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「ネビュラロマンス」が鳴らしている音の世界(前篇)

はじめに


「ネビュラロマンス」については、すでにストーリーの解説や考察の記事をいくつも目にしてきました。
なのでここでは、物語を読み解くことよりも、
音楽そのものや曲順、アルバム全体の構造について感じたことを書いていこうと思います。

前回の自己紹介でも書いた通り、自分は音楽が好きな普通の会社員です。
なので、専門用語が飛び交うような解説ではなく、
何度も聴く中で引っかかった音や流れ、時間を置いて聴き返した時に見えてきた感触を、あくまで一人のリスナーとして言葉にしていきます。

https://note.com/tn_dawg1928/n/na492e7b12ec7%0A%E2%B8%BB%0A

ネビュラロマンスを語る前に


2020年代に入ってからPerfumeは、徐々にレトロフューチャーの路線にシフトしていったように感じています。

そのきっかけになったのが『PLASMA』でした。
Spinning WorldやDrive’n The Rainなど、
ドラムの打ち方、ファンキーなベース、80sっぽいシンセが多く使われるようになった印象があります。
もちろん、FLOWのような現代的なサウンドの楽曲も混ざっていました。

もしかしたら、この時期はネビュラロマンスを作るための準備段階だったのかもしれません。

こうした変化は、時代の流れとも自然に重なっています。
近年の欧米ポップシーンでは、The WeekndやDua Lipaをはじめ、80sサウンドを取り入れた作品が目立ち、昨年にはDoja Catもその流れを感じさせるアルバムを発表しています。
Perfumeの動きも、その文脈の中にあるように感じるのです。

ただ、これは単に流行っているからこのサウンドを使っている、という話ではないとも思っています。
幼少期に聴いていた音楽が、マイケル・ジャクソンやプリンス、マドンナのようなアーティストで、
そのサウンドに影響を受け、自分なりに再現したいと考えるアーティストが多いのではないでしょうか。

もしかすると、中田ヤスタカ氏自身も、
幼少期に聴いていた音楽を、現代に落とし込んで鳴らしたかったのかもしれません。


ネビュラロマンスについて

そしてネビュラロマンスで完全にその方向で振り切ったと思います。

ネビュラロマンスを初めて聴いた時に強く感じたのは、
少年時代にテレビやラジオで何となく耳にしていたサウンドを、しっかり現代に落とし込んで鳴らしているという点でした。

これも前回の自己紹介で書いた内容になりますが、
ネビュラロマンス後篇を紹介する投稿をきっかけに聴き始めたため、後篇→前篇という、少し変わった順番で聴いています笑

正直、アルバムは通してじっくり聴きたいタイプなので少し迷いはありましたが、投稿に書かれていた内容を、実際に自分の感覚で確かめてみたいという気持ちもありました。


という訳で、早速ネビュラロマンスのレビューに入ろうと思います。

本当は、前篇と後篇を通した全体の音楽的な話を書こうと思っていました。
ただ、アルバムの中でそれぞれお気に入りの曲があると思います。
それなら、一曲ずつ向き合いながら書いた方が、自分の感じたことも素直に伝えられるのではないかと思いました。

とはいえ、実際に書いてみると前篇だけでもなかなかのボリュームになってしまったため、この記事では前篇のみを取り上げます。

ネビュラロマンス 前篇 楽曲レビュー


① The Light
導入から、ここから何かが始まる予感を強く感じさせるイントロがたまらない。
ノイズがかかったシンセが、街灯の点滅のようにも聴こえて、自然とワクワクさせられる。
曲が始まると、裏で打つベースが小気味よく入り、
とにかく踊りたくなる一曲。
ラストをディレイで終わらせるのも良く、続きを感じさせる終わり方になっている。

② ラブ・クラウド
水滴が落ちるような反響音から始まり、「The Light」のディレイの余韻と自然に繋がっていく導入が心地いい。
曲が切り替わるというより、同じ世界のままシーンが進んでいく感覚がある。
そこから一気にギアを上げ、アルバム序盤からしっかり身体を動かしたくなる展開へ。
曲が進むにつれて入ってくるサックスの音も印象的で、
高揚感の中にエモーショナルなニュアンスを加えている。
踊れるだけで終わらず、感情の温度もきちんと残る一曲。

③  Cosmic Treat
曲の入りから激しいドラムが鳴り、一気にスピード感を持って走り出す導入が印象的。
乱高下するシンセが重なり、自然と気分を高揚させていく。
要所で入るボーカルエフェクトのアクセントも気持ちよく、金属バットでホームランを打った時のように、音がパーンッと広がる感覚がある。
前の2曲に比べると、よりファンキーなサウンドになっていて、終盤に入ってくるエレキギターも相まって、テンションを保ったまま次の曲へと繋いでいく。

