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【連載小説】扉 vol.1 「プロローグ」

 ここはどこなんだ…。


 俺は、あの時、図書館で本を読んでいるときに、本から光が溢れて…。


 そして今、なんだかわからない世界にいる。

ここは、暗くてよく見えないが、何本か枯れ木がまばらに立ったまま朽ちているようだ。

太陽らしきものは登っているが、この暗さを明るくするほどの明るさはない。


 というか、ここはどこなんだ? 俺以外は人影もない…。

俺は…。まさか、ワープしちゃったの? それとも異世界?


 そもそも、図書館であの本を見つけたときに、うさんくせーとは思ったんだ。

 図書委員の俺が、全く知らない本があること自体がおかしいのだ。

俺は一年のときから、蔵書を愛する少年だった。俺ほど蔵書を愛するものはいない。

 そう断言できるほどの本バカだった。


 その俺が知らない本…。


 本のタイトルは『扉』。


 まさに今の状況にふさわしいタイトルだ。


 その本を開いてみたところ、この状況ってわけだ。



 俺はとにかく情報分析にかかることにした。

まず、自分の頬を思い切りつねってみた。

『いでででで』

どうやら夢ではないらしい。


 次に場所の確認。

夜の砂漠の様な場所に、朽ちた木が何本かまばらに植わっている。水はないが、向こうに砂の地平線がみえていることから、この砂漠は相当規模大きいことがわかる。


 次に自分の装備確認。

学生服。以上。

 普通はなんか剣を持つとか、そういうのがあるんじゃないのー。

かなり不満。


 とにもかくにも、ここから脱出せねば助からないだろう。

このまま救助を待っていたって、誰も助けにこないのは明白だ。

俺は、砂を蹴りながら、地平線を目指した。


 しかし、行けども行けども見渡す限り同じ風景。

せめてオアシスを見つけないと、このままじゃ死んじまう。

なにしろ装備が学生服のみ。おやつにもっていた、ガムくらいしか持っていない。

 とにかく水のあるところを探さないと…。


 あたりは徐々にくらくなり、夜になった。

月のない晩。星がきれいに見える。

俺は、とりあえず今日は進むのを止めた。暗がりで歩いても効率が悪いし、水分補給もできそうにない。

朽ちた木の下で眠りにつく。

歩き疲れたのか、ぐっすりと休むことができた。


 翌朝、朝と言っても暗いが、もう一度頬を思い切りつねってみた。

やっぱり痛い。

やっぱり夢じゃない…。

どこかの世界へ飛ばされたのだ…。

俺は、その手の本は得意分野で、よく読んでいたからわかる。


 これって勇者フラグ?


 そのあとはまた歩き始めた。

三時間は歩いただろうか、そろそろ本格的に水分補給が必要だ。

水分不足で頭がくらくらする。

とうとう足を止めると、一本の木の下にうずくまった。

俺の予想では、こんなとき、必ず助けが来てくれるはず。

しかし、来たのはよく竜のようなモンスターだった。

モンスターは俺を狙っている。

これなんてゲームー? ゲームオーバーしちゃうよ? 俺、こんなとこで終わっちゃうよ?


 その時だ。

どこからか砂を蹴って進む音がした。

銀色の鎧をつけた、青年だった。

青年はモンスターと対峙すると、先制攻撃を仕掛ける。

功をそうしたのかモンスターは一撃で倒されていった。


 青年は振り向くと、

「お前はなぜここにいる? 丸腰の人間がこのような危険な場所にいてはいけない。すぐに立ち去れ。」

と言った。

俺は、俺以外の人間に会ったのがとても嬉しかった。

「立ち去るにも、道がわからないのです。

水分もなくて、もう歩けないのです」

すると青年は水筒らしきものを差し出して飲め、と言った。

そして、馬を連れてくると、乗れ、と言った。


 そのまま、近くの村まで運ばれた。

村の近くは普通に明るくて、台湾の商店街のように、活気づいた街だった。なにより、言葉が通じる世界でよかった。


 青年は俺を降ろすと

「ここまでくれば大丈夫だろう。それでは」

と言って立ち去った。


 立ち去られても、俺、金も持ってないから、何も食えない。


 とりあえず飯屋に直談判ときた。


 「あのー、昨日から何も食ってないんす。よかったらバイトで雇って、何か食わせてもらえませんか?」

一軒目はだめだった。それでも諦めずに二軒目にアタック。

三軒目、四軒目…。

さすがに俺も諦め始めた五軒目。

「いいよ、その代わりしっかり働いてもらうからな」

と、いかつい店主は言った。

約二日ぶりに食う飯のうまいことといったら、なかった。



 その日から俺はこの店で働き始めた。

店主はいかつい割には親切で優しい。

俺のいた世界のこともよく聞いてくれた。

それによると、やはりここは異世界らしい。


 さっきいた砂漠はモンスターの宝庫で、勇者が修行するために行くところらしい。



 「ところで君の名前を聞いていなかったが」

と今更ながら言う店主。

「名前っすか?名前はケイタっす」「ケイタか……なかなかよい名前だのう」

「あざーっす。そんなこと言われたのは初めてっす」


 仕事は朝早くから深夜までかかった。

でも、毎日楽しい日々だった。

たまにイチャイチャカップルが来て、リア充め、とか思ったりしたけど、それ以外は楽しい日々だった。



 ある日のこと、ドジャーンというドラが鳴り響いて、人々は慌てて土下座をした。

俺はなんのことだかわからなかったため、一人立ち尽くしていたら、店長から、

「早くしろ!」

と小声で言われ、同じように膝をついた。

「店長、あれは何ですか?」

小声で聞くと、しーっと合図された。

ド派手な一行が進んでゆく。

象のような動物の上にはてんがいがあり、ゆったりとした席が設けられていた。

それ以上は店長に頭を押さえらるて見ることはできなかった。


 一行が立ち去るまで土下座をしていた人々は、一行が去るといつも通りに商売を始めた。


 店長は、

「あれは王子の行列だ。逆らう者は容赦ないぞ。」

と言った。

王子かぁ、いいご身分だな。

そう思っていたら、周りを数十人の兵士で囲まれた。

「先程敬意を払わなかったのはこやつです。」

兵の一人が言う。

どれどれ……と覗いた上官の目の色が変わる。

「こ、これは……怪我のないようにひったてぃ!」

俺つれてかれちゃうの?

「店長〜」

「ケイタ、すまない、何もできない」

俺つれてかれちゃうよ!

ひどいよ!

 非情にも兵士たちは、俺にゆるくロープをかけ、馬に乗せて俺を王宮へとつれていった。

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