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「ネビュラロマンス」が鳴らしている音の世界(後篇)

はじめに

体調を崩していたこともあり、さらに仕事も忙しくて、なかなかレビューを書く時間が取れませんでした。
ですがようやく落ち着いたので、今回ついに「ネビュラロマンス後篇」のレビューを書いていきます!

今回も語りたいことが多くて、たぶん長くなります。なので前置きはこのくらいにして、さっそく本題に入ります!

ネビュラロマンス 後篇 楽曲レビュー


①Cipher

BPMはゆったりとしている分、ドラムが重くのしかかってくる。
何かを決意したような空気を感じる。

前半はあえてボーカルを入れず、気持ちを盛り上げていく構成。
そして後半になってようやく歌が入ってくるのだが、そのボーカル処理がはっきりと前に出るというより、バックボーカルのようにぼんやりと滲んでいるのが印象的だ。

これは完全に自分の解釈だが、歌詞にある「僕は祈る」という言葉の通り、ここで鳴っている声は“現実の歌”というより、“心の声”に近いものなのかもしれない。だからこそ、輪郭を曖昧にするような処理が選ばれているのではないか、と感じた。

いずれにしても、これから始まる物語の幕開けとして素晴らしい曲だと思う。


②再起動世界

「Cipher」からのトランジションがとにかくスムーズで、自然に次の世界へ引き込まれる。
このアルバムの中でも特に疾走感があり、ハードな曲だ。

戦いに向かうような高揚感があり、「Cipher」がゆったりとした始まりだった分、この曲の攻撃的なエネルギーがより際立って感じられる。

ただ、その勢いとは裏腹に、歌詞には「このカラダが消える前に」や「この世界にはもう灰もない」など、ダークなワードが並び、どこか不穏な空気を漂わせている。
単なる熱さではなく、追い詰められたような切迫感も同時に存在しているのが印象的だ。

そして最後のサビではあえてドラムを削り、エモーションを一気に高めていく。
その後のアウトロで再びハードなビートに戻り、勢いのまま曲が終わる流れも最高だ。

個人的にも、気持ちを高めたい時につい聴いてしまう一曲。

③ネビュラロマンス

このタイミングでタイトル曲が出てくるのが面白い。アルバムの流れの中でも、ここで一度「作品の核」を提示してくるような配置になっている。

「ロマンス」というタイトルの通り、愛する人に思いを馳せるような楽曲で、全体の雰囲気もどこか優しい。

ビート面で見ると、ドラムは他の曲と比べても比較的淡々としていて、その分シンセの存在感が際立っている。
特にサビ前のブリッジで鳴る、流れるようなシンセが個人的にかなり好きなポイントだ。

また歌詞では、「君とOnly Forever」や「ふたりの未来Glow」など、日本語と英語を組み合わせたフレーズが印象的で、響きとしても面白い。
こういう言葉の置き方が、曲全体のロマンチックなムードをより引き立てているように感じる。

エモーショナルに振り切った曲というよりは、じんわりと温かみを感じさせる一曲だ。

④ソーラ・ウィンド

前篇の5曲目「IMA IMA IMA」と対になるような、どんどん行進していくようなドラムが印象的な曲。
ただ、イントロを含め随所で不協和音が入り込んでいることもあって、「IMA IMA IMA」よりもさらにダークで、緊張感のある空気が漂っている。

また、これは※音楽ナタリーの独占インタビューで語られていた話なのだが、1st Album『GAME』に収録されている「Butterfly」で、この曲と似たメロディが鳴っているらしい。

自分はこの記事を読むまで「Butterfly」を聴いたことがなかったので、実際に聴いてみたのだが、確かに共通するフレーズがあった。
聴いたことがない人がいるなら、ぜひ聴き比べてみてほしい。

こういった過去曲を引用してくるあたりにも、この作品の“集大成感”がより強く感じられる。

⑤Virtual Fantasy

前篇・後篇を通して、最も好きな曲。
というより、これまでのPerfumeの楽曲群の中でもトップクラスに好きな一曲だ。

「ソーラ・ウィンド」の不穏感から打って変わって、
今度は良い意味での“抜け感”があり、聴いていると体が勝手に動いてしまう。

緊張がほどけるような開放感があり、アルバムの流れの中でもかなり印象的な転換点になっている。

歌詞は途中で日本語が入るものの、それ以外はほぼ英語詞という、かなり攻めた構成。このスタイルも含めて、Perfumeが今なお挑戦を続けていることを感じさせる。

実はこれも※音楽ナタリーの独占インタビューで語られていたのだが、当初は全編英語詞で作られていたらしい。
そこから途中で「日本語詞を足したい」という話になり、最終的に今の形に落ち着いたとのことだ。

そして後半のブリッジ部分で鳴る、流れるようなシンセがとにかく気持ちいい。
さらにアウトロでは低い声と高い声が交差し、楽曲にメリハリを与えているのも面白いポイントだ。

今でもこの曲はよく聴いてしまう。


⑥Teenage Dreams

エモーショナルという意味では、この曲が一番かもしれない。
これまでSF的な世界観が強かった流れの中で、この曲では「シャープペンシル」や「冷たいジュース」など、現代の現実世界に存在するものが歌詞に並んでいる。
その描写が逆にリアルで、聴いている側の記憶や感情に直接触れてくるような感覚がある。