④  Starlight Dreams
ここまでの3曲とは打って変わって、落ち着いた空気をまとった一曲。
ビートが抑えめな分、3人のやさしいボーカルがより際立ち、自然と耳に沁みてくる。
とはいえ、決して悲しい曲ではない。
よく聴くとドラムは意外とハードで、静けさの中にもきちんと芯の強さが残っている。
この曲を聴いて、The Weekndの「Out of Time」を思い出した。
あの曲が亜蘭知子の「Midnight Pretenders」をサンプリングしていることを考えると、このアルバムが描こうとしている音の感触とも、どこか通じるものを感じる。
この作品の中でも、
今のところ一番好きな楽曲かもしれない。

⑤ IMA IMA IMA
ここで初めて、アルバムの中にダークな表情が覗く。
流れ落ちるようなシンセで始まり、ドンドンと行進してくるようなドラムが、不穏な空気をまとわせる。
稲光が走るような緊張感が、曲全体に漂っている。
歌詞も「うまく笑えない」といったフレーズが印象的で、どこか悲しさを含んでいる。
ただ、ベースとドラムだけになる抜けのあるパートや、
明るさを感じさせるメロディもあり、完全に暗い曲としては描かれていない。
影と光が同時に存在していて、アルバムの空気を少し深いところへ引き込む一曲。

⑥ すみっこディスコ
この曲は、このアルバムの中でも最も衝撃を受けた一曲かもしれない。
Perfumeには「かわいい見た目で中身は狂人」と思ってしまうような楽曲が度々あるが、この曲はまさにそれを体現している。
とにかくベースが凄い。
イントロではあえてベースを鳴らさず、ブリッジで細かく刻まれたベースが入り、
Aメロではさらに密度を増し、細かく上下を行き来しながらホバリングするような動きを見せる。
Bメロでは質感の違う刻み方に切り替わり、
Cメ口では一転してロングスパンのフレーズへ。
そしてサビでは、Aメロほど細かく刻まれるわけではないが、上下する動きを保ったまま、より大きなうねりを描くようなベースが鳴る。
ベースだけでここまで緩急をつけ、曲全体の表情をコントロールしているのが本当に面白い。
一見すると可愛らしいポップソングの中で、こうした実験的なことをさらっとやっているのが、この曲の怖さ。
このアルバムの中でも、最も変態的な一曲と言っていいと思う。

⑦ Morning Cruising
このアルバムの中で、いちばん爽やかに感じる一曲。
歌詞の通り、午前中にコーヒーを飲みながらドライブしている時に流したくなる。
メロディの主張自体は、他の曲と比べるとそこまで強くないが、その分ハードなドラムの存在感が際立っている。
軽やかさの中に、しっかりとした推進力がある。
ラストのサビ前、ブリッジに入るシンセも印象的で、まるでライブでのソロパートのような心地よさがある。
その直前に入る「yeh」も含めて、曲全体にライブ感を与えているのが良い。

⑧ タイムカプセル
ディレイがかかったギターのような音でシンプルに聴かせ、そこからドラムが入ってくるイントロがとにかくかっこいい。
サビ前ではトーンを落とし、ロングスパンのベースでじっくり溜めてから、サビで一気に盛り上げていく展開も気持ちいい。
ラストでの転調も印象的で、明るさの中にどこか切なさが残る。
この曲単体でも魅力的だが、次の曲への流れを考えると、配置としても本当に素晴らしい。

⑨時空花
この曲は、アルバムの中で最も悲しさを感じる一曲。
フィルターのかかったピアノのような音を、単音で聴かせるイントロから、すでに空気が沈んでいる。
ドラムは他の曲と比べても極端に少なく、その静けさの中で、徐々にシンセが重なっていく。
音が足されていくにつれて、感情もゆっくりと持ち上げられていくように感じる。
ボーカルも印象的で、これまでの楽曲ではソロパートがあったのに対し、この曲では三重唱になっている。
そこにかかったリバーブも相まって、距離のある、祈りのような響きが胸に残る。
曲の終わりに、かすかに木のような音が聴こえるのも印象深い。
行き過ぎた想像かもしれないが、演奏を終えてドラムスティックを置いた音のようにも聴こえた。
人工的なサウンドの中に、ほんの少しだけ生の感覚を残していく、不思議な曲。

⑩ メビウス
前篇のラストにふさわしい、疾走感のある一曲。
イントロやアウトロを含め、シンセを強く聴かせる場面が印象的で、アルバムの中でも音そのものの存在感が際立っている。
サビの入りで一度ベースを落とし、途中からノイズの混じったシンセベースが加わっていく展開も印象深い。
一気に盛り上げるのではなく、徐々に熱量を高めていく表現が、この曲らしい。
そしてラストは、バッサリと切るように終わらせつつ、リバーブだけを残して余韻を生む。
はっきりと終わったはずなのに、その先を想像させる構成で、続編を強く意識させる締めくくりになっている。



まとめ


前置きした通り、前篇だけでも中々のボリュームになってしまったため、
後篇と全体的な感想については次の記事で書きます。

この前篇の中に、少しでも同じ様な引っかかりや発見を感じた方がいたら嬉しいです。

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