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魅惑の3rdシングル BEST20(前編)──侮れない"第三走者"の底力

序章|3rdシングルの妙味

シングルには順番の"役割"があるんです。1stは突き刺す看板、扉を開ける鍵。2ndは勢いの継続、「ほら、一発屋じゃないでしょ?」という証明。そして3rd――。

多くの名盤で、"アルバムの奥行き"や"作家の本質"が、ここで立ち上がります。リスナーがアルバムに馴染み始めた頃、レコード会社は次の一手を放つ。これが第三走者の怖さであり、美しさです。

面白いのは、レコード会社の読みが外れることも多いんですよ。「これで決まり!」と送り出した3rdが全然売れなかったり、逆に「まあ繋ぎだな」と思ってた曲が大化けしたり。音楽ビジネスって、結局ギャンブルなんです。


名盤からの「三番手」シングル傑作選(代表例)

マイケル・ジャクソン『Thriller』(1982)

3rdシングル:「Beat It」

クインシー・ジョーンズは天才的な戦略家でした。1stでポール・マッカートニーとデュエット、2ndでファンク、3rdでエディ・ヴァン・ヘイレンのギターソロ。全ジャンル制覇の完璧な三段構え。でも、ヴァン・ヘイレンのギャラはビール代程度。昼休みにサクッと録音しただけ。このソロが歴史を変えたのに、彼は後年「あの時ちゃんと交渉すればよかった」と苦笑い。

ビートルズ『Abbey Road』(1969)

3rd扱い:「Something」

"第3の男"ジョージ・ハリスンが、バンド解散直前にようやく王道へ。フランク・シナトラが作者を間違えたほどの名曲。この曲を捧げられたパティ・ボイドは後にエリック・クラプトンと結婚し、「Layla」も生まれた。同じ女性をめぐって、ロック史に残る名曲が2つ――ドロドロですね。

プリンス『Purple Rain』(1984)

3rdシングル:「I Would Die 4 U」

映画のクライマックスで使われ、宗教的な高揚感が観客を包んだ。神への祈りか恋への誓いか――わざと曖昧にした天才の戦略。マイケルが『Thriller』のビデオで革命を起こした翌年、プリンスは長編映画まるごとで対抗した。

オアシス『(What's the Story) Morning Glory?』(1995)

3rdシングル:「Wonderwall」

ノエルは当初この曲を軽視してた。でも時代が反応し、今や結婚式の定番。リアムの不安定なボーカルが「完璧じゃない完璧さ」を生んだ。ノエルは後年「もう聴き飽きた」と言うけど、ライブで毎回やらなきゃいけない。ヒット曲は呪いなんです。

U2『The Joshua Tree』(1987)

3rdシングル:「Where the Streets Have No Name」

プロデューサーのブライアン・イーノがマスターテープを窓から投げ捨てようとした曲。エンジニアが必死で止めた。その一曲が、U2をスタジアムバンドに押し上げた。イーノの癇癪が、歴史を救ったんです。


なぜ3rdシングルに佳曲が多いのか

① リスナーの耳が育つ 1st/2ndでアルバムに慣れた頃、3rdで「あ、こんな曲も」となる。初聴では地味だった曲が、3回目で輝く。耳の学習効果です。

② レコード会社の計算 フック→確定→多面性。この三段構えが70〜80年代の黄金パターン。で、4th以降は「まあダメ元で」。露骨ですよね。

③ アーティストの本音 商業的成功をある程度確保した後、本当に聴いてほしい曲を出せる。プレッシャーからの解放が、名曲を生む。

④ 時間差の魔法 アルバム発売から数ヶ月後、季節も変わった頃に3rdが届く。同じ曲でも、文脈が変わると別の曲に聞こえる。


私が選ぶ「3rdシングル」ベスト20

Billboard Hot 100 最高位影響力でランク付け)


20位 This Is Love — George Harrison

Cloud Nine(1987)/USチャート未登場

1st:Got My Mind Set on You 2nd:When We Was Fab

80年代、ほぼ引退状態だったハリスンを、ジェフ・リンが渋々スタジオに引き戻した。1stのカバー曲が全米1位で本人が一番驚いた。3rdでやっと「今の自分」を歌った。エリック・クラプトンがスライドギターで参加。あの、元嫁の取り合いをしたクラプトンです。二人とも大人になって、音楽で和解。いい話ですね、表面的には。


19位 In the Stone — Earth, Wind & Fire

I Am(1979)/Hot 100 58位

1st:Boogie Wonderland 2nd:After the Love Has Gone

前2曲(4位と2位)から58位で明らかに失速。レコード会社は焦ったでしょう。でもアルバム愛好家には大人気。チャートが全てじゃない好例。モーリス・ホワイトは「音楽は宇宙との対話だ」とか言っちゃう人。メンバーは内心「また始まったよ」と。


