【短編】フレッシュなモーニングを
「コーヒーは好き?新鮮なコーヒーを楽しめる店があるんだ」
1学年上で、ウエービーヘアーのまんまるメガネが印象的な越野さんに誘われた大学入学したての私、茉優は突然のお誘いに逡巡した。文学サークルの歓迎コンパでたまたま隣で、小説の話で盛り上がっていたところでいきなりの申し出だった。
戸惑いを感じながらも魅力的な提案にこころが動いた。高校まで読書好きの地味な存在だったから、大学デビューするんだ。垢抜けるんだ。
「うん、行ってみたいです」
返事を聞いた越野さんは嬉しそうに笑った。
「本当!?やった!じゃあ、連絡先を教えて」
連絡先を交換して、その日に越野さんからメッセージがきた。よほど嬉しかったのだろう。私ってモテるのかな?いやいや、自惚れてはいけない。
だが次の瞬間、思いもよらない提案を受けた。
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『土曜日の午前3時に車で迎えに行くよ』
『え、時間合ってます?』
『合ってる合ってる。
夜明け前から行かないと間に合わないんだ』
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怪しい。でも、何かするつもりならあからさまに怪しいこんな時間に提案しないはず。私は越野さんの提案を受け入れた。
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土曜日、午前3時。
茉優は眠い目をこすりながらも精一杯のおしゃれをして待合せ場所のコンビニに向かった。コンビニにはコンパクトカーが1台。運転席にあのメガネが見える。
「おはよう茉優さん、ごめんね。こんなに朝早く」
「いえ、大丈夫です。でもなぜこんな時間に?」
「うん、遠いからこの時間じゃないと日の出に間に合わないんだ」
「日の出?」
私を乗せて上機嫌で車を走らせる越野さん。車内にはジャズが流れる。高速道路を走り、雑木林の道を駆け抜け、林道を抜けていく先に目的地があった。
ログハウスの前に車が停まっている。どうやら目的は同じようだ。越野さんが車を降り、ログハウスで何かを注文して戻ってきた。手にはふたつのカップを持って。
「はい、どうぞ。茉優さん、外に行こう」
カップには温かい飲み物が入っている。ログハウスの裏に回るとちょうど朝日が昇ってきた。
「きれい……」
ログハウスの裏は牧場で、その手前のベンチに座った2人を朝日が照らす。カップの飲み物に口をつけると、飲んだことのないほどクリーミーなホットカフェオレだった。
「おいしい!」
「でしょ?牧場主さんが厳選した豆を焙煎して、搾ったばかりの牛乳を混ぜて作ったカフェオレ。そしておいしい空気にきれいな朝日!僕の最高の贅沢なんだ」
そう言って笑う越野さんに、私は思わずドキドキしてしまった。新しい何かが始まる予感がする。
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