アナウンサーという「看板」を失って、私は「インタビュアー」になれた。
四国放送で13年間アナウンサーとして900人以上にインタビューしてきた森昭子さん。
退職後、健康補助食品の販売や、ストレスケアカウンセラーとして活動。3年前に再びインタビュアーとして復帰しました。
アナウンサーという「看板」がなくなったからこそ見えてきた、人の話を聴くことの深さと面白さについて伺いました。

森 昭子 Akiko Mori
1967年香川県生まれ 元四国放送アナウンサー、在職中は900人以上の人生をメディアを通じて伝えてきた。脳疲労の専門家としてリラクセーション技術を用いて心身両面からのケアを行う。名前から制作する「音のお守り」も好評。THE INTERVIEW CAMP1期卒業。
アナウンサーという「看板」がなくなったからこそ見えたもの
――アナウンサー時代と退職後で、インタビューへの向き合い方は変わりましたか?
森昭子さん(以下、あきちゃん):
アナウンサーの時は、社会的認知という看板がありました。その看板があれば、誰にでも話を聞くことができましたが、何もなくなると「元アナウンサー」という肩書きはあっても、放送する場所がないわけです。
そんなとき、健康補助食品の販売という、まったく違う世界に足を踏み入れたんです。
もともとは、娘のてんかん発作を止めたい、たくさん食べさせてやりたいと思い、代理店をやれば安く購入できるという発想で始めました。でも、本当は販売に苦手意識があったし、自分にはできないと尻込みしていました。
やってみて気がついたのは、人の話を聞くスキルが活かされるということ。私の聞き方ひとつで、相手がどれだけ心を開いてくれるか、信頼関係が築けるかが変わるのです。
信頼関係があるからこそ、お金を出して商品を買うという行為に至るんですよね。
――販売の現場で対話の大切さを実感されたんですね。
あきちゃん:
そうです。買っていただいたあともフォローが重要で、お客様のお話をよく聞かせてもらいました。対話がとても大事だと実感しましたね。
ただ、うまくいかないこともたくさんありました。伝わらない時、最初は自分のせいだと責めたんです。買ってもらえないと、自分の言い方が悪かったんだと自分を責め、自分の価値を自分で下げて落ち込んだり。
でも、だんだんと気づいてきました。商品の価値と私の価値は同じではないということ、そんな当たり前のことがわかるまで少し時間がかかりました。
ストレスケアで変わった視点
――健康補助食品販売で成果を上げる一方、ご自身は疲弊されたそうですね。
あきちゃん:
年間2,000万円以上の売上を達成して、責任者にもなりました。でも、娘の発作は止まらないし、自分を追い込みすぎて疲弊してしまったんです。
そんな時に出会ったのがストレスケアの学びでした。
――ストレスケアカウンセラーとして学んだことは、インタビューにも影響を与えましたか?
あきちゃん:
人間の心と体について学んだことで、大きく変わりました。前にも増して、目の前の人の人生を大切に扱わせていただこうと思えました。
アナウンサー時代も今も、その人が何を伝えたいのかに耳を傾けることは変わりません。
ただ、ストレスケアという切り口で体と心の関係性や、人の心のひだのようなものを学んできたことで、アナウンサー時代よりも多面的にその人を感じようという意識が強くなりました。その人が何を大切にしているのか、言葉の裏にあるものも感じたいと思っています。
THE INTERVIEW CAMPで学んだこと
THE INTERVIEW CAMP&VILLAGEは、インタビュアー・ライターの宮本恵理子さんが主宰するインタビュー講座です。
――THE INTERVIEW CAMPではどのようなことを学ばれましたか?
あきちゃん:
月1回のZoomで行われるオンライン講座では、宮本さんから『聞く技術』について具体的にレクチャーしてもらい、それを踏まえてペアでインタビューのワークに取り組みました。ワークの前後で課題の確認や相手から得た学びもシェアし合い、いつも実践の場がありました。
――宮本さんから教わった言葉で、特に印象に残っているものはありますか?
あきちゃん:
話しやすい穏やかな雰囲気づくり、というのが印象に残っています。インタビューの前にインタビュイーが気がかりなことは全て消しておくこと、話しやすい雰囲気を作ること。インタビュイーがのびのびと話せる環境はインタビュアーの醸し出す雰囲気が重要ということですね。
もうひとつ、好きな言葉があって、「どんな人もただの人、どんな人もただものではない」。
相手が経営者の方など、社会的な地位の高い方だと、つい萎縮してしまいますよね。そうなると、自分が小さくなって、相手の言葉よりも反応ばかり気にしてしまう。
でも、一皮剥けばみんな同じ人間。そして同時に、有名な方だけでなく、肩書きのない市井の人にも、愛おしい人生のストーリーがある。どの人の体験も面白くて、必ず気づきをもたらしてくれるんです。
インタビューで人が変わる瞬間
――インタビューをしていて、印象的な瞬間はありますか?
