🌿 短編小説|充電3%の背中
彼女は、
いつも笑っていた。
「大丈夫です」と言いながら、
肩に乗せた重石を誰にも見せなかった。
50代看護師。
ワーキングママ。
HSP気質。
頭痛、めまい、喘息。
家事、育児、海外出張、そして仕事。
そのすべてを、
“ちゃんとやらなきゃ”と背負っていた。
でも、
身体はもう限界だった。
---
整体ベッドに横たわる彼女の背中は、
まるで「充電3%」のスマホみたいだった。
少し動くだけで疲れる。
少し話すだけで息が切れる。
少し考えるだけで頭が痛む。
それでも彼女は、
「家事がね…」「旦那がさ…」と笑っていた。
僕は、ただ傾聴していた。
いつものように。
でも、今日は違った。
---
僕自身が、
心と身体を壊していた。
HSP気質が強く出て、
音が刺さり、匂いが重く、
人の気配に呼吸が浅くなる日々。
だから、
彼女の“言葉にならない疲れ”が、
痛いほど分かった。
ふっと、
彼女の背中から独特のオーラを感じた。
もしかして──
この人も、HSP気質では?
---
「もしかして、HSP気質ありますか?」
僕の問いに、
彼女は目を見開いた。
「え…整体師さんにそんなこと言われるなんて…」
驚きと、安堵と、少しの涙。
彼女は、
誰にも言えなかった“敏感さ”を
ずっと隠して生きてきた。
---
そこから、
僕は施術の手を変えた。
筋肉をほぐすのではなく、
“物語をほどく”ように触れた。
呼吸の深さを取り戻すように。
背中の重石をそっと外すように。
彼女の“語られなかった人生”に、
静かに寄り添うように。
---
施術が終わったあと、
彼女はこう言った。
「なんか…呼吸がしやすいです。
肩が軽い。
心も、ちょっと軽い。」
僕は笑った。
「それ、充電が少し戻った証拠です。」
彼女は笑った。
「じゃあ、次は満タンにしてくださいね。」
---
彼女は、
4ヶ月に1度、
静かにこの場所に戻ってくる。
僕は、
そのたびに彼女の“物語の続きを”聴く。
そして、
彼女の背中にそっと手を添える。
「大丈夫。
あなたの身体は、
あなたを責めてない。」
---
🌸 あとがき|からだは、言葉より正直
この物語は、
誰かの“充電3%の背中”に届くかもしれない。
もしあなたが、
疲れすぎて言葉にならない日々を生きているなら──
からだの声を、
そっと聴いてみてほしい。
それは、
あなたの物語が発する
いちばん正直なメッセージだから。
いいなと思ったら応援しよう!
役に立つ記事でしたか?参考になる記事でしたらサポートよろしくお願いします。サポートしていただいた分はさらに役立つ情報獲得、知識向上の為に、本を買う資金にさせていただきます。よろしくお願いします。