沢田太陽の2025年間ベストアルバム 10位〜1位
どうも。
では、沢田太陽の2025年間ベストアルバム、いよいよトップ10の発表です。
これも毎年のことですが、他の順位帯はジャケ写コラージュの写真をつかってますが、トップ10だけはガチに、目で見たままの順位です。
今年の僕のトップ10はこうなりました!

はい。毎年いいアルバムばかりなんですけど、今年はトップ10、他にも入れたいものも少なくなく、迷った末に選んだ10枚がこれらです。
早速10位から行きましょう。
10.People Watching/Sam Fender

10位はサム・フェンダー。10位、9位は今年のイギリスのことについて語りましょう。まず今年のイギリスで語るべきことの一つは、サム・フェンダーがその地位を確固たるものにしたことです。ひとつは、あの国でエド・シーランの頃から続いていた「男性ソロの時代」をロックシンガーのものに転化させたこと。これ、2019年に彼がデビューしたときに書いた記事でその可能性に言及してたんですけど、「男性ソロ」というポップな向きに馴染みのフォーマットを利用して彼がリスナーをロックにうまく導入しないかな、と思ってたんですけど、案の定、彼はそれをやりました。そして、イギリスという国において、アメリカのハートランド・ロックのスタイルのロックを一番人気の存在に押上ました。一昔前だったら「ブルース・スプリングスティーンみたいなイギリスのロックが人気」なんてことはありえないことでさえあった。彼はそこも、その間に彼に非常に歌い方の似たキラーズのブランドン・フラワーズを間に挟みながらそれをやりきった。これまでもその兆候はあったんですけど、今作はウォー・オン・ドラッグスのアダム・グランドシエルの力を借りながらハートランドにも、時にはソウルフルなシティ・ポップを通してアメリカン・テイストへの接近に成功しました。そうでありながらも同時にオアシスのテイストも感じさせることで本来の英国ワーキング・クラスらしさもしっかり忍ばせる。そうやって彼はこのアルバムでのマーキュリー・プライズと、8万人規模のスタジアム完売の圧倒的な人気を獲得しました。さらに最近では、同じく2019年デビュー組のフォンテーンズDCのグリアン・チャッテンやルイス・キャパルディとのマブダチぶりもアピール。昨今人気の女性アーティストたちの友情ガールパワーに負けないブローマンスで目立つアピールをし始めていることも頼もしい限りです。
9.The Art Of Loving/Olivia Dean

9位はオリヴィア・ディーン。2025年イギリスでの現象その2、というよりむしろ最大の主役はこのオリヴィアですよね。それはまさに今起こっていることです。今、全英シングル・チャート見れば彼女の曲がトップ10に3、4曲入っている上に、アメリカでさえも、10月にあれだけ猛威を振るったテイラー・スウィフトに代わってチャートを制す段階に入っています。去年の今頃だとまだ、アルバムを1枚出したに過ぎない、「歌は抜群にうまいけど売れるかどうかはわからないR&Bシンガー」に過ぎなかったのに。何が彼女をこのようなシンデレラにのしあげたのか。それはもちろん彼女の実力もありますが、バックのスタッフの制作政略の勝利ですね。もともと彼女、最初からイギリスでのスタッフ、良かったんです。メインで曲作ってたの、ロック系シンガーソングライター、アクアラングことマット・ヘイルズでしたから。今作でもアコースティック・ロックの「Nice To Each Other」は彼の曲。あとロイル・カーナーのスタッフもついてます。そこに、このセカンドではアメリカにまで広げまして、そこで引き込んだのがトバイアス・ジェッソ、そしてエイミー・アレンやジョン・ライアンといったサブリナ・カーペンターのチーム。昨今の外部系ソングライターではベストな類の人たちを引き寄せたんですよね。その結果、トバイアスのモータウン調の「Man I Need」、サブリナ・チームによる60sバカラック風の「So Easy (To Fall In Love)」のヒットを導きました。このアルバム、きわめて完成度の高いソウル・アルバムでもあるんですけど、同時に現代屈指のソングブック・アルバムでもあるわけです。そして忘れちゃいけない。彼女をサム・フェンダーと連番にしたのは「Rein Me In」でデュエットしたから。これはサムのアルバムの方に収録ですけどね。
8.I Barely Know Her/sombr