ビート面で言うと、柔らかいエレクトロピアノの響きと、サックスの音色がとにかく美しい。
サウンド自体が優しく、どこか切なさを含んでいるのも印象的だ。

「帰ろう あの頃に」
Perfumeのこれまでのキャリアがあるからこそ、重くのしかかる歌詞だ。

この曲あたりから、段々と目頭が熱くなってくる。
アルバムの中でも重要なターニングポイントになるような一曲だと思う。

⑦Human Factory -電造人間-

前篇・後篇を通して、最もダークな曲。
聴いているうちに辛くなるくらい、心にずしんとくる。
悲しげなエレクトロピアノの音から始まり、そこに不協和音が響き続ける。
音の時点で既に救いがなく、閉塞感が支配している。

歌詞も「私たちは飼い猫」「この衛星(ほし)の歯車で永遠に踊り眠るの」など、胸を締め付けるような言葉が並ぶ。
まるでPerfumeが長いキャリアの中で抱えてきた不安や葛藤が、そのまま形になったようにも聴こえてしまう。

そして抑えたボーカルが、逆に悲しさを強めているのが印象的だ。
感情を爆発させるのではなく、押し殺すように歌うからこそ、余計に苦しくなる。

始まりと終わりの演出も映画的で、この物語の壮大さをより強く感じさせる。

正直、この曲は繰り返し聴くことができない。


⑧Moon

打って変わって、爽やかなメロディと力強いドラムで踊りたくなる曲。
前曲「Human Factory -電造人間-」の重苦しさを一気に振り払うような解放感がある。

そして印象的なのが、「Human Factory」で出てきた「永遠に踊り眠るの」という歌詞と対になるように登場する「Forever Dance」というフレーズだ。

言っていること自体はかなり近い。
しかし意味合いはまったく違う。

「Human Factory」では、受け身で踊らされているように聴こえるのに対して、「Moon」では、自分たちの意思で踊りたいから踊る、という感覚が強い。

不安や葛藤を乗り越え、希望を持って前に進んでいく。そんな強い意志を感じる一曲だ。

この曲は2年前にすでにシングルカットされていたが、このタイミングでアルバムに入ってくるのも面白い。
そして何より、物語としてしっかり流れができているのが凄いと思う。

⑨exit

何かコードを打っているような音から始まり、全体的にはYMOサウンドを彷彿とさせる、跳ねるシンセが印象的な楽曲。
BPMも速く、このサウンドだけを切り取れば、気持ちが高揚して楽しい曲にもなりそうだ。

しかし、曲の流れと歌詞によって、しっかりエモーショナルな楽曲として成立している。
ただ悲しいだけで終わらせないところが、Perfumeらしくて本当に素晴らしい。

そしてOutroが長く続き、余韻をしっかり残す終わり方も印象的だ。「このループを閉じるわ」という歌詞があり、物語の終わりを強く感じさせる。

そして新たな物語が始まる…


⑩巡ループ

自分はZARDの曲が好きなのだが、最初に聴いた時、メロディも含めてどこか近いものを感じた。
特に思い浮かんだのが、ZARDの「Don’t you see!」だ。

もちろん歌詞も、使っている音もまったく違う。それでも勝手に重ねてしまうような、懐かしさと疾走感が同居している。

ゆったりとしたBPMから始まり、途中からテンポが速くなっていき、感情を一気に盛り上げていく構成。
ボーカルも今までの抑えた歌い方とは違い、しっかり歌い上げているのが印象的だ。
まるで感情を解放しているように感じた。

「exit」で今までのループを閉じて、この曲から新しいループが始まる。まさにタイトル通りの役割を担っている。

後半のブリッジ部分で鳴るエレキギターがとにかくエモーショナルで、個人的にはこのメロディで涙が溢れてくる。
悲しさではなく、希望があるからこそ込み上げてくる。

決して悲しくない、希望を持った素晴らしい曲。

この曲のMVも注目で、ラストのカットが印象的だ。正直ここまでやってしまったら次どうなってしまうのだろう…と思っていたのだが、コールドスリープの発表があって納得した。

まとめ

いかがだったでしょうか?
今回あらためて振り返ってみると、前篇はビートや構造面について細かく書いた一方で、後篇は歌詞に触れる割合がかなり多くなったように思います。

もちろんどちらもサウンド面の完成度は素晴らしいのですが、後篇は特に、前の楽曲で登場したワードやテーマをリンクさせながら伏線を回収していくような描写が多く、より「物語」としての強度が増していました。
さらに、感情を吐露するような生々しい描写も多く、聴いている側の心にも強く入り込んでくる印象があります。
その分、自然と歌詞に注目してしまったのかもしれません。

前篇と後篇でしっかりと色が分かれているにも関わらず、全体を通して聴くと一本の映画を観終えたような満足感があり、この構成力は本当に凄いと思います。

また、80s的なレトロエレクトロサウンドが軸になっている点も、過去を振り返る描写や、今回の重要なキーワードとなった「ループ」というテーマを考えると納得できます。

個人的には、欧米で続いている80sサウンドリバイバルの流れに対する、ある種の“日本的な解答”のようにも感じました。

そういう意味でも、サウンド面・メッセージ性・アルバムとしての完成度、その全てを含めて歴史に残る傑作だと思います。

(個人的には、もっと評価されるべきだし、もっと語られるべきアルバムだと思っています。
だからこそ、まだあまり語られていない現状がすごく悔しいです…。)

次回は


個人的に欧米側の80sリバイバル作品の傑作だと感じている
The Weekndの『Dawn FM』と『ネビュラロマンス』の比較について記事を書こうと思います。

アーティストとしての方向性は違いますが、今作においては意外と共通する部分も多く、比較することで見えてくる表現の違いやアプローチの差など、さらに深掘りできればと思っています。

お楽しみに!


※「Perfume「ネビュラロマンス 後篇」1万3000字ロングインタビュー | 25年を巡る物語はラストシーンへ」より
https://natalie.mu/music/pp/perfume20

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