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【熊本グルメ】うま味に溺れる午後。七屋の熟成メジナと出汁茶の誘惑【りゅうきゅう丼】

風がやわらかく吹いていた、昼下がり。

定期通院の際の密やかな楽しみ。
それは、ランチだ。

「今日の昼は、ちょっと特別にしようか」
そんな小さな約束を、心の中で交わしながら。

偶然目にした、あのインスタの一枚。
艶やかな身を湛えた“メジナ”の姿が、光をはね返すように現れて、
あぁ、これはもう…導かれているとしか思えなかった。

たどり着いたのは、海鮮食堂『七屋(ひちや)本店』。

暖簾をくぐると、潮の香りがふんわりと鼻先をかすめた。


少し早めの時間だったせいか、席はすんなりと空いていた。
それでも、店の中には静かな熱気がある。
期待と記憶が混ざり合ったような、そんな空気。

テーブルに案内してくれながら、大将が、
ふっと目を細めて「久しぶりですね」と。

そう、久しぶり。
思わずこちらも笑ってしまった。

迷いに迷って、それでもやっぱり選んだのは
いつものりゅうきゅう丼、そして、出汁茶。

魚の量を増やすかどうか最後まで悩んだけれど、
今回は“いつもの味”にゆだねることにした。

そして、やってきた“その時”。

目の前に差し出された器には、きらりと輝く熟成メジナ。
その艶に、息を呑んだ。
添えられたお吸い物と香の物が、そっとその脇にたたずんでいる。

ひとくち。

まろやかな旨味が、舌の奥で広がっていく。
まるで静かな海の底で、光がじんわりと差し込んでくるような、
そんなやさしい味わい。

魚の甘みというものは、不思議だ。
華やかではないのに、胸にすっと沁みて、
心の中にぽっと火を灯してくれるような、
そんな温度がある。

炊きたてのご飯と一緒になると、それはもう魔法のようで。

あぁ、大盛りにしておけばよかったかな…。
でも、この「少しだけ物足りない」という感情もまた、
次へのときめきを運んでくれる。

けれど、忘れてはいけない。

この物語には、もう一つのクライマックスがあるのだから。

そう、出汁茶

ほんの少し残しておいた魚とご飯に、
そっと、熱々の出汁が注がれる。
その瞬間、香りがふわっと立ち昇り、
空気までもが透明に澄んでいく気がした。

食べかけ失礼しまーす!

出汁の海に泳ぐメジナたち。
ご飯の間から、玉子の甘さがふと顔を覗かせる。
そして喉を通るその瞬間、
言葉なんて、もういらない。

これは、静かな祝福だ。

日常という名のざらついた海に、
そっとひと匙のやさしさを注いでくれる、
そんなひと皿だった。

「また来よう」
そう思ったのは、味の記憶が残る舌のせいだけではない。
大将の笑顔、あたたかな空気、
そして、今この時間にちゃんと“満たされた”という、
心の声のせい。

西原村にも二号店があるらしい。
いつかそちらにも、風のようにふらりと行ってみよう。

けれど今日はただ、
この満ち足りた余韻に、静かに身をゆだねたい。

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