そして8位にsombr。今年、何の前触れもなく突如現れたニューヨークの20歳の新星。Spotifyでいきなり英米トップ10クラスの曲を「back to friends」「Undressed」「12 To 12」と3曲放ち、今やビルボードのロック系のチャートは完全独占。ロックでアルバムのロング・ヒットが出なくなってきた中で異例の奮闘を見せています。彼の場合、何か特別に新しさがあったわけではなく、突然売れたこともあって、最近の悪い傾向ですけど「インダストリアル・プラント(業界の仕掛け)」とか言って批判する人がいます。レビューもそんなに目立って良いわけではないです。だけど、明らかにBon Iverに影響を受けたと思われるどう聴いてもインディ・ロックとわかる曲をやっている。これがショーン・メンデスとかベンソン・ブーンとかと区別つかないのなら、そっちの聴力の方が心配です。しかも、コライトが何人もついてるどころか曲書いてるのは彼たった一人だけ。それでルックスまで良くてアイドル的な人気まである。そんな人がポップに混ざって別の選択肢与えることに、何か悪いことがあるのでしょうか?1994〜95年に売れてるJpopの中にミスチルやスピッツが混ざっていきましたが、それが音楽を悪い方向に導きましたか?良く考えればわかることですよ。僕はこういう「売れすぎるから良くない」の不毛論を80sの頃にデュラン・デュランとかインエクセスとかで経験済みなので「ああ、またそういうことを繰り返すのか」とsombrへのしょっぱい反応には思うだけです。キャッチーでよくまとまった良い曲たくさん書いてますよ。キラーズの初期の作品とか以来の「売れてるロック・アルバム」の華がある。そういうのが若くして作れる稀有な才能です。潰されずに大事に育っていってほしいです。
7.Never Enough/Turnstile

7位はターンスタイル。2010年代から地道にアメリカ東海岸のボルチモアで活動していたパンクバンドですが2021年の前作「Glow On」の大絶賛で突如ブレイク。そのチャンスを掴むと今作で一気に英米でトップ10を記録。今の時代をリードするパンクの代表に躍り出ました。彼らって前から不思議な魅力を持っていて。前作でもやたらと「ハードコア」と言われていて聴いてみたらジェーンズ・アディクションとオフスプリング合わせたみたいなある種王道なUSオルタナティブ・ロックだったんですが、今回はまるでザ・ポリス!もともとフロントマンのプレンダン・イェーツの甲高い声がスティングっぽくはあるのですが、今回のギター・サウンドはフランジャーとディレイ聴かせまくった70年代後半の「白いレガッタ」とか、あの辺りのザ・ポリスそのもの。そこにホーン絡ましたりシンセサイザー乗せたりとサウンドは変幻自在。それでいてモッシュピット作る用の曲も作りはしているという。ただ、彼らのモッシュピットって、マッチョでスポーティな感覚がすごく薄くZ世代ならではの線の細さがすごく目立つんですよね。前から黒人メンバーはいた上に今作から女性ギタリストが加入してたりするから、その辺りも今なりのリベラルの筋をすごく通すんですよね。自分主催のイベントは必ず雑多なジャンルでやるのも徹底してるし。やはりここから確実に新しい流れは出来てますね。
6.Private Music/Deftones

6位はデフトーンズ。90年代から活動するレジェンド・バンドですが、あのロックの黄金時代のバンドで、あの当時よりも今現在の勢いが上回っている、おそらくは唯一のバンドです。あの当時のリアル・タイムでも時代を制しそうな勢いならあったんです。2000年の名作「White Pony」の頃。あのときに「ニュー・メタル界のレディオヘッド」と言われて。ところが、その次の2003年のアルバムがコケてチャンス逃しちゃったんですよね。あと、やっぱ当時だとラウドロックってキッズにアピールしてナンボのとこもあって、内側で激しく燃えるタイプの彼らってどうしても玄人ウケになってしまって。ただ2020sになって、そんな彼らにスポットライトがなんとtiktokという形で訪れます。そうでなくてもシューゲイザー再評価がシーンでも進んでたんですが、そこでシューゲイズの影響も受けた彼らの妖艶な美メロがすごくZ世代のキッズに好まれたんですよね。代表曲だった「Change」 はもちろん、その後の「Cherry Waves」とか「Sextape」とか。特に若い女の子のウケが良いという話を聞いてます。そして気がついたら彼らは今や「ニュー・メタル時代の大物」みたいな扱いになり、この新作も高い期待を持って待望されました。そして彼ら自身、再評価のポイントを把握していたかのようにドンピシャな作品を作ってくれました。アタックで踏み込んだときの攻撃性と空間をたゆたうようなチノ・モレノの彼にしかできない悩ましさがかけめぐる囁き、そしてここぞというときのセンチメンタルな美メロ(とりわけ「Infinite Source」)。こういうのって、もともとスマッシング・パンプキンズが得意としてたはずのものなんですけど、今繰り出せる楽曲としてはこっちの方が断然上になってますね。今日のロックファンから強くリスペクトされながらもオアシスやレディオヘッドでさえツアーという形でしか拝めず、レッチリやグリーン・デイなども最後の傑作からだいぶ時が経過した今、「90年代のあの時代」のリアリティと興奮を今最もリアルに伝えられているのが彼らになっているところがありますね。
5.Willoughby Tucker, I Will Always Love You/Ethel Cain

