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「こんなに原価が高いものは、売れないよ」から始まった開発。

設計図を持って、川崎の協力工場を訪ねたときのことです。

TILLET W-GEARの機構設計図を広げると、職人さんはしばらく黙って図面を眺めていました。そして言ったのです。

「こんなに複雑な設計、金型費が相当かかりますよ。それに原価も高い。これ、売れますか?」

金型とは、型の中に溶かした樹脂を流し込んでパーツを成形する、ものづくりの基本となる道具です。設計が複雑になるほど、その金型を作るコストが跳ね上がります。

コストを抑えようと、できる限りの工夫はしました。それでもなお、職人さんが心配するほど原価は高くなった。品質に妥協しなかったからです。

「本当に良いものを、適切な価格で、適切な場所で売れば、必ず伝わります」

そう話しながら、自分自身に言い聞かせていた部分もあったかもしれません。

美容機器の筐体(本体樹脂)は、この金型からできる。たい焼きのプレートの様なイメージで、方の中に溶かした樹脂を流し込んで製造するため、数ミリの誤差も許されない。この金型を作るのに何千万円の投資となる。WQCでは最もお金のかかる金型設計も内製化して、コストダウンをする。

TILLET W-GEARとは

TILLET W-GEARは、2020年にリリースしたプロ用多機能美容機器です。

美容クリニックやエステサロンで使われるプロの技術を、1台に凝縮しました。当時、業界最多の機能搭載でした。

・エレクトロポレーション(特殊電気パルス波形による美容成分の浸透)
・イオン導入(イオン電荷の性質を利用した成分浸透)
・EMS(微弱電流による電気刺激で筋肉へアプローチ)
・赤色LED照射(620〜632nmの可視光線)
・バイブレーション(毎分8,000回の振動)
・出力レベル1〜10の微調整機能

これだけの機能を、脱着式のアタッチメントで切り替えられる設計にしました。フェイスケアにもスカルプケアにも対応できる。1台で完結する。それがコンセプトでした。

現在はTILLET SMART-GEARがさらに機能を進化させていますが、W-GEARが「プロの道具を一般の方へ」という道を切り開きました。


脱着式アタッチメントの「難しさ」

職人さんが設計図を見て心配したのには、もう一つ理由がありました。

脱着式のアタッチメントという設計です。

「これ、ミリ単位どころか、もっと細かい精度が必要になりますよ」

その通りでした。美容機器において、脱着式のアタッチメントは最も不具合が出やすい部分のひとつです。

付け外しを繰り返すたびに、わずかなズレが生まれます。そのズレが積み重なると、接触不良や動作不具合につながります。川崎の職人さんたちとミリ単位以下の精度を出すために、金型の設計を何度もやり直しました。

コストを抑える努力はしました。でも、精度には妥協できなかった。使いやすさも、品質のうちだからです。


一番苦労したのは、電気の話でした

機構設計と同じくらい、いやそれ以上に苦労したのが電気制御の設計です。

エレクトロポレーション——特殊な電気パルス波形を使って、美容成分を肌の奥まで浸透させる技術です。効果があることは学術論文で示されていました。問題はその「再現」でした。

電気の波形、強さ、タイミング。微細な数値の違いで、浸透度がまったく変わります。川崎市内の企業と連携して、第三者機関による浸透測定試験を何度も繰り返しました。「この数値でいける」と思った翌日に、また結果が変わる。その繰り返しです。

何度調整したか、正直もう数えていません。

ただ、その積み重ねがあったからこそ、「確かに効く」と言える数値にたどり着けました。TILLETのエレクトロポレーションが学術論文を根拠にして、第三者の浸透測定試験で結果を出していること——それが、私たちの技術の裏付けです。名前ではなく、数字で語る。それが渡久クリエイトのやり方です。


「特許取得」「ハイパー○○」という言葉について

少し踏み込んだ話をします。特定のメーカーを批判したいわけではありません。ただ、知っておいてもらえると判断の助けになる話です。

美容機器のカタログや広告を見ていると、目を引く言葉が並んでいます。

「特許出願済みの独自波形」「ハイパー○○テクノロジー」「革新的な□□波」

自社で電気設計を行っている立場から、率直にお伝えします。

これらの多くは、電気のパルス波形の種類の話です。波形には無数のバリエーションがあります。その中から「これは弊社独自の波形です」として特許を出願すること自体は、技術的にそれほど難しいことではありません。

大切なのは波形の名前ではなく、「その波形で、学術的に根拠のある効果が出ているか」「第三者機関での試験結果があるか」という点だと思っています。

TILLETが学術論文を基に、第三者浸透測定試験を繰り返したのも、「言葉ではなく数字で語る」ためです。凄い名前より、確かな結果。それが私たちの判断基準です。


コロナ禍が、TILLET W-GEARを広めた

職人さんの心配をよそに、W-GEARは想定していなかった形で広まっていきました。

販売チャネルとして選んだのは、美容室です。エステサロンではなく、美容室。当時としては珍しい選択でした。でも、ここに確信がありました。美容室に来るお客様は、美容への感度が高い。プロが実際に使っている道具を、自分も使いたいというニーズが必ずあるはずだと。

その読みは当たりました。

コロナ禍という時期に、プロの美容師さんが実際に使っているのを見て「私も使いたい」と購入する。使ったお客様が友人に話す。その口コミが、静かに、でも着実に広がっていきました。

広告ではなく、本物の体験が人から人へ伝わっていった。

川崎の職人さんへの答え

「こんなに原価が高いものは、売れませんよ」と心配してくれた職人さんに、今なら胸を張って話せます。

売れました。川崎のものづくりで、売れました。

本当に良いものを、適切な価格で、適切な場所で届ければ、必ず伝わる。

その確信は、これからも変わりません。


次回予告

次回は「Made in Kawasakiブランドが見据える、美容機器の未来」について書く予定です。

国内製造の可能性と、私たちが次に挑戦しようとしていることをお話しします。

フォローしていただけると、見逃しません。

株式会社渡久クリエイト専務 渡部悠


ハッシュタグ

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Sources:

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