見出し画像

映画モータルコンバットで神話級の5番勝負を目撃せよ

モータルコンバット ネクストラウンド』。
圧倒的な映像体験だった。映像すべてが「本物」である。一言で表すなら、これは神話の絵巻物だ。
私の中では既に2020年代ベスト映画候補にノミネートしている。

 自分は映画を見る時、脚本構成や撮影技法(あとポリコレ要素)などをメタ読みする悪癖があり、なかなか作品世界に没入できないという悩みがある。逆に、そんなことを忘れて夢中にさせてくれる作品は傑作だと思っている。

 今回の「モータルコンバット ネクストラウンド」はまさにその一作である。「トップガンマーヴェリック」でも似たような経験が出来たが、徹頭徹尾のめり込むような体験を出来たのは実写映画では初だと思う。

【あらすじ】
恐怖の魔王に国を滅ぼされた亡国の王女(キタナ)。彼女は復讐のため、魔王の膝下で牙を研いでいた……。
一方その頃、落ちぶれたB級俳優(ジョニー・ケイジ)は、自身のカンフーを見込まれて、神々に召喚された。人間界の存亡を懸けた決闘の舞台に。

その名は M O R T A L K O M B A T・・・

MORTAL KOMBAT!!!!!

 近年のゲーム映画化ブームは、以前のそれとは毛色が違う。今までは宣伝を目的にしたものが多かった。しかし現在は出典として小説やコミック原作と同じ枠組みに入りつつあり、ゲームを全く知らない人の心を揺れ動かすかという点が重視されている。
「サイバーパンク エッジランナーズ」や「シークレットレベル」がその典型的な成功例だ。
前作実写版モータルコンバットも、コロナや低予算の煽りを受けつつも、モータルコンバットの住民たちが抱く感情や葛藤を映画として描き切り、大ヒットを果たした。

 今作は一応続きモノだが、ぶっちゃけ本作から見てもなんら問題はない。完全な新キャラ二人が主軸となっており、前作キャラのくだりは脇役としてサラッと流されるからだ。
 ターミネーターやバーフバリだって「2」だけ見てる人は多いのではないか。それは作品単品として屈強な地盤を築いている証拠だ。本作もそういう作品である。

 さて、紹介が遅れたが、モータルコンバットは北米などで絶大な人気を誇る格闘ゲームだ。おそらくストリートファイターを除けば世界一人気かもしれない。

 日本では(恥ずべきことに)ほとんど商品展開が為されていないのだが、「フェイタリティ」という残虐なトドメ技は一部で知名度が高い。
 このフェイタリティはかなりグロテスクで、見れば日本展開が無い理由もおおよそ察していただけると思う。一方でその絵面はどこかおバカさが滲み出ており、シュールな笑いを誘ってしまう。

 そんな訳で、モーコン本来の奥深いキャラや世界観を差し置いて、日本ではフェイタリティだけを消費して知った気になっている人間が大多数なのだ。正直俺もその一人である。

 前作の実写版も、味方サイドが一方的に悪者をフェイタリティしまくるご機嫌な映画だったので、今回もおバカ映画のつもりで構えていた。

 しかしどうだ。開幕から全てシリアスなトーンで物語が展開していく。セリフこそ少ないが、人物の所作や表情ですべて伝わってくる。
 わずか10分のシーンで俺は頭を殴られた気分になった。

 同じ格闘ゲームで例えるなら、本作はサムライスピリッツめいた緊迫感と冷たさが終始流れていた。例のフェイタリティも、サムスピの絶命奥義に近いトーンで描かれる。

 人間界の存亡を懸けた狂気の5本勝負。その全てが予測不能で、「死」が近付くたび、笑いめいた痙攣が腹を襲った。

 一方、原作ゲームのイースターエッグや小ネタっぽいところも随所にあり、そういうところで緊張を解してくれるバランス感も絶妙だ。

世界一緊迫感のある「死者蘇生」の設定

 死人が蘇る設定の作品は、古今東西ありふれている。「亡くなった大切な人を生き返らせる」というプロットは確かにロマンチックだが、一方でバトルモノでは「どうせ生き返るんだろ」というダレがどうしても付き纏ってくる。