5位はエセル・ケイン。アメリカの南部から生まれた孤高のトランスジェンダー・シンガーソングライターのセカンド・アルバムです。2022年に出たファースト・アルバム「Preacher's Daughter」が時間をかけてネットの口コミでカリスマ的な評価を獲得。今年にアナログ発売したタイミングで各国でトップ10入りするという現象まで巻き起こしました。本作はそのアナログ発売数カ月にリリースされた新作です。歌詞の面では保守的な南部で、しかもパフティスト教会関係者のもとに性的不一致の子供として生きてきた苦難、サウンドではダークでメランコリックなドリーム・ポップが話題となりましたが、今作では前作で登場した初恋の男性ウィルビー・タッカーとのロマンスについて、そしてサウンドではプログレ的に長大化したスケールの大きな楽曲が並んでます・・と、来たら本来「おお〜、やっぱすげえ、この人!」ってなっておかしくないんですけど、なんかしょっぱいんですよね、評価が。なんか前作のインパクト、さらにEP「Perverts」で聴かせたノイジーなドローン・ミュージックが刺激的過ぎて期待が過度に膨れ上がり過ぎてたからなのか。あるいは以前からの舌禍癖、とりわけ無名時代にラナ・デル・レイのインスタに嫌がらせ投稿していた過去がバレたからなのか、ちょっと勢い下がってて。でも、ここでの儚くも雄大なドリーム・ポップのサウンドスケープは昨年のキュアーの復活の傑作「Songs Of A Lost World」に匹敵するし、「Fuck My Eyes」をはじめとしたシングル曲には一番良い頃のクランベリーズ並みのキラー・メロディがある。そして今作際立つのはゴシックな作風にアメリカ南部のフォーキーな質感を絶妙に染み込ませてることなんですよね。この辺りもアメリカのその道の伝説、マジー・スターの至宝の継承を感じさせるし。良いことばかりなんですけどね。まあ、コア・ファンには一切関係なく進み、自然と気がついたら傑作認定されると思いますけど。
4.DeBÍ TiRAR Más FOToS/Bad Bunny

4位はバッド・バニー。今やラテン・アメリカのみならず、全世界規模でもトップ・アーティストのバッド・バニー。彼に関しては2022年の決定的ブレイクスルー・アルバムの「Un Verano SIn Ti」もここの年間の7位に入れました。あれは本当に10曲近くが1年以上グローバル・ヒットする一大現象でした。それから1作挟んで今年、バッド・バニーがまたやってくれました。今回も大ヒットはしました。しかし今回の場合、売上の点よりも文化的なインパクトの点で非常に意義深い、しかも「なんであんなに売れるんだ?」と訝しがる人に対して強い説得力のある傑作になってます。「Un Verano SIn Ti」では、かつてはアメリカかぶれだった彼が中南米に目を向けて、その地域のいろんな精鋭たち(そのひとつにザ・マリアズもいた)をプレゼンした「ラテン・アメリカ全体での勝利」を証明したアルバムでしたが、今回彼が示したのは「プエルトリコの音楽的先祖たちへの敬意」。このアルバムで彼は前編にわたって、プエルトリコの伝統音楽であるサルサをレゲトンと融合しています。このアプローチは実は2023年にコーチェラ・フェスティバルのヘッドライナーを務めたきにもやられていてかなり好評だったのですが、彼はプエルトリコの音楽のルーツ、それは彼が親から受け継いだものでもあるのですが、それがサルサにあることを強調。このアプローチを随所に手を変え品を変え繰り出しています。しかも一切単調にならないんですよ。部分部分で強調されるポイントを変えて表現していくので。こうすることで「近頃の音楽はわからん」とばかりにレゲトンを聞かず嫌いになる人達にとっても間口を広げる強い包容力を獲得。レゲトンを普遍化させることに成功しています。しかもタイトル曲のメッセージは「過去の先祖たちを敬うためにもっと写真を残していこう」、彼なりの愛の表現です。そして、これが出た年に彼は「俺のショーを見に行く客がICEに捕まったら大変だ」と全米ツアーを拒否。その宣言をした直後に「その代わりに」とばかりに来年のスーパーボウルのハーフタイム・ショーを担当することが決まりました。こうしたところでも心憎いナイスなヤツです。
3.Euro Country/CMAT

