京セラで学んだこと②― 仕事の結果 = 情熱 × 考え方 × 能力
Forbesの記事で、アマゾンが「感情知能(EQ)」を組織文化の中核に据えているという話を読んだ。https://forbesjapan.com/articles/detail/92404
Empathy(共感)
Purpose(目的)
Inspiration(鼓舞)
Connection(つながり)
これらを体系化し、150万人規模の組織で浸透させているという。
読んだ瞬間、京セラで学んだ次の式を思い出した。
仕事の結果 = 情熱 × 考え方 × 能力
京セラ哲学の有名な一節である。
能力だけでは、結果は出ない
企業経営やイノベーションの議論は、しばしば「能力」に集中する。
戦略、技術、データ、AI、資金――
それらは確かに重要である。
しかし京セラ哲学は、それらを“掛け算の一要素”にすぎないと位置づける。
結果 = 能力 × 熱意 × 考え方
能力が高くても、
情熱がなければ、やり抜くことはできない。
さらに重要なのは、「能力は固定されたものではない」という発想だ。
熱意が高ければ、能力は向上していく。
人は未来進行形の存在である。
一方で、「考え方」が誤っていれば、結果はマイナスになる。
京セラ哲学では、「考え方」は −100 から +100 まであるとされる。
つまり、倫理や動機が誤れば、能力が高いほど破壊的になり得る。
能力だけでは、結果は出ない。
熱意と、正しい考え方があってこそ、能力は社会にとって意味を持つ。
Amazonは「感情」を制度化した
一方、Amazonが行っているのは何か。
それは「感情のマネジメント」を制度化することだ。
変革の現場では、
不安
抵抗
恐れ
競争心
が必ず生まれる。
AI導入や構造転換が進むほど、感情は揺れる。
そこでAmazonは、
共感できるか
目的を共有できるか
仲間とのつながりを感じられるか
を組織文化として設計している。
これは偶然ではない。
「能力」だけではイノベーションは生まれないことを理解しているからだ。
「考え方」とEQは何が違うのか
京セラ哲学の「考え方」は、倫理と利他を中心に据える。
AmazonのEQは、心理と関係性を中心に据える。
アプローチは違う。
しかし本質は似ている。
どちらも言っているのは、
人間の内面を設計せずに、成果は持続しない
ということだ。
イノベーションは技術の問題ではなく、人間の問題である。
私はISO 56001や56002の議論に関わる中で、
イノベーションを支える仕組みとは、結局のところ、人が動ける「場」をどう設計するかにかかっていると感じている。
情熱が発揮される場があるか。
正しい考え方が共有される場があるか。
心理的安全性が確保されているか。
多様な意見や価値観が尊重されているか。
仕組みとは、単なる制度や手順ではない。
人が安心して挑戦し、多様性の中から新しい価値を生み出せる環境を整えることなのだと思う。
能力が高い時代ほど、内面設計が重要になる
AIが進化し、能力の差が急速に縮まる時代。
だからこそ問われるのは、
何のためにやるのか。
誰のためにやるのか。
どのような考え方でやるのか。
である。
京セラはそれを「京セラ哲学」として組織文化に根づかせた。
Amazonは、感情知能を軸に、それを組織文化として制度化している。
時代も業界も違う。
だが、目指している地点は驚くほど似ている。
イノベーションの成否を分けるのは、制度そのものよりも、
その制度を支える人の内面のあり方なのだと思う。
