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【都市を読む#1】人と二輪とストリートと

 大学院を卒業してから5年。組織設計事務所で4年のランドスケープ・都市基盤設計、親会社の不動産デベロッパーで1年のエリアマネジメント・まちづくりDXに実務で従事してきました。ふと、目の前の業務に追われてばかりで、改めて「都市を読む」という基本的な作業とその先にあるこれからの「都市を思考する」ことへの意識が足りていないのではないかと感じたので、拙筆ですが実際に訪れた都市をテーマにnoteで発信したいと思います。
 暇つぶしの読み物としてご笑覧ください。

 【都市を読む#1】として、先日GW休暇で訪れたベトナム・ハノイで見た人々のライフスタイル、特に道路空間におけるストリートライフについて書いてみようと思います。

二輪車と人が共存する歩道空間(Photo by Daichi Matsumoto)

▪️街を支配する二輪車たち

 東南アジアに行かれたことがある方であればご承知の事かと思いますが、ベトナム・ハノイも例に漏れず街中にはとにかく二輪車が走り回っています。走り回っているということは二輪車の駐車も日本では考えられないくらい多い訳でして、感覚的にはハノイ旧市街の道路を走行中及び駐車中の二輪車の数は、人の数より多いのではと思ってしまうほどです(真面目に言うと、二輪車は人が運転しているし、二人乗り以上も多いので確実に人の方が多いはずですが)。
 念の為、確からしい数字感だけ抑えておくと、ベトナムの人口一人あたり二輪車保有台数は0.74台に対して、日本の人口一人あたり台数は0.083台となっており、およそ9倍にあたります(*1,2:共に2024年の統計)。

 下記写真からも見てとれるように、ハノイの道路空間は車道も歩道も二輪車が支配すると言っても過言ではありません。歩車道の境界は、日本と同様に縁石のような施設で分離されているものの、多くの縁石が日本のような箱型のものではなく、車道側から歩道側に向かってスロープ型の形状になっており、どこでも歩道に二輪車が乗り上げられるようになっています。道路施設物のディテールにも二輪車の都市であることが表出しています。

ハノイ市街の交差点(Photo by Daichi Matsumoto)
ハノイ市街の歩道上に駐車された二輪車と二輪車仕様の縁石(Photo by Daichi Matsumoto)

*1 <出典>台数:National Traffic Safety Committee (NTSC) Vietnam、人口:IMF - World Economic Outlook Databases
*2 <出典>台数:⽇本⾃動⾞⼯業会 全国軽⾃動⾞協会連合会 総務省、人口:IMF - World Economic Outlook Databases

▪️”ウォーカブル”とは言えない歩行環境

 日本の都心部の都市計画、まちづくりの計画において”ウォーカブル”というキーワードが掲げられて久しいですが、日本人の私からするとハノイの街は全く”ウォーカブル”とは感じられませんでした。それぞれの国・都市の社会状況や文化も異なるため、その状況を批判する訳ではないですし、ハノイでの暮らしに慣れている訳ではない旅行客の日本人がそのウォーカブル性の低さを指摘したところで現地の人は知ったこっちゃない、という感じでしょう。
 ただ体感したこととして、現地のストリートを歩いてみた感想を”ウォーカブル”という切り口でいくつかの観点で語ってみたいと思います。

①「歩道」の機能は人のため?二輪車のため?

 日本でもまさに2026年4月1日から道路交通法の改正により、自転車による危険な歩道走行が青切符の対象となるなどタイムリーなテーマですが、基本的に日本では歩道は「人が歩くため」の機能を主に担っていると言えるでしょう。しかし、ハノイは異なるように見えました。次の写真のように、道路沿いにカフェなど商業施設が立地している歩道には二輪車が人々の歩行を妨げるように駐車されているのです。もちろん全ての歩道がこのような状況ではありませんが、街中で何ヶ所も見られた印象的な光景でした。
 前述の縁石のデザインも然り、ベトナムでは歩道は二輪車のための空間にもなっていると言えるのかもしれません。

商業施設エントランス前の歩道は二輪の駐車がたくさん(Photo by Daichi Matsumoto)

②人はどこを歩いているのか?

 では、人はどこを歩いているのでしょうか。上述の通り、歩道を歩いていくとたちまち二輪車の駐車に阻まれて、車道にはみ出しながら歩かざるを得ません。
 路面の商業店舗の前に人が並ぶ時にも歩道上は駐車された二輪車によってスペースがないため、人々の滞留スペースは自然と車道にはみ出てしまいます。車が通行する際には、人だかりが形を変えて避けてあげるという構図です。確かに、駐車された二輪車は動けませんが、人は自由に動けるので効率的な仕組みなのかもしれません。

車道を歩く人々(Photo by Daichi Matsumoto)
路面店の前に並ぶ人々も車道にはみ出す(Photo by Daichi Matsumoto)

 車道にはみ出したくなければ、二輪の駐車と建物の隙間を歩かざるを得ません。下記写真は路面に向かってベンチを設えた素敵なコーヒーショップですが、歩道上で二輪の駐車、歩行者、ベンチに座る人という3者がぎゅっと混在する状況で、ちょっと勿体無いと思ってしまう気もしますが、これが彼らのストリートライフなのでしょう。

歩道上に駐輪された二輪車と建物の隙間を歩く人々(Photo by Daichi Matsumoto)

③「歩道」の機能はやっぱり人のため?

 さて、これまでハノイの歩道は二輪車のための空間なのではないか、そんなことを書き連ねてきましたが、もう少しよく観察していくと日本の歩道とは異なるシーンが見受けられました。これまで載せてきた写真の中にもいくつかそのシーンが映り込んでいますが、歩道上を歩く場所としてではなく、座ったり、食事をしたり、店番をしたり、店自体が飛び出していたりと人の色々なアクティビティの場として使いこなされているのです。

路面店の店番は基本路上に座って(Photo by Kenta Enokubo)
歩道上に路面店の陳列や住居のダイニングスペースも滲み出す(Photo by Daichi Matsumoto)

 歩道上に滲み出しているのは、店舗なのか住居なのか判然としないものも多くありましたが、とにかく建物から歩道に暮らしが滲み出しているシーンが多く見受けられました。これは、ハノイの気候や建物内部の環境も影響しているのでしょう。日中は屋外空間の方が居心地が良く、生活の場として歩道を使いこなしているのです。
 下記のように水辺や店舗の前庭的な歩道にベンチやテーブルを置いているシーンもよく見られました。ハノイの歩道は”ウォーカブル”ではないかもしれませんが、”アクティブル”と言えるのではないか(そんな英語はありませんが)、そしてやっぱり歩道は人のための空間なのではないか、そんな風に思えました。

西湖の水辺の歩行空間に並べられた可動式・固定式のテーブル・ベンチ
(Photo by Daichi Matsumoto)
店舗の前庭として歩道に滲み出す什器(Photo by Daichi Matsumoto)
観光客も郷に入れば郷に従う(Photo by Daichi Matsumoto)

 初めて行ったハノイという都市のストリートを人と二輪という2つの視点で読んでみました。日本の道路空間のあり方も、国交省が掲げる「2040年、道路の景色が変わる」という施策方針にもあるように、新しい未来を描いていく過程にあります。改めて道路空間、歩道はどうあるべきか、そんなことを考えながら、歩きスマホをやめて歩いてみてはいかがでしょうか。

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