いよいよトップ3です。まず3位はCMAT。1995年生まれのアイルランドの女性シンガーソングライター、シアラ・メアリー・アリス・トンプソン、略してCMATです。彼女の通算3枚目のアルバムですが、隣国イギリスではこれが全英2位を記録してブレイクスルーとなりました。ただ、彼女の本国での支持はこの前からとにかく熱狂的で、かの国ではフォンテーンズDC、ニーキャップ、そして彼女が同国シーンの現在の隆盛を支える三本柱となっています。今のアイルランドのシーンの顔ってだけで上位にする価値はありますが、今年の女性で最高位にまでしたのはそれ以上の理由があります。それは彼女の音楽性とシンガー、リリシストとしての名人芸ゆえですね。音楽的には、分類上はフォーク、カントリーですが、やっぱアメリカのソレを産んだ故郷ということもあってメロディの表情が豊かかつ郷愁を誘うセンチメンタルさが強いです。そこに乗る彼女の鼻にかかってかつファルセットできれいにかつ力強く響く歌い方がそれをさらに色濃く彩ります。さらにロックやソウルのアレンジにも対応可。元の素地が普遍的に力強いから何2でも対応が効く強さがあります。また作詞家としての描写力、着眼点も見事です。「自信を持ってセクシーな写真のっけちゃおうよ!」とネット上でのボディ・シェイミングへのアンチテーゼを歌ったアンセム「Take A Sexy Picture Of Me」なんかは今どきのセンスなんですけど、「ドライブスルーで自身のブランドのチェーン展開するジェイミー・オリヴァーに軽くムカついた」とかのユーモアとか「ジャニス・ジョプリニング」なんて造語作ったりする語感もなかなか思いつくものじゃない。加えて、タイトル曲になった「Euro Country」。これ、アイルランドの故郷への思いを歌った感傷的なカントリー・アンセムと思わせつつ、これが実は2008年のアイルランドの金融ショックを歌ったもので、この影響で友人の親たちが何人か生活苦で自殺したことへの当時の保守政権への怒りを歌った曲だったり、かなりポリティカルな視点(この点はニーキャップとのフォンテーンズとの共通)も持ち合わせていたりね。まだまだ何をやってくるかわからない、懐の深い才女の出現ですよ。
2.Baby/Dijon

そして2位はDijonです。これは今年を代表する金字塔的な傑作のひとつですね。これなんですけど、洋楽の流行りを中心に聴く人にとっては「?」な所もあると思うのでわかりやすく説明すると、ジャスティン・ビーバーが今年の夏に「SWAG」というアルバムを出して大ヒットしたんですが、いつになくロウファイなバンドサウンドみたいになっていたあのアルバムの大元を作っていた人たち、それがこのアルバムに関わった人たちです。ビーバー、このアルバムでグラミー賞のAOTYにまでノミネートされましたが、申し訳ないけどこのアルバムのカラオケにしか聴こえなくて、「そっちじゃなくて、中の人評価しろよ!」と思ってあんまりいい気がしないんですけどね(笑)。。で、このビーバーのアルバムで印象的なギター弾いてる人がMk.geeという、ネクスト・ブレイクがかなり期待されてるインディ・ロックの人でして「SWAG」は彼経由で去年から有名だったんですけど、同時進行していた彼の古くからの友人のアルバムも出るよ、として知ったのがこのDijonのアルバムだったわけです。Dijonに関しては4年前にとあるスマッシュヒットで覚えてはいたんですけど、Mk.geeつながりとはこのとき初めて知ったんですけど、これ聴いてみてびっくりしたんですよね。これいうなれば、フランク・オーシャンの「Blond」の最新進化版ですね。あのデジタルでケミカルなどこか壊れたR&B、あれをもっとライブ感、セッション感を持って進化させた感じなんですけど、聴いてて驚くほどプリンスに似てるんですよ!しかも1984年とか85年とかの、エレクトロ・ファンクでゴリゴリとロックンロールしてた頃の。ピアノのコード進行とかパーカッシヴな電子音とかもですけど、Dijonその人の熱唱がもう思い切りプリンスで。しかもこれが出たのが、プリンスの2000sの最大の継承者、というより昨今のオルタナティヴR&Bの父とも言える存在のディアンジェロが亡くなった年に生まれたというのがなんか象徴的で。こういう言い方は嫌ですけどなんか禅譲の瞬間かなとも思えたりもして。それからこれ、Mk.geeだけでなく、トバイアス・ジェッソとかさらにはBon Iverまでにも至るんですけど、才人たちがスタジオに出入りして一緒に曲を作ってるんですよね。このセッション的な曲つくりの雰囲気がミルトン・ナシメントとロー・ボルジェスの名盤「クルービ・ダ・エスキーナ」の現代版みたいでいいなとも思ったり。こういうコライトなら僕もむしろ大歓迎なんですけどね。そういうとこも含めて、きわめて2025年的な象徴的な傑作が生まれた気がしましたね。
では、お待ちかねの1位です。2025年はこれです!
1.Getting Killed/Geese