 して、このモータルコンバットも死者が蘇る世界だ。どれだけ四肢を割かれて挽肉にされようが、復活のチャンスが平等に与えられている。
 言い換えれば、どれだけ苦労して悪者を殺そうと、舞い戻ってくる可能性があるということだ。
それだけでない。この蘇生術は悪者側が握っているので、一度死ねば文字通り生殺与奪を握られることとなる。実際、蘇生ついでに闇落ちしてる奴も何人か出てくるので、死と蘇生がどれだけ重いか思い知らされることとなる。
 あとみんなゲーム脳で忘れているが、フェイタリティは滅茶苦茶痛いので、死んではいけないのだ。

 この映画では蘇生のチャンスを示すことで、逆説的に誰もが平等に死を突きつけられているという演出に成功している。負ければもちろん、目を覆いたくなるようなFATALITYが待っている。

真田のスコーピオンに痺れる

「GET OVER HERE!」と言ったら拍手の合図だ。心の中でね。

 私が真田広之のファンになったのは、前作のスコーピオン役を見てからだ。スコーピオンはモーコンを代表するニンジャキャラで、カレーパンマンくらいのポジションに値する。その人気たるや主人公のリュウ・カンを超えるもので、本国ではリュウ・ハヤブサとならぶ代表的ニンジャとして有名だ。

 当時私も真田広之のことをスコーピオンのオッサン程度の認識しか持っていなかった。その後出演作を見る内に、真田のサムライめいた所作にどんどん惹かれていった。

 そして本作。そこにいたのは真田広之であり、スコーピオンであり、ハサシ・ハンゾウ(同キャラの本名)であった。
 真の役者はその役と渾然一体となり、俳優としての存在を忘れさせるほど世界に溶け込んでなくてはならない。そして本作は、スコーピオンに限らず、すべてのキャラが物語の戦士として登場している。

映画館に急げ、今すぐにだ

 本作は終始ブチ上がりっぱなしの映画だった。エンディングのご機嫌なテクノはIMAX音響でズンバム轟き、テンションMAXの俺はこっそり小声で歌詞を口ずさんでいた(歌詞がキャラ名コールだけなので簡単なのだ)。

 残念ながら本作は、近い内に他の人気作に押し出されるだろう。この映像体験は劇場でするべきだ。見てない人は急いで映画館に駆けつけよう。

 あと、今作のワーナー担当者は相当なマニアで気合が入っているようだが、「真田広之 出演!」とか「『国宝』の美術スタッフ参加!」とか大々的に謳うべきだった。
 こういう宣伝は搦め手でプライドが許さないかもしれないが、そのぐらいしないと国内層は振り向かないし、実際重要なファクターとして参戦しているので誇大広告でもなんでもない。

 アクション映画が好きな人間なら確実にFLOWLESS VICTORYする映画なので、本当に行ってほしい。マジで。







以下もうちょっと内容が知りたい人向け(中盤のネタバレ)

 ネタバレと言うか俺が語りたいだけなんだけどね。











 モーコンの「主役」といえば間違いなくスコーピオンとサブゼロだけど、「主人公」じゃないんだよね。
 原作だと主人公は一応リュウ・カンってことになってるけど、ぶっちゃけ影が薄い。しかも原作ゲームは一度シュジンコウというキャラが主人公した時があるのでややこしい。
 さらに映画前作の主人公はコールというオリキャラだし。

 アンパンマンで例えるなら、カレーパンマンとしょくぱんマン人気が異様に高いけどアンパンマン候補が定まってない状況なわけだ。
(ジョニーとキタナはおむすびマンとロールパンナといったところか)

 んで本作ネクストラウンド。正統アンパンマン候補だったリュウとコールがどっちも脱落する。しかもコールは走馬灯とか辞世の句とかなく顔をベシャリと潰される。

 あと、浅野忠信が首を切られてミラーボールみたいになるのも本作くらいのものだろう
 ゴジラで小栗旬が白目を剥くシーンといい、ワーナーUSは日本のお茶の間俳優で遊ぶのが好きなのだろうか。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集