世界文学を巡る旅〈9〉カフカが気になるこの頃。
“ぼくのことは夢だと思ってください。”
カフカといえば『変身』
私もここが入口でした。
特別に気に入ったわけでもないのですが、どういうわけか心の片隅にずっと居座っている感じがします。(あの虫が…?)
『変身』
フランツ・カフカ 著
川島隆・訳 (角川文庫)
それがあってか、書店の海外文学のコーナーで偶然こちらを手に取りました。
『カフカ断片集』
カフカ・著 頭木弘樹・編訳 (新潮文庫)
“祈るように書く”
カフカの手記やノートなどに残された断片のセレクションです。
とりわけ心に残った断片はこの3つでした。
〔家の中の雨〕
〔すべて無駄だった〕
〔天の沈黙〕
(すべて著者によるタイトル)
さらにカフカについて知りたいと思い、続けて読んだこちらも、特にお気に入りの一冊になりました。
『絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ』
フランツ・カフカ、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
頭木弘樹・編訳 (草思社文庫)
カフカはゲーテを愛読していたそうです。
ゲーテの言葉はいかにも堂々とし、前向きな光に満ちています。一方で、カフカの言葉たちも同じくらい、あるいはそれ以上に心に残りました。
対比されることで、二人の言葉がもつ魅力がより引き立って感じられます。
希望を救いと見なすゲーテと、”朝の希望も午後には埋葬されている”と感じるカフカ。
安楽椅子さえなるべく使わないようにするゲーテと、”朝起きるだけでも大変な”カフカ。
中でも一番心に響いたのは、カフカのこの言葉でした。
“救いがもたらされることは決してないとしても、ぼくはしかし、いつでも救いに値する人間でありたい。”
カフカの人となりを想像してみると、悲観的で繊細で優しくて、感情的なやりとりが苦手…、そんな人物像が思い浮かびます。
友人にこういう人がいたら苦労しそうだけれど、なぜか遠くから見ていたいような、そんなイメージを勝手にふくらませています。
カフカが残した短い言葉たちもまた、私にとって記憶に長く留まる性質のもののようです。
その時の気分に寄り添ってくれる断片を見つけるのも楽しいですね。
