沢田太陽の2025年4〜6月の10枚のアルバム
どうも。
では、今月は月が終わらないうちに行きます。恒例企画、沢田太陽の3ヶ月おきのアルバム10枚。2025年4〜6月はこのようになりました!

はい。では早速、行ってみたいと思います。

まずはヤングブラッドの新作「Idols」。僕、彼に関しては上等じゃないんですけど、むしろそのチープな存在感が案外ツボでですね。見ていて80sのビリー・アイドルを思い出すというか、本人自身、それを自認しているのかご本人と共演したりもしていますが、今回のアルバムではアーティストとして一段階上を狙ったか、全編、ブリットポップ調のアリーナロックを展開しております。もう、まんまオアシス、ヴァーヴ、スエードといったあたりの、ちょっとウェットで壮麗なストリングスの乗ったアリーナロック。彼、むしろラウドロック寄りのアリーナロッカーだと思っていたのでこのアプローチは意外ではあったんですけど、そういえばこっち寄りでのそういうのがあっちゃいけないと誰かが決めたわけではなく、うまい具合に「やったもん勝ち」して、これを自分のものにできているのはかなり美味しいかと思います。それで表現の幅広げているわけですしね。一本取られた感じはするし、アーティスト生命伸ばしそうな予感しました。

続いてはスリープ・トークン。これはもう、ここでも何度か言ってますけど、画期的なアルバムですよね。新世代のメタル・バンドとしては初めてとなる英米アルバム・チャート初登場1位。ここから何かが動くような予感をさせたのはそれだけで価値があるし、語るに値すると思います。ただ、アルバムとしてはちょっと今回、後半の展開が散漫な感じがしてたり、「もうちょっとラウドに作っても良かったのにな。静かすぎるかな」と思えるところがあったりと、アルバムのまとまりとしては前作の 「Take Me Back To Eden」の方が名盤として語られることになるかなとは思いました。あっちの方が長さ的にも硬軟のバランスや音のレンジ的にもその風格があるんですよね。ただ、それでもシティ・ポップの「Emergence」、レゲトンの「Caramel」と、メタルにとっては2曲のゲームチェンジャー的な曲があるし、この価値が落ちることはないと思うので、やはり語るべき作品であるのは間違いないと思います。

続いてはBon Iver。彼の場合は毎作、その年のベスト・アルバム候補だったり、場合によってはグラミー賞にもノミネートされたりだとか、批評的価値の高いアーティストの代表みたいな見られ方をしていますけど、僕にとってはセカンド・アルバム以来にしっくりきて好きなアルバムです。ということはなんだかんだで15年くらい経っているわけですが。ちょっと、この前2作はあまりにもテクノロジーに走りすぎたところが強く、肝心な彼のシンガーソングライターとしての歌心が響いてこなかったところでなんかもどかしかったんですけど、6年ぶりとなった今回のアルバムでは、久々のフォークというか、心温まるブルー・アイド・ソウルのアルバムになってますよね、彼があそこまでソウルフルな歌唱ができる人だとは思ってなく、その意味でも新鮮でした。ただ、そこでもエレクトロというかテクノロジーでの音管理はしっかりとなされていて、「人口美の中での自然」みたいな、彼本来の持ち味は発揮されていました。ある意味、彼に関して待ち続けていたタイプの作品だと思いましたね。

続いては、モデル/アクトレス。ニューヨークを拠点とするエレクトロ・バンド。彼らが出てきたの、2、3年前だったかと思うんですけど、あの時に「久しぶりにニューヨークのインディ・バンドって聞いたな」と思ったものでしたが、それに続くセカンド・アルバムです。例えて言うならLCDサウンドシステムがインダストリアル・ロックみたいになった感じというか、初期インダストリアル・ロックが持っていた工業的というか産業廃棄物っぽいというか、金属的ノイズがヒリヒリとした生々しさを出してて、すごくスリリングですね。ロックに本来欲しい刺激というか、こういうのが大事にされていって欲しいものです。一方でThe Dareがポストパンク・リバイバルの時代から脈々と受け継がれるDJナイトライフ的な世界観を表し、方や彼らが暴力的衝動や性的なきわどさを表現する。もっと今を代表するヒップな存在として、もう少し知られて欲しいんですけどね。マイリー・サイラスのアルバムの参加陣に誘われるくらいにはなっているようですが、もう少し注目度高まっていいんじゃないかとは思いますね。

今度はリトル・シムズの新作。色々出してはいましたけど、彼女主体のニュー・アルバムとしては2021年の名作「Sometimes I Might Be Introvert」以来のアルバムと言って良いと思います。今回のアルバムは自伝的内容でもあった「Sometimes〜」のようなコンセプト作ではなく、より音楽的な多様性で迫った作品で、バンド・サウンドを主体として、ネオ・ソウルからファンク、バロック・ポップ、レゲエ、ギターロックと様々なアプローチを試みています。とりわけ注目すべきは男性アーティストの共演で、Obongjayar、モーゼズ・サムニー、マイケル・キワヌーカ、サンファと、オルタナティヴな黒人男性アーティストのオールスター共演を実現させています。この人選からも、彼女が今のヒップホップの世界において、どういう立ち位置でいたいのかが見えてきますね。いみじくもこの作風、同じくイギリスのロイル・カーナーの新作アプローチにすごく近いんですよね。いわゆるプロデューサーによるトラックの概念から離れて、生演奏でのヒップホップへのアプローチ。とりわけトラップが限界を迎えている今、こういうのが突破口の一つとして選択され始めてきているのかなと思います。

