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あの日、スーツを仕立ててもらった場所へ。 -AOKI 横浜港北総本店-

社会に出るための服、というものがある。

ジャケットを羽織り、ブラウスの襟を整え、パンプスに足を入れる。

その一つひとつが、
「これから私は、自分の足で生きていくのだ」と自分に言い聞かせるための、ささやかな儀式のようなものだった。

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18歳のとき、私は親元には戻らず、シェルターから自立して生活することになった。

そのタイミングで、AOKIさんにスーツ一式を仕立てていただいたことがある。

スーツだけではなかった。
ブラウスも、カバンも、パンプスも。
社会に出るために必要なものを、上から下まで、すべて揃えてくださった。

しかも、無料で。

当時いたシェルターと提携して、AOKIさんがボランティアとして支援をしてくださっていたのだと思う。

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あのときの私は、これから先の人生に対して、期待よりも不安のほうがずっとずっと、大きかった。

自分はちゃんと生きていけるのだろうか。
これから先、ひとりでやっていけるのだろうか。

そんな不安を抱えた私にとって、スーツを仕立ててもらうという経験は、ただ「服をもらうこと」ではなかった。

「大丈夫。あなたは外に出ていける」

そう言ってもらえたような気がした。

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だから私は、そのときからずっと心に決めていた。

いつかまた、自分でスーツの上下セットアップを買う日が来たら、必ずAOKIさんで買おう。
そしてできることなら、あの総本店で買おう、と。

先日、その約束を果たしに行ってきた。

都筑区にある、AOKIさんの総本店。
私にとっては、ただのスーツ屋さんではない。
社会に出る前の私を、そっと整えてくれた場所だ。

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接客してくださったスタッフの方に、
思い切って、昔のことを話した。
「以前、シェルターにいた当事者として、こちらでスーツ一式を仕立てていただいたことがあります」と。

すると、とても喜んでくださった。

「えー!…私、担当したことあります。今でも年に2回くらいいらっしゃるんですよ!みなさん不安な顔で、遠慮がちに選ぶものだから、いつも、なんともいえない気持ちになって…」
「そうですよね。わたしもきっと、当時はそうだったと思います笑 自己肯定感低かったので…」
「そりゃそうよねぇ…でもこうして今日、来てくださって… この仕事しててよかったわ~😭笑」

ああ、来てよかった、と思った。

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支援というものは、受け取った側の人生の中で、長く残ることがある。
その場ではうまく言葉にできなくても、何年も経ってから、ふと「あれは本当にありがたかった」と胸に戻ってくることがある。

私にとって、AOKIさんのスーツは、そういうものだった。

あの日、誰かが整えてくれた服を着て、私はひとり、自分の足で立って歩くことになった。
そして今度は、自分で働いたお金で、もう一度その場所に戻ってきた。

これは、過去の私への報告でもあり、支えてくれた人たちへのささやかなお礼でもある。

あのときの私へ。
ちゃんと生きてるよ。
自分でスーツを買えるところまで来たよ。

そして、あの日私にスーツを仕立ててくださった方々へ。
あの支援は、ちゃんと届いていました。
何年経っても、忘れていません。

本当にありがとうございました。

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