がんばってきたこと、忘れちゃいそうなときのために
卒業、入学、就職など、新しい門出の季節になりましたね! きっと今、大きな環境の変化を迎えている方も多いのではないでしょうか。
あたたかな空気を感じる街中や人の流れを見て、新年度に向けたそわそわやワクワクの気配を感じられるような気がします。 でも、少し前までの私は「そんな前向きな気持ち、今の自分にはないな」と思っていました。
私ごとですが、もうすぐ、社会人1年目が終わります。 仕事と家の往復。平日は家にいない時間のほうが長い日もあります。 自分の弱さや、できないことの多さ、悔しさ、情けなさに、何度もぶつかってきました。
ミスをしたり、伝えたいことがうまく伝わらなかったり、指摘を受けるたびに 「またやらかした」 「なんで私はこんなに情けないんだ!」 と、毎週のように自分に失望していました。
「社会人1年目って大変だよ」とは聞いていたけれど、実際に自分がその中に飛び込んでみたら、想像よりずっと静かで重たいしんどさに押しつぶされそうになることの連続でした。
いや、「押しつぶされそうになることの連続」……なんて言っていますが、実際に私は、一度ちゃんと潰れました。でも、それがきっかけでやっと、“今の自分のままじゃいけない”じゃなくて、“今の自分を守らないといけない”って思えたのです。
忘れていた目標と、ふいに思い出した手紙の存在
最近、話し方トレーニングを受け始めました。お客様との打ち合わせなどで、自分が場を回し自分の言葉でちゃんと伝えることの難しさを感じていて、「どうにかしたい!!」と思ってはじめてみたのがきっかけでした。
質問に対して瞬発的に答えるフリートークの練習で、先生に「今年の目標は?」と聞かれて、私はさっそく言葉に詰まりました。
“……そもそも、目標なんて立ててたっけ?”
目の前のことでいっぱいいっぱいで、自分の望みや想いすら、どこかに置き忘れていたんだと思います。
その質問がきっかけで、1年前のことを思い出しました。
ちょうど3月中旬、内定をもらって、新居を決めて、東京を少し観光していた頃。「自由丁」というお店で、1年後の自分に手紙を書いたのです。

東京・蔵前にある、未来の自分に手紙を送れるカフェです。来店時の自分の気分や状況に合わせた飲み物付きのレターセットが選べて、「そのときの自分」にちゃんと寄り添ってくれるような素敵なお店でした。

そろそろ、この1年前に書いた手紙が届く頃だったのです。
でも、内容はほとんど覚えていませんでした。正直「大したこと書いてないだろうな」と、どこか期待していない自分もいました。 当時の私はきっとキラキラしていて、「目標に向かって励んでる?」「やりたいこと、できている?」と確認するような手紙なんだろうな…。 でも、今の私はできていないことばかり。読んだら自己嫌悪してしまいそうな気がして、封を開けることに身構えてしまっている私がいました。
1年前の言葉が、今の私を思い出させてくれた
けれど、せっかくなので仕事が始まる月曜日の前、日曜の夜に開けてみました。そこにいたのは、想像以上に眩しい自分でした。

当時の私は、「ここで働いたら、1番なりたい自分に近づけるだろうな」と思っていた今勤めている会社への就職が決まり、うきうきしていて、1年後の自分にもワクワクしていて、未来に大きな期待を抱いていました。 手紙には、やりたいことや、そのときの心境がまっすぐに書かれていました。
しかしその直後に、少し先の未来や心配ごとを想像して書いたのか、こんな一言がありました。
「逆境に打ち勝つのが私だから、大丈夫だと思ってる。」
期待していなかったからこそ、思わず泣いてしまいました。忘れていた何かを、急に思い出させられたような気がして、心が静かに揺れたのです。
私は、自分の長所をすっかり忘れていました。 「逆境に強い」それは、就活のときにポートフォリオに書いていた私の強み。
でも、社会人になってからの私は、それを一度も思い出していませんでしたが、この手紙を読んで思い出すことができました。あの頃、ボロボロになって這いつくばったあとの、希望に満ち溢れているときの自分が、ちゃんと伝えてくれましたからこそ、説得力があったのです。
「あなたはここまで、やってこれたよ」って教えてくれたようでした。
ありがたいことに、うつ病(寛解中)を抱えながらも正社員として働かせてもらっています。体調や気分の波は働き始めてからもあって、先月には