18位 Here Comes My Girl — Tom Petty & the Heartbreakers

Damn the Torpedoes(1979)/Hot 100 59位

1st:Don't Do Me Like That 2nd:Refugee

レコード会社と大喧嘩してた時期。『魚雷なんかクソくらえ』というタイトル自体が宣戦布告。59位止まりだけど、ファンが一番愛してる曲。イントロが始まると、観客がワーッと盛り上がる。チャートは嘘をつくんです。


17位 What Can I Say — Boz Scaggs

Silk Degrees(1976)/Hot 100 42位

1st:It's Over 2nd:Lowdown

長年売れなかった男が、後のTOTOメンバーとの共作で突然ブレイク。デヴィッド・ペイチ、ジェフ・ポーカロ――TOTOの母体がここに。3rdは42位で地味だったけど、AOR愛好家のバイブルに。ボズは一発当てた後、また静かに。「別に有名になりたかったわけじゃない」と。


16位 Good Times Roll — The Cars

The Cars(1978)/Hot 100 41位

1st:Just What I Needed 2nd:My Best Friend's Girl

レコード会社は最初、興味なし。ボストンの無名バンド、変な音楽。ところがラジオ局が勝手にかけ始めてリクエスト殺到。41位で終わったけど、ニューウェイヴの教科書に。彼らは「素でこうなんだ」と言ってた。天然のクール、最強です。


15位 Answering Machine — Rupert Holmes

Partners in Crime(1979)/Hot 100 32位

1st:Escape (The Piña Colada Song) 2nd:Him

1stは浮気夫婦の話で全米1位。3rdは留守番電話がテーマ。1979年、留守電は最新技術でした。ホームズはブロードウェイの作家で、後にトニー賞を獲得。3rdでチャートから消えた後、舞台へ。「やっぱり俺の居場所はここじゃないな」と。ポップスター、向いてなかったんでしょうね。


14位 Another Star — Stevie Wonder

Songs in the Key of Life(1976)/Hot 100 32位

1st:I Wish 2nd:Sir Duke

二枚組大作。1stと2ndが大ヒットした後、3rdに選ばれたのが7分超のラテンナンバー。案の定32位で終了。ラジオも「長すぎ」と敬遠。でもアルバム愛好家には大人気。スティーヴィーは天才すぎて、レコード会社の言うことを聞かない。「この長さで完成してる」と拒否。商業と芸術のバランス――彼は常に芸術を選んだ。


13位 Take a Chance with Me — Roxy Music

Avalon(1982)/Hot 100 26位

1st:More Than This 2nd:Avalon

ロキシー・ミュージックは変身の達人。70年代初期は羽根とラメのグラムロック。82年の『Avalon』では完全に大人の音楽に。ブライアン・フェリーはタキシードを着て、ワイングラスを傾けながら歌ってる。

3rdはアメリカで26位止まり。でもアルバムの"軽やかさ"を担当。「僕とチャンスをつかもうよ」――40歳のダンディなナンパ。イギリス紳士のプレイボーイ感。皮肉なのは、このアルバムがバンド最後のスタジオアルバムになったこと。翌年、解散。最高に洗練された瞬間に、幕を閉じた。メンバーは後年「もう全員疲れてた。これ以上何ができる?」と語ってます。


12位 Josie — Steely Dan

Aja(1977)/Hot 100 26位

1st:Peg 2nd:Deacon Blues

完璧主義の化け物。バーナード・パーディですら「もう1回」と何十回もやり直しさせられてキレそうに。26位で微妙な数字だけど、グルーヴは完璧。計算され尽くした音楽。人間味ゼロ。冷たいけど美しい。

アルバムタイトル『Aja』は、ベッカーの元カノの名前。しかもその元カノ、ドラッグの過剰摂取で亡くなってる。表面はクールで洗練されてるけど、裏にはドロドロの私生活。二人は後に「お互いが嫌いになった」から解散。20年後に再結成したけど、「まあ、金のためだよ」と正直に。


11位 Dependin' on You — The Doobie Brothers

Minute by Minute(1978)/Hot 100 25位

1st:What a Fool Believes 2nd:Minute by Minute

内部分裂してました。トム・ジョンストン脱退、マイケル・マクドナルド加入でサウンドが完全に変わった。ロックバンドが、ソフトロック/AORバンドに。古参ファンは離れ、新ファンが付いた。バンド内もギスギス

1stがグラミー賞獲得。マクドナルドの勝利。3rdは25位止まりだけど、アルバムの心臓部。数年後、「もう無理」と解散。でも金が必要になると再結成。音楽業界って、そんなもんです。再結成ツアーは大成功で、みんな家のローンを完済したらしい。


【前編まとめ】

20位から11位まで見てきました。チャート的には地味な順位が多いですが、どれもアルバムの"体温"を担当する重要な曲ばかり。

レコード会社の思惑、アーティストの本音、時代の空気――それらが複雑に絡み合って、3rdシングルは生まれます。そして時に、チャートの数字を裏切って、ファンの心に残る

後編では、いよいよトップ10。全米1位を獲得した伝説の3rdシングルたち、MTV時代を象徴する名曲たち――そして、**3rdシングルの"呪い"と"祝福"**について語ります。

【後編へ続く】

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