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春なので「一輪」三題を語る件

日中は汗ばむ日があったり、すっかり春めいてきました。
そんな挨拶も既に遅いかもしれませんね。
4月になったら書こうと思って温めていたネタですが、「モデルのオーディション」だ、「書籍出版」だと浮かれている間に4月も下旬になろうとしています。

春を迎えると毎年、「一輪」という言葉が頭に浮かびます。
私の好きな「一輪」が3種類、オムニバスで紹介させてください。


1.梅一輪

公益社団法人 関西吟詩文化協会

「梅 一輪 一輪ほどの 暖かさ」

江戸時代前期、1700年前後に松尾芭蕉の弟子である服部嵐雪が詠んだ句です。
「梅」が季語と思われ、「暖かさ」と相俟って春らしい句かと思っていました。
読み方も、
「梅、一輪一輪ほどの、暖かさ」
と区切ることで、「梅が一輪ずつ開くにつれて、次第に暖かさが増していくのだなぁ」と解釈することもできます。

ところが、多くの人はこの句を朗読するときに、
「梅一輪、一輪ほどの暖かさ」
という具合に切って読むと思います。
果たしてそれは正しいのか?

実はこの句には詞書ことばがき(和歌や俳句で本文の前に添えられ作品の状況や由来を説明する短い文章)が添えられており、そこには「寒梅」という冬の季語がありました。つまり、作者の意図は冬だったということです。
なので、この句の意味としては、「梅が一輪咲いている。それを見ると一輪ほどのかすかな暖かさが感じられる」という解釈になります。
(参考;俳句の教科書・武蔵高等学校中学校・岡山市電子町内会ほか)

詞書の中の「寒梅」に気付くかどうかで、句の意味も季節も変わってしまうのが面白いですね。

2.一輪の薔薇

松山千春40周年記念 弾き語りライブ 日本武道館 2016.8.8

松山千春さんのステージの上には、いつも赤いバラの一輪挿しが添えられています。
デビュー翌年の1977年から約50年を経た現在まで、欠かすことなくバラの一輪挿しが置かれているのです。

「長い夜」がヒットした頃

松山千春は高校卒業後、後にデビュー曲となる「旅立ち」を引っ提げて「全国フォーク音楽祭・北海道予選」に出場。
コンクール自体は落選してしまいますが、その時の審査員の1人である STVラジオの竹田健二氏との運命的な出会いがありました。

北海道予選には、バイトで買ったギター、サングラス&ニッカボッカで出場!

(竹田)「ギター(の腕前)が、ひどいナ」
(千春は安物のギターをけなされたと勘違いして)「オレはギターの品評会に来たんじゃない。曲がどうだったかを聞かせてくれ!」
そんなやり取りがあって、竹田氏は STVラジオの公開番組内に「千春のひとりうた」というコーナーを設け、毎週新作を歌うように指示。そしてキャニオンレコードに紹介してプロデビューさせます。

その弾き語りコーナーである日、千春が自分の楽曲の2番と3番を逆に歌ってしまいました。その際に竹田氏から
「間違えるくらいなら歌詞を見て歌え」
ときつく叱責され、それ以来、千春のステージには譜面台と歌詞カードが置かれています。

そしていよいよデビューしてファーストステージの折には、
「千春のステージはギター一本だから、華やかさが足りない。一番気高いバラの花を一本置いとくよ」と…

そんな竹田氏が、デビューの翌年に急性心不全で急逝されました(享年36歳!)。
それ以来、千春のステージには竹田さんへの感謝と初心を忘れない自戒を込めて、赤いバラの一輪挿しと歌詞カードが必ず置かれているということです。

千春自身は歌詞カードについて、
「オマエらはな、完成した歌詞しか知らねぇべ。作ってるオレはだな、「ボク」だったか「オレ」だったか、「キミ」だったか「オマエ」だったか、何回も書き直してるうちに最終が分からなくなるんだな。だから、歌詞カードが要るわけだ」。
「最後の曲は、オマエらみんなで唄えるようにあの大スクリーンに歌詞が出るから。ま、オマエらの為にと言いながらオレが一番助かってるわけだけど、なぁ!」
みたいに言っていますが、もちろん照れ隠しにほかならず竹田さんとの約束なのです。

3.クルマに一輪挿し

世界中で永年に亘り愛された名車 Volkswagenフォルクスワーゲン BEETLEビートルには、「フラワーベース」という一輪挿しがオプションパーツで用意されていました。

初期モデルである Type1(1941~2003年)の一時期、またその後の New Beetle(1998~2010年)ではフラワーベースが標準装備であり、最終の The Beetle(2011~2020年)でも The Beetle Blossomという限定仕様車を発売するなど、ビートルにとって一輪挿しは伝統的なアクセサリーであり続けたわけです。

当のオーナーにとっては、「フラワーベース」という名称は知っているものの生花が枯れる度に新しい花を挿すのも面倒だし、造花を挿してみたりボールペンを挿しておいたりというのが現実だったようで…(苦笑)

これは VW BEETLEに限ったアクセサリーではなく、古き良き時代の欧州車で一部のお洒落なドライバーの間での流行りでした。古い欧州車をオマージュしたダイハツ車の一部にも、オプションで用意されたこともあります。

運転に対する余裕を感じるアイテムですが、運転環境がストレスフルな現代こそ、「運転席に花一輪の気持ちのゆとり」を持ちたいものですね。

以上、3題を別々に書けばそれぞれ 800文字程度で済みますものを、ついつい欲張ってオムニバスにするものだからまたもや 2,100文字を超えてしまいました。
この書きクセを治す為に、自戒を込めてデスクトップにバラの一輪挿しでも置きましょうか…

※トップ画像は「俳句の教科書(2025/5/28)」より

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