8/4 今日は、ふふふふ、いい日だった
今日は、ふふふふ、仕事を休んで出かけることにした。
もうちょっと大きくなったらちゃんと正直に言うけど、今は、今はまだ、仕事を休む日もお母さんいつも通り仕事に行きますからね~みたいな風貌で過ごす。
保育園にむかっている途中、急に娘が「おかあさんは娘ちゃんが小学校に行っても今のところで働いているの?」と聞いてきた。意味が分からず、もう一度聞く。
やっぱり同じことをわたしに聞いてきて、「もっとおうちに近いところに変えちゃえばいいじゃん」と付け加えた。
わたしが仕事を辞めようと本格的に考え始めたことは、もしかしたら漏れ出ている部分はあるかもしれんけど、はっきりとは誰にも言っていない。
「いずれは辞めます~」と言ったことはあるし、何度か言っているから周りも「またまた~はははは~」みたいになっている。
けれど、本当に辞めると決めたことはまだ地球上のだれにも言っていないのに。
子どもってすごい。こわい。
ねぇ~辞めちゃおうか。と冗談っぽく言う。
まだ誰にも言わないでね、娘ちゃんとお母さんの秘密ねとも言っておく。
さてと、解散して一人になった。
時間がもったいねえと思ったけど、空腹で乗り物にのると酔いやすい体質だから食パンに馴染みの商店のおっちゃんからいただいた芋のジャムを塗って食べた。
食べて、家を出る。
川島明の真似をして神社に行き神にすがり、小原晩さんの「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」に出てきた喫茶店に行ってくる。
わたしは素敵な方々が好きなものとか、こととか、いいなと思ったことを真似をすることになんのためらいもない。なんでも真似して取り入れるわよ。
電車に乗る。
ひとがまあまあいるけど、想像よりはいない。
ここが自分の場所ですと各々堂々と立てるくらいの空間。
そしてわたしはうわっと言いそうになって堪えた。
電車のドアの真横の手すりがくっつけられている壁にバッタがいた。
バッタまで堂々としている。
気づいているのか、気づいていないのか、その壁にもたれるようにひとが立っていた。
急にすみません、そこにバッタいますよとお節介が働きそうになったけど、知らないままであった方がいいってこと、世の中たくさんあるし。ね。
みんな気づいていないのか、はたまた、気づいてはいるけどどうでもいいのか。周りをきょろきょろ見渡してみたけど、バッタを気にしているのはわたしくらいだった。
東京って、都会って、各々が各々の世界で生きている。
人間界に、たった一匹で存在しているバッタのことすら誰も見ていない。
当たり前だけど誰もわたしのことなんて見ていないんだと改めて実感する。ほっとする。心地が良い。
万が一席が空いてもバッタを気にして座ることができそうにもなかったので、その壁からさりげなく離れて、そして対面の席側に移動した。
わたしはやつが本気を出せば飛べることを知っているから、そいつを見失わないように確認し続けた。
結局わたしが降りるまでやつは居続けた。
わたしは終点手前で降りたから多分終点までいっていると思う。
そんなに移動してバッタもびっくりじゃないのかな。
心をこめて神頼みして、おみくじをひく。
古文みたいな文には多分だけど、気持ち入れ替えてやれや!やれ!まずは辛抱!そしたら幸!みたいに書かれていた。と思う。
了解です!と結んだ。
近くを蝶々が飛んでいた。
(この分を打とうとしたらはじめに町長と出てきて、んな馬鹿なってなった)
神社をあとにして、そしてびっくりしたのだけど、いつか行ってみたいなと思っていた喫茶店が通り道にあって、わたしは吸い込まれた。
週のはじめ、月曜日のお昼前だからか並ばずに席に座れて卵サンドとアイスカフェオレを頼む。
背中合わせの席では二人組が職場のなんやかんやをずっと話していて、どこも色々ありますよねと心の中で頷く。
きたきたカフェオレ、そして数分後に卵サンド。
オムレツが入っているやつ。うまい。あぁうまい。
あぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
噛みしめる。
うまさとこの時間を。
店を出て、山手線に乗り神田でおりるとメロディが流れてきて、これは聞いたことあるぞ、聞いたことあるぞ、あぁ!おくちくちゅくちゅもんだみんだ!!!
たまにしか山手線を利用しないから、各駅のメロディを聴いてわたしは毎度興奮している。
知りたい、他の駅のことも知りたい。
調べればすぐに出てくる世界だけども、調べるもんか。
ふっと行った先で、おぉ!と聞いて、はっ!としたい。これからも。
本屋さんをふたつ、はしごして、もうなんでこんなにあれもいいなこれもいいなと思える本棚たちなんだよと内側のわたしは悶えていたけど、本屋さんだから外側のわたしは静かに本屋を楽しむわたしを演じた。
数冊だけ選んで、喫茶店へ。
カウンター席を案内された。
だめだ、本を読もうと思っていたのにこの席……、マスターの動きが気になって気になって、それが楽しくて楽しくて仕方がない。
わたしはこのプロとか職人が何かを作っている最中をみるのが大好きで、ミスタードーナツでも並んでいるときに、あのガラス張りで中の様子を見れるところにいるのが好きだ。早くドーナツを選んで、お支払いをして、手に入れたい気持ちもあるけど、ここでずっとみていたいという気持ちもわいてくる。ちなみに工場見学も好きでした。
じろじろ見られたらやりずらいでしょうから、さりげなく、でも見た。
タバコの匂いがしてくる。
横の席のひと、そしてその隣のひともタバコを吸っている。
はぁぁぁぁぁ。
実はタバコのにおいも好きなのです。
良いな、この席、この空間。
そうこうしていたらマスターがいなくなってて、お手洗いかしらとか思っていたのだけど、気づいたらカウンターのはしの席に座ってマスターもタバコを吸っていた。
アイスコーヒーとチーズケーキを食べて、買った本もちょろっと読んで、あー楽しかった。
満足。しあわせ。
ずっとこういう日々を過ごしていたいですね、無理ですね。
家に帰る。
仕事を休んだ日とか、一人で過ごした時間が終わるとき、わたしはいつもあぁ今日が終わってしまうと考えてしまって、とてつもなく寂しくなって、どっと疲れとか悲しみとか絶望感とかがきっと混ぜられたものが出てきて、なにもかものやる気がなくなってしまうのだけど、今日は不思議とそうはならなかった。
またあるよね、こういう日も。
そう思えた。
いい日だった。
子どもたちと穏やかに再開して、穏やかな気持ちでとうもろこしご飯を作って、それがまあ美味くできて。
いい日だった。
