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【ティータイム】デイドリーム①

朝からの大雨。
けれども、いつもと変わらず、通勤のため、バス停に並ぶ。
バスは定刻を過ぎても、一向に来ない。
5分がすぎ、10分がすぎ、15分がすぎ…。
ようやくバスが来たけれど、既にギッシリ満員。
扉は開かず、スピーカーから、
「満員で、もう乗れませんので、次のバスをご利用ください。」
との運転手の冷たいアナウンス。
そして、バスは乗車拒否をして、行ってしまった。

遠ざかるバスへ恨めしく目線を送りながら、思う。

次のバスって、もう待つ時間、ないやん!

僕は、仕方なく、大雨の中を歩き出し、メトロの駅へと向かう。
地面で弾かれる雨粒がパンツの裾を濡らす。

早足で必死で歩き、メトロの駅に辿り着く。

雨の日のホームは多くの人でごった返していた。


電車が駅に到着し、ぎゅうぎゅう詰めの車両に、半ば強引に乗り込む。
最早、身動きはできない。


そんな状態で、隣の乗客の濡れた傘の先がパンツに付けられたままになる。
パンツがジワーッと濡れていくのがわかる。

顔の前には太った男性の大きな背中。
体臭がきつい。
しかし、逃げ場はない。


満員のメトロは、着く駅、着く駅で、乗降に時間を要し、どんどん遅れが拡大していく。

ようやく、職場の最寄り駅に到着したが、もう、始業時間を過ぎている。


朝から酷いストレスと疲労感に、感情は爆発寸前だ。

僕は、リュックから、徐ろにスケッチブックを取り出し、例の言葉を書いて、あの男に向けた。

入ってー

頭髪が一本もなく、綺麗に禿げ上がり、テカった頭に汗を浮かべながら、スタンバイしていたあの男にスイッチが入る。

おい、通勤バス!
てめえ、待たせるだけ待たせて、乗車拒否って、やってくれたな!
国土交通省に言って、路線バスの許可を取り消してやろうか!
バス、ガス爆発、しやがれ!

それから、無神経に濡れた傘を当ててきたお前!
そうだ、お前だよ!
お前の傘の骨を一本一本、全部、へし折って、使えなくしてやろうか!
え!?
これから、お前が買う傘は、全部、へし折って、傘を一本も持ち歩けなくしてやるからな!
人のパンツに平気で濡れた傘を付けるヤツには、お似合いだよ!
一生、雨に濡れて、過ごしやがれ!

それから、そこのデブ!
服を洗濯してんのか?
風呂は入ってんのか?
他人よりデケェんだから、電車代、十倍払いやがれ!
それが嫌なら、今すぐ、コンパクトサイズになりやがれ!
あ〜、おめえはニオイのもとになってんだから、消臭力に突っ込んでやろうか!?
この豚野郎!


あの男のキレ芸を遠目に見ながら、僕はゲラゲラと腹を抱えて笑い、最早、溜め込んでいたストレスを忘れ去っていた。
スッキリした気持ちで、僕は、あの男に歩み寄り、酸素マスクを口元に当てながら、ぜいぜい言って腰掛けているあの男に礼を述べた。


ありがとう、ことぅげ。


小峠は、心なしか、十歳ほど老けたような顔で、片手を上げて応えた。


僕は、最後のキメの一言がないことを思い出し、再び、スケッチブックを小峠に向けた。

小峠は、苦笑いしながら、立ち上がり、声を張って渾身の一言を発した。


なんて日だ!


僕は、小峠に笑顔で会釈して、足取りも軽やかに、職場へと向かった。


あ、ちなみに、小峠さんが登場するまでの件は、僕の実体験です。
たまったものじゃないですよね、ホント。

皆さんにも、お一人に一人、小峠さんがいらっしゃったら、随分ストレスフリーになるかもしれませんね。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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