ただ、個人的にリトル・シムズを上回りかねない勢いで好きになったのが、このアナステイジアですね。この人、見た感じはラッパーとかR&B、ジャズっぽい感じですが、LA出身のフォークシンガーです。しかも、かなり正統派で、イメージとしては初期のジョニ・ミッチェルを思わせます。あくまでアコースティック・ギター主体で、時折ストリングス入るみたいな、かなりオーソドックスなタイプなんですが、何がビックリって、この人の声ですね。低くてしゃがれてドスがメチャクチャ効いてるんですよ。なんか聴いてて「森進一?」ってなるんですけど(笑)、この声を聴き続けるとこれがかなり快感になってきましてですね。このインパクトだけでかなり話題に話題になれるはずで、やはりというか、アメリカより先にイギリスのBBCの名物音楽番組「Later With Jools」で紹介されていましたね。たしかにMojo、Uncut系の読者が好きそうなうるさ型の大人リスナーが好みそうですし。ラストに一曲だけある、ニール・ヤングがグランジやったときみたいなノイジーなロックとも相性良いので、さらに面白い展開が期待できそうな気がしてます。

はい。ここでまさにリリースされたばかりのLordeです!彼女といえば、今のインディ・ディーバのブームを2010sの前半にラナ・デル・レイと共に先駆けた存在で、かのデヴィッド・ボウイから「音楽の未来」と呼ばれ将来を託されたほどの存在です。ただ、そんな彼女が16歳だかで成功を手にしてしまった人知れぬ代償や前作「Solar Power」で迎えた深刻な創作上のスランプで壁にぶち当たり、しばらくの沈黙の後にこれで戻ってきました。ビリー・アイリッシュを先駆けた初期のダークで重いエレクトロの路線が戻ってきたのも嬉しいんですけど、幼い頃の記憶まで辿り、自身のアイデンティティを改めて強く探った赤裸々な吐露が心にズシンとのし掛かります。中には摂食障害になったことをうかがわせるものもあります。そうしたことは歌詞を検索すればわかることではあるのですが、仮にそれをそこまで知らなくてもその様子は音だけでもしっかり伝わるし、彼女のこれまで4枚出したアルバムでも、そのリアルな本気度では一番の作品で、デビューの時から推してた立場として愛おしい作品です。

続いてはブラック・カントリー・ニュー・ロード。BCNRですね。彼らにとっってのサード・アルバムであり、女性3人ヴォーカル・フロント体制になって初のアルバムです。これに関してはアイザックがフロントだった時代のダンディズム漂うポストロックを好む層と、大学サークル的な華やかさ(まあ、前から持ってたけど)を持つ現体制の苦境を乗り終えてたどり着いた今を支持する層で評価割れた気がします。でも、何度か言ってますけど、僕は彼らの、これまでこのテのポストロック・バンドにありがちだった、ややもするとナード、あるいはインセルっぽい感じが正直苦手だったし、こうしたバンドのイメージを女性にも優しい感じに変えより開かれた感じにしたことにすごく意義を感じるし、メンバーのメンタル・ヘルスでの離脱という重苦しさを糧に立ち上がってくれたことそのものが嬉しいです。加えて、3人の女性フロントたちが次々と表現する、ちょっとアヴァンでストレンジなポップ・センス。これがクセになって一筋縄ではいかず、ここからさらに新しい時代を築き上げてくれそうなポジティヴなパワーを感じます。絶対的に支持したいです。

ただ、同様の路線なら、今回に限って言えばこのキャロラインのセカンド・アルバムの方が勢いとオーラは感じましたね。デビューの時から一部のファンの間では絶賛されてましたけど、これはスケールの大きなマンチェスターからの逸材です。大編成から違うフレーズ、リズムをずらしながら同時演奏したりする高度なジャズ・テクニックを持ちながらもそれが決して難解にならず刺激的なエッジとして響かせ、その根っこには美しいフォークのメロディ・ラインがしっかりある。さらに女性メンバーによるヴォーカルがBCNR同様にこのジャンルにありがちな精神的マッチョ性をうまく和らげている上に、名前繋がりで実現したとおぼしきキャロライン・ポラチェックとの共演まで入っていて。評判の割に全英78位はまだまだ低すぎますが、口コミ効果で必ずのしあがっていくことになると思ってます。

そして、ラストはターンスタイル。これは2025年を代表するアルバムになると思いますね。「ハードコア期待の逸材」としてアルバム「Glow On」で絶賛と共に全米アルバム30位に食い込んできたのが2021年。そのときから「ジェーンズ・アディクションとオフスプリングでハードコア?」とか思ってたんですけど、生粋の90sオルタナ育ちにはそれがハードコアであろうがなかろうが、あの頃のUSのメインストリーム・ロックの要素を組み換えて新しいサウンドを作る、昔の古き良きロックがやってた手法を真正面からやってきたことが嬉しかったものです。そして、今回はその土台の上にザ・ポリスやティアーズ・フォー・フィアーズの要素。フランジャーかけまくったファンタジックなギター。それにも関わらず今どきのパンクキッズにモッシュとダイブをさせてしまえる力。これが不思議だし、メロコアやポップパンクでサウンド的に画一的になりすぎて行き詰まっていたところへの突破口となったのは嬉しい爽快感があります。しかも、前作よりこちらの曲の方がライブの中心になっていきそうな光景もすぐに思い浮かぶ。それくらい各曲が際立ってもいます。「インディ・ロックでフォンテーンズDC、メタルでスリープ・トークン、パンクでターンスタイル」。これをしばらく呪文のように言っていきたいです。
