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根っこ

どうしても動かなければならないときが、人生にはある。

お金がない。
家がない、あるいは失われようとしている。
心も体も限界に近いのに、止まることが許されない。
選択肢がなく、余白もなく、「今を乗り切る」以外のことを考える余裕がない。

こういう状況は、努力や気合いではどうにもならない。
にもかかわらず、人はここで自分を責めてしまう。
「もっと前向きになれたはずだ」「ちゃんと考えれば別の道があったのではないか」と。

だが、まず言いたいのはひとつだけだ。
こうした状況に置かれている時点で、すでに十分すぎるほど頑張っている。
これは精神論で乗り越える局面ではない。
生存のフェーズに入っているという事実を、正しく認識する必要がある。

◆ 生き延びるフェーズに入ったとき、人はどうなるか

住まいやお金といった生活基盤が揺らぐと、人の心は強い緊張状態に置かれる。
これは甘えでも弱さでもなく、生理的な反応だ。
安全が確保されていない状況では、脳は常に警戒モードになり、先のことを考える余裕を失っていく。

その結果、「前向きになれない」「何も感じたくない」「考えるのがつらい」といった状態が現れる。
これを怠慢や逃避だと誤解されがちだが、実際には心がこれ以上壊れないように自分を守っている状態だ。
感じる量を減らし、思考を単純化し、今日をやりすごすことに集中する。
これは、防御として極めて正常な反応である。

だからこの時期に、「ちゃんと向き合わなければ」「気持ちを整理しなければ」と自分に要求しすぎないことだ。
向き合えないのは、まだその段階ではないからだ。
まず必要なのは、安全に近づくこと、生き延びること。
それ以外の課題は、後回しでいい。

◆ 動かざるを得ない現実と、心の扱いを切り分ける

お金がない、家がないという状況では、現実的な行動が否応なく求められる。
役所に行く。
不動産屋を回る。
書類を書く。
条件を比較する。
連絡を待つ。
体は動かさなければならない。

しかし、ここで大切なのは「体を動かすこと」と「心まで前を向かせること」を同一にしないことだと感じている。
外側が動いているからといって、内側まで無理に前向きである必要はない。
希望を持てなくてもいい。
意味づけができなくてもいい。
今はただ、必要な手続きを一つずつ終わらせる。
それだけで十分だ。

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