サンセット・サンライズ 感想
「テーマの多さは武器にもなるが、整理されなければただの散漫」の最もたる例か。
鑑賞中にずっと引っかかっていた違和感。
それが何なのかを自分なりに整理してみると、「とにかく詰め込みすぎている」という一言に尽きる。
地方移住、東日本大震災の傷跡、空き家問題、コロナ禍、恋愛模様、豊かな食文化、盛り込まれた要素は枚挙に暇がない。
だがそれぞれが有機的につながっておらず、作品としての芯が朧げに進んでいく。
テーマの融和を図ろうとした脚本の意図は伝わるものの、まとめ方がどこか説教くさいし深掘りも乏しい。
若年層向けの所謂「エモさ」狙った空気感が、逆に空回りしているように感じた。
俳優陣の演技もまた、この温度差の犠牲になっていたように思う。
全体にやらされている感が強くシリアスな題材とは裏腹に、どこかチープに感じられてしまう質感がある。
特に、菅田将暉の演技は個人的に寒さを覚えてしまった。
が、井上真央の憂いを帯びた表情作りには一定の説得力があり、印象に残る場面もあったのも事実。
物語の展開も心をつかみ損ねている。
静かな笑いを誘うコメディ調から一転、島民たちが唐突に感情を爆発させるような場面へ突入する構成は、やや唐突すぎて感情の流れに乗れなかった。
シリアスへの転換点として用いるには動機も描写も薄く、単なる「場面転換」にしか映らないのが惜しい。
岩陰で突如「小便したい」と叫ぶヒロインのシーンも、奇をてらっているようで全く面白さが伝わってこない。
どれも理由はあるのだろうが、それが伝わるだけの演出や説得力が追いついていない印象だ。
劇伴がほぼ無音だった点も、演出意図とは思うが機能しているとは言いがたい。
音を排したならば、その分脚本や演技で感情を引っ張ってほしかった。
ロマンス要素についても、恋愛の過程が極めて機械的で感情の芽生えに共感する余地がほとんどない。
相手役の被害者性を物語に利用しているように見えてしまったのも引っかかる。
とはいえ料理の描写には力が入っており、食卓のシーンだけは視覚的に楽しかったです。
