見出し画像

播州織のZINEを売りに行ったら、尾州の跡継ぎに出会った

私の2回目のZINE販売イベントとなった、8月の「イマZINE」。

来年1月に開催されるジンフェス名古屋にはすでに申し込み済みで、8月の出店は予定外ではあった。
自営業で、お盆中で、夏休み中の子どももいる。自分だけイベントに参加するのは気が引けたけれど、家族に許可をもらって出店することにした。
申し訳ないなと思いつつ、当日の朝、スーツケースに荷物を詰め込んで出発した。

出店者リストを見ている時から気になっていた。
おでんbooksの『ビシュウアトツギ』。
尾州の織機跡継ぎ記。
これは絶対に読んでみたい。
播州織のZINEを作っている自分にとって、他の織物産地の「跡継ぎ」のZINEはどうしても気になった。
そう思っていたら、あちらも気にして下さっていたようで、イマZINE開幕前にお互い顔を合わせた。
「あとで行きますね」「来ます」
という会話になった。
私は待ちきれず、開幕直前に『ビシュウアトツギ』を手に入れた。

『ビシュウアトツギ』と、私の播州織のZINE。
読んでみると、共通しているのは、
「知ってほしい」という気持ちだった。
産地が苦しい状況にあること。
それでも、希望の光があること。
『ビシュウアトツギ』を書かれた花井利株式会社の大榎さんは、「会社を引き継ぐぞ」という気持ちで日々奮闘している。
その真っ直ぐな姿が文章からも伝わってきて、私は心を動かされた。
大榎さんには、イマZINE当日に初めてお会いして、少しお話しただけだ。
でも、短い時間でも強く印象に残った。
ZINEを作っていたからこそ、会えた人だった。

『ビシュウアトツギ』はたくさん売れたようだった。
古いモノクロ写真が目を引く。
手に取りやすいサイズ感。読み切りやすい文章量。そして価格は500円。
また、制服の生地で作られたブックカバーや鍋敷き、メートル単位で買えるお得なウール生地なども販売されていた。
制服の生地に水道水をかけて弾いている動画も見せていただいた。
本屋をやりたいというご友人と一緒になって、この本を作られたようだ。

私は播州織ZINEを販売する当日、すでに準備などで疲れていた。
普段割とボーっとしているし、接客も下手だと思う。
ふと、会場の遠くにある尾州ブース(おでんbooks)のほうを見た。
若い方たちが布を片手に、懸命にお客さんに説明している。
「ああ、自分も見習わなければならないな」と感じた。
あんな若い方たちがいるから、希望がある。
そんなふうにも感じた。
播州織の産地でも、若い方たちが頑張っているという話を耳にする。

イマZINEに来られた布好きの方も、播州、尾州、と産地の人が出店していることに少し驚かれていた。
こういう場所で布好きの方にも見つけてもらえるのは、やっぱり嬉しい。

そして今回、来場者さん3人から、「播博に行きたいと思ってるんです!」という言葉を聞いた。
それくらい「播博」というイベントが、布好きの方たちの間で知られ始めていることにも驚いたし、すごくいいことだと思った。

私は物事をネガティブに捉えてしまう癖がある。
産地は厳しい。織機も職人も減っていく。
そんなことばかり考えてしまう。
でも今回のイマZINEでは、「希望」を感じた。

これまで尾州という産地は、どこか遠い存在だった。
でも実際には、私の住んでいるところからそれほど遠くないのだった。
訪れてみたい。知りたい気持ちが湧き上がってきた。播州織の産地と似たような問題にぶち当たっていることは、何となく知ってはいた。
でも、実際には何も知らない。

尾州では10月に、「ひつじサミット」という産地をあげたイベントも開催される。工場見学やものづくり体験など。大榎さんはこのひつじサミットの実行委員を務めている。
産地のことを知らない人には、まず興味を持って来てもらえるような工夫がある。
布が好きな人なら、もっと深く楽しめる。
そんな産地イベントは、いいなと思う。
こうして産地の人たちのことを考えていると、とにかく人が大事なんだと思う。
人の想いだけで、産地や織物が残るわけではない。それでも、残したいと思う人がいなければ、始まらない。
織物が残るきっかけを。人の心に残る記憶を。
産地のイベントは、きっと作ってくれる。

次回の投稿は、イマZINEの当日の様子について書きます。

いいなと思ったら応援しよう!