【連載小説】輝夜姫 vol.19「月夜」完結
満月の夜。
月は一層輝き、私たちを照らした。
今回は警護の者たちもおらず、お爺さんとお婆さん、お花ちゃんに少納言、中納言、大納言と帝だけが静かに迎えを待っていた。
私は着物を女物に変え、長い髪は結わずにそのまま後ろに流した。
「桃太郎、きれいだで」
「ほんに、美しい……」
お爺さんとお婆さんが呟いた。
「かぐや姫〜!」
と嘆き悲しむのは少納言、中納言、大納言。
お花ちゃんも綺麗だと褒めてくれた。
帝は何も言わず、ただ微笑んでその様子を見ていた。
月が一層明るさを増したときに、月から何かが降りてくるのが見えた。
それは天かける天女たちと、牛車だった。
ゆっくり降りてくる月の者たち。
その美しさに、お爺さんもお婆さんも、お花ちゃん、少納言、中納言、大納言も言葉を失った。
しんとした屋敷の中へ車は入ってきた。
そして、どこからともなく声がする。
「かぐや姫、さぁ、車にお乗りなさい……婚約者も一緒に……」
私は帝に手を差しのべると、車に乗ろうとした。
そのとき、声が私にきつく尋ねてきた。
「かぐや姫、まさか、生娘ではないな?!」
私は頬を赤く染めながら言った。
「はい、生娘ではありません」
天女たちがざわめいた。
「ああ、なんということでしょう?!生娘でなければ天へ昇ることはできません」
「ということは?」
「今回お前を連れて帰るわけにはいきません」
「ええっ、ではどうしろと……」
「お前は天女として転生することが叶わぬ身となりました。この世で転生を繰り返すだけの存在……それにお前はなってしまいました」
声は悲しく震えていた。
「では……?!」
「もう二度とお前を迎えに来ることはできません。地上でその命を全うしなさい」
「それは、月へ戻らなくても良いということですか?」
「ええ、次に生まれ変わろうと、私たちは迎えにこれません」
やった!と少納言が言った。
お爺さんもお婆さんも、手を繋ぎあって喜んだ。
月の使者は、静かに音もたてずに昇って行き始めた。
帝と私は目を合わせると、優しく微笑み合った。
中納言が
「よかったです……」
と泣き始め、大納言がその肩を掴んだ。
お花ちゃんは両手を合わせて前で組み、
「桃太郎さん、残れるだか……」
と涙腺を緩ませた。
◇
今日も道場で稽古の一日だ。
私は帝と結婚した。
お爺さんとお婆さんは鬼ヶ島で生き生きと暮らしている。
少納言、中納言、大納言は道場の見張り番を言い遣っている。
お花ちゃんはこの春、丁稚奉公だった青年と結婚することとなった。
私たちの幸せは、これからだ。
2014年4月11日 完結
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