も完了し、2022年(令和4年)5月から段階的に8両編成列車の営業投入を進め、令和4年10月1日に全13編成の投入を完了しました。
また、三田線では8両化対応のほかにも、東急新横浜線の開業に伴い、日吉駅から新横浜駅への乗り入れ対応を行いました。
このように、三田線6500形車両の導入は、車両メーカーをはじめ、多くの関係者の協力により実現したことを付け加え、結びとします。
参考文献 近畿車輛株式会社「三田線6500形車両概要書(1次車)」
