⑥宇都宮病院事件から何を学ぶのか
はじめに
これまで見てきたように、日本の精神医療には長期入院を生みやすい構造があります。そして、その構造の中で何が起きるのか。
かつて、それを象徴する事件がありました。
世界にも大きな衝撃を与えた事件が栃木県で起こったのです。
宇都宮病院事件です。
ただし、この事件は特別なものだったのでしょうか。
概要
1984年3月に「看護職員のリンチにより患者2名が死亡」という記事が朝刊各紙で報道されたことがきっかけで、事件が明るみに出ました。
事件自体は1983年4月および12月に起き、1名は食事の内容に不満をもらし、もう1名は「こんなひどい病院から退院させてくれ」と訴えたところを、看護職員らにより、暴行が加えられ、結局死に至りました。
この後、宇都宮病院内で起きていた問題が次々と明らかになります。
無資格者による脳波、心電図、レントゲンなどの検査の実施、度重なる患者への暴行、不必要な入院や「作業療法」と称した使役活動など「病院」とは名ばかりの行為が見られました。
なぜ起きたのか
宇都宮病院での出来事がすべての医療機関に行われていること、とまでは言えませんが、精神科病院内での事件や虐待はいまだに多くあります。テレビで特集にもなった東京の滝山病院や兵庫の神戸病院などいくつも出てきます。
これらの背景には、これまで見てきたように、精神科病院の外部から見えにくい構造が一因であるといえます。また、長期入院が前提となる環境では、患者はその場に留まり続けることになることで権力勾配が顕著になるのです。
その中で強い権力関係が生まれたとき、何が起きるのか。
その後
宇都宮病院は国内外で大きな社会問題になりました。
それまで施行されていた精神衛生法は、改正を求める声が高まり、1987年に精神障害者の人権に配慮した適正な医療及び保護の確保 と精神障害者の社会復帰の促進を図る観点から精神保健法に改正されました。
おわりに
こうした状況を防ぐために必要なのは何か。
それが第三者の存在です。
外部の目が入ることによって、初めて構造は変わります。
参考文献
・宇都宮病院事件・広瀬裁判資料集編集委員会(2008)
『宇都宮病院事件・広瀬裁判資料』
・桐原尚之(2015)
「宇都宮病院事件から精神衛生法改正までの歴史の再検討」