はい。沢田太陽の2025年間ベストアルバム、1位はニューヨークから彗星のごとく台頭したギースの「Getting Killed」が輝きました〜。これに関してはもう、今年は圧勝でしたね。これをいつ1位にすると決めたかは、これのリリース日です。しかも1回目聴き終わったその瞬間に、「今年、これが1位にならないのはありえないだろ」と思い、以降、年間1位に関してだけは考えるの、やめてました。11位のところで触れたロザリアが出たときでさえも、前半部のすごくいいところを聴いてでさえもこれの1位は揺るがないと確信しましたからね。
これ、何がそこまで言わせるのかといえば、作品の風格ですよね。もう、なんというんだろう、それこそ70年代前半のロック黄金期の頃の絶頂のバンドが現在にタイム・トリップして新人バンドとしてデビューしたかのような、そういう作品の風格があるんですよ。品位を下げる無駄な安っぽさが一切漂って来ないんですよ。しかもそれが、トリビュート・バンドみたいにも全く聴こえない現代性をしっかりと伴って。「本物のロックバンドド、出てきちゃったんだから、しっかり評価しないと」という感じで。それを牽引しているのは27位でも触れたフロントマン、キャメロン・ウィンターなんですが、他のメンバー誰とっても華も抜群にある。若き手数王のドラムのマックス・バッシン、ロン毛の精悍な2枚目のドミニク・ディゲス、そして性的にミステリアスなギターのエミリー・グリーン。立ち姿もすごく絵になるんですよ。
さすがにこれだけのカリスマ性のバンドが出てきたら、いろんな人がとびついてきます。本当にリリース当初、欧米のネット・メディアでの彼らに関しての燃え方、すごかったんですよ、普段。ロック・バンドなんて取材しないカルチャー・メディアがばんばん彼らのインタビューを行い、音楽系サイトはほぼ密着連載状態となり、Z世代は「僕らの世代からも誇れるバンドが出てきた」と夢中になり、もうクラシック・ロックしか聴かなくなっていた50〜70代のロックファンたちが「これをずっと待っていたんだ!」とばかりに狂喜する。彼らの口からも9月から頻繁に「もうAOTYな決まりだ」「わかりきっている。他に何があるんだ」という会話が聴こえてきてましたからね。こういう騒ぎって、アメリカのバンドで見ても2001年にストロークスが出てきたとき、本当にあれ以来なかったことですよ。これがさらにもう少しもりあがれば、それこそ1993年にパール・ジャムがタイムの表紙取ったときみたいになってもおかしくないんじゃないかとさえ思います。
思えば、2023年の時点ですでに「ストロークス、南部へ行く」みたいなサウンド・アプローチはすでにやってたんですよ。でも、それはまだ「ストロークス基準で見て、それを小柄にしたようなイメージ」でしかなかったんです。そのハードルを一気にあげたのがキャメロンのソロ・アルバム「Heavy Metal」であり、今作だった。それを可能にしたのはキャメロン自身の深まる声、さらにグルーヴのため方ですね。コクのあるゆったりとした。あれを有る時期からのロックバンドは出せなくなってたんですけど、あれが品位とカリスマを与えてしまっているんですよね。
ギースに関してはすでにニック・ケイヴがキャメロンのことを「あいつはZ世代のボブ・ディランだ」と呼んで絶賛してるのが話題になっていますが、僕としてはできるだけ早くミック・ジャガーとキース・リチャーズの意見が聞きたいですね。ローリング・ストーンズがもうそろそろバンドの終活も見えてきた(その割に元気なんですが)80代での活動にこれが間に合って本当に良かった。「遺産を継承することができた」と安心してもらいたいですよ。
