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#2「なんかちょっと、ここでやれないかな」――モノを届けるデザインから、地域の資源と出会いを組み合わせるデザインへ

わたしたちtokotodesign合同会社は“行動と体験をデザインする”デザインファームです。
自己紹介はこちらからご覧ください▽▽▽

今回は、tokotodesign(トコトデザイン)の代表・山千代航がたどってきたデザインの道を深堀していきます。


<プロフィール>1992年北海道生まれ、福岡育ち。芝浦工業大学デザイン工学部卒業後、桑沢デザイン研究所を修了。東京での勤務を経て、2017年に高知県佐川町へ移住し、地域おこし協力隊として「さかわ発明ラボ」の立ち上げに携わる。2023年にtokotodesign合同会社を設立。地域に関わる多様な立場の人々と協働しながら、企画・デザイン・運営を横断し、人や地域の可能性を引き出すプロジェクトの実践に取り組んでいる。

山千代はもともと地域おこしや場づくりの専門家だったわけではありません。むしろ、最初はまったく違う場所で製品を「届けるためのデザイン」と格闘していました。

ところが、参加したデザインキャンプ*にて思わぬ出会いがあり、「場」というものに関心を持つようになります。

*さかわ発明キャンプ:高知県佐川町とNPO法人issue+designが共同で2016年に実施した、地域おこし協力隊「発明職」の2泊3日の採用選考合宿およびワークショップイベント

山ってやっぱり面白いんですよ、街にいると。
でも、普通に暮らしている人にとっては、どこか遠い世界の話になってしまう。だから、この素晴らしい資源をどうにかして町の人に届けたかった。『なんかちょっと、この平地に林業の現場感をもってこれないかな 』って思ったんです

かつて移住先の高知県佐川町で手がけたイベント「キコリパーク」の始まりを、山千代はそう振り返ります。

天才的ひらめきがあったのか、というとそういうわけではありません。
そこにある環境をじっと見つめ、
出会った人を思い浮かべ、
「掛け合わせたら面白いんじゃないか」という妄想を具現化してみる。
それが山千代航のデザイン。

この「なんかちょっとやれないかな」という一言こそが、今のtokotodesignの核心です。そこに至るまでの道を聞きました。


1.モノづくりのジレンマと、「届ける仕組み」への興味

大学ではデザイン工学部でモノの製造技術を研究し、卒業後は小規模商社で海外の優れた製品を日本向けにローカライズして届ける仕事に就いた山千代。

単に海外製品を右から左へ流すのではなく、パッケージのデザインから説明書、ECサイト、店頭のポップまで、「どうすれば日本の使い手に共感してもらえるか」を一気通貫で設計する。この「手触り感を持って使い手に届けるプロセス」に、大きな面白さと手応えを感じていました。

しかし、さらにモノづくりを極めようと、会社に務めながら夜間の専門学校でプロダクトデザインを学ぶうちに、あるジレンマが生まれます。

「世の中にはもう、優れたモノがあふれているのではないか?」
「ゼロから新しいモノを生み出すことだけが、デザインなのだろうか?」

そんな、モノづくりに対する純粋な問いを抱えていたとき、専門学校の仲間に「高知でおもしろい試みがあるよ」と紹介されたのが、佐川町での「発明キャンプ」でした。
自分の力を試してみたい。
その一心で飛び込んだその場所が、彼の人生を大きく変えることになります。

2. 「自分が主役」から、「場のお膳立て」への転換

発明キャンプでの縁が繋がり、佐川町の地域おこし協力隊として「さかわ発明ラボ」の立ち上げに関わることになった山千代。
当時の彼は「ものづくりや発明をたくさんするぞ!」と意気込んでいましたが、待っていたのは予想とは少し違うミッションでした。

👨山千代:
「佐川に行ってみたら、何かを発明する時間よりも、新しくスタートする『発明ラボ』という場所をどう回していくか、どういう価値を出して地域に確立させるか、という運営の仕事が目下の課題だったんです。どちらかと言えば、イベント屋だったり、公共空間を作る仕事。最初は『人がものを作る場所のお膳立てばかりしているな……』とジレンマを感じることもありました」

しかし、この「お膳立て」の経験こそが、彼の中にあったデザインの定義を大きくアップデートさせていきます。

自分が主役になって何かを作るのではない。地域の人が集まり、何かを生み出したくなるような「場」や「関係性」、そこで使う「ツールやキット」をデザインすること。その面白さに気づき始めたころ、あの「キコリパーク」のプロジェクトが立ち上がります。

3. 出会いの組み合わせで、自分自身がデザインされる

高知県佐川町は、自伐型林業(環境に配慮した持続可能な林業)が盛んな町です。地元のキコリたちから「何か一緒にできないかな」と声をかけられたとき、商社時代にさまざまなビジネスの現場を見てきた山千代の頭の中で、「複雑な価値を翻訳して届ける」という意識が芽生え始めました。

山の魅力を、町の人が全身で楽しめる体験に変えられないか――。 

街なかの駐車場に2トンのウッドチップを敷き詰め、
山の息吹が香るずっしりとしたヒノキやスギの丸太をゴロゴロと持ち込む。
さらには本物の重機まで運び込み、アスファルトの上に、林業の現場を出現させました。

瑞々しい木の香りを漂わせ、大木を豪快に動かす重機を見せる。山奥にしかないはずの、あの剥き出しのおもしろさを、街のど真ん中へと持ち込んだのです。 

すると、通りかかった3歳の女の子がウッドチップの山に登り、全身で木の感触を楽しみながら、これ以上ないほどの満開の笑顔を見せてくれました。

👨山千代:
「どうしてそんなことを思いついたのかと聞かれると、本当に偶然というか、いろんな出会いの組み合わせでしかないんです。
自分の内側からアイデアを絞り出したわけじゃない。環境や場があって、資源や素材があって、そこにいる人がいて、それぞれが持っている素晴らしい素材を組み合わせて、『こうやったら面白いだろうな』という妄想を形にしただけで。」

そうやって、目の前の人や資源と響き合う中で、自分の役割に気づいていったのかもしれません。

4. わたしたちが目指す「体験の共有」

このさかわ発明ラボのプロジェクトでの原体験を経たことで、tokotodesign合同会社の目指すビジョンは明確になりました。
それは、「そこにある資源や素材、環境を、どう、いろんな人と体験を通じて共有していくか」を追求することです。

地域には、まだまだ知られていない宝物(資源)や、誰かの熱い想い(素材)がたくさん眠っています。それらが複雑で分かりにくい状態のままなら、わたしたちが「なんかちょっとやれないかな」と、おもしろい体験へと翻訳する。

優れた完成物を納品して終わりにするのではなく、そこに参加する人々の「行動」と、その先にある「豊かな体験」を一緒に育んでいく。

この「なんかちょっとやれないかな」という精神は、高知から山口、鳥取、金沢へと、現在の拠点の広がりの中でも変わらずに息づいています。

次回は、この「体験の共有」という思想が色濃く反映された、山口市での公共空間の社会実験「KPF(カメヤマパークフロント)」(2025年10月に実施)について、詳しく紐解いていきます。どうぞお楽しみに!

tokotodesign合同会社 Webサイト:https://tokotodesign.com/
2026年拠点:高知県佐川町 / 山口県山口市 / 鳥取県鳥取市逢坂地区 / 石川県金沢市


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