あきちゃん:
インタビューしていると、その人の中で何かが変わる瞬間が見えるんです。
最初は「私なんて話すことないです…」と言っていた人が、質問に答えていくうちに、どんどん自分の言葉が出てきて、目がキラキラしてくる。
インタビューが終わった後に「自分ってこんなこと考えてたんだって初めて気づきました」「話しながら整理できました」と言ってもらえる。それがもう、本当に嬉しくて!
――あきちゃんの独自サービス、音本(耳で読む物語)でも、そういう変化を目の当たりにされるんですね。
あきちゃん:
そうなんです。相手にまず自由に文章を書いてもらって、それをさまざまな角度からインタビューして深掘りしていくんですが、最初はA4一枚にも満たない量の文章が、対話を重ねることで約20分のナレーション作品になります。
あるとき、凶暴化した猫と暮らした経験を綴ってくれた女性がいました。これまで向き合ってこなかった想いを掘り起こそうと、真面目に取り組んでくれたので、制作中はとても苦しかったそうです。
でも、だんだん自分の本当の気持ちと向き合い、怖がらずに表現できるようになると、「もっとこうした方がいいんじゃないでしょうか?」と積極的に提案してくれるようになって。テンションが全然変わるんですよね。
インタビューは、打ち出の小槌
――あきちゃんにとって、インタビューとは何ですか?
あきちゃん:
インタビューとは、打ち出の小槌です。
打ち出の小槌って、振らないと宝物が出てこないじゃないですか。使わなければ宝の持ち腐れで、自分から「この人の話聞きたいな」っていう好奇心がまず動くことがとても大切だと思うんです。
振り方によって出てくるものもいろいろ。振るときに、安心や安全を伝えて、その人がのびのび話せる場をつくりたい。
言葉だけじゃない、自分の在り方や立ち居振る舞いで安心してもらえると、打ち出の小槌からいっぱい宝物が出てくるんじゃないかな。
――宝物というのは、お金ではなく?
あきちゃん:
そう、いろんな宝物があるんです。ご縁も広がるし、自己理解も深まる。自分だけでなく相手の人も、新しい発見をしてくれる。
だから、いい投げかけをしたいですね。インタビューさせていただきながら、相手の方が自分自身とも対話が進むような場を作っていけたらと思っています。
質問することで、相手が自分の中にある答えを見つけていく。そのプロセスに立ち会えることが、インタビューの一番の醍醐味だと思います。
まとめ
アナウンサーという「看板」を失った時、あきちゃんは一から信頼関係を築く大切さを知ったそうです。
ストレスケアを学び、人間の心と体を理解することで、前にも増して、「相手の人生を大切に扱いたい」という思いが強くなりました。
そして、THE INTERVIEW CAMPで技術を磨きながら、毎回打ち出の小槌を振っています。
あきちゃんの言葉には、「聴くこと」の本質が詰まっています。
1on1で部下の話を聞く人、コーチングをする人、誰かの話を深く聴きたいと思っている人に届きますように。
インタビューという手法で、相手が自分自身と出会う場を一緒に作っていきましょう。

インタビュアー
湯浅邦枝 Kunie Yuasa
1981年大阪生まれ 広告代理店勤務。21年間、人材関連・採用広報に関わり、企業ホームページや採用サイト、オウンドメディアの制作・運用を手掛ける。年間400記事を制作し、200件インタビューを実施。人の話を深く聞く共感力が強み。THE INTERVIEW CAMP3期卒業。
THE INTERVIEW CAMP&VILLAGEについて
このインタビューは、インタビュアー・ライターの宮本恵理子さんが主宰する講座「THE INTERVIEW CAMP&VILLAGE」のコミュニティ企画で実施されました。
メンバー同士でインタビューし合い、互いに紹介し合うことで、インタビューの奥深さをお伝えしていきます。次回のメンバーインタビューもどうぞお楽しみに!
🔽THE INTERVIEW CAMP&VILLAGEについて詳しくはこちら
今回お話ししてくださった、あきちゃんも参加しているコミュニティ内のサークル活動「音声配信ラボ」。
2026年3月からコミュニティメンバーで週替わりにお届けしている音声配信番組「kikikatsu(キキカツ)」をスタートさせました。この番組では、日常で見つけた“インタビューの発見”を語り合う更新中📻
ぜひ耳でもインタビューの面白さをご体感ください♪
