小説「ずっと一緒」
「ずっと一緒」
※この作品はYouTubeで公開した短編を小説化したものです
薄暗いリビング。家具は最低限しかなく、空気はどこかよどんでいる。
そんな部屋の真ん中で、二人の若い女が向かい合っていた。
「もう結構一緒にいるよね〜」
桜が笑みを浮かべる。だがその笑顔は、どこか貼りつけたようにぎこちない。
「だよね。……あれから何年だっけ?」
紅葉も微笑むが、瞳は笑っていない。
「う〜ん……もう二年は経つかな?」
二人は顔を見合わせる。笑顔のまま、同時に長い溜息を吐いた。
「――あの女、ひどかったよね」
紅葉の口調が急に低くなる。
「うん。今でも本当にむかつく」
桜の声には鋭い棘が混じった。
「忘れられないよね」
「……あいつ、今でも生きてるの、キモイよね」
「ほんとにね」
部屋の空気は冷え、笑みは完全に消えていた。残っているのは憎悪だけ。
その時、チャイムの音が鳴り響いた。
二人は同時に動きを止める。沈黙が張り詰める。
「あ……来ちゃった」
桜が小さくつぶやいた。
玄関の向こうから、不動産屋の声がする。
「ここは昔、騒音問題で……隣の奥さんが、この部屋の住人を刺し殺したんですよ」
言葉が空気に溶けて消える。長い沈黙。
やがて、紅葉が振り返った。
その顔は氷のように冷たく、口元だけがゆっくり動いた。
「――あの女、むかつくよね」
桜も同じ表情で頷く。二人の眼差しには、生者の温度が一切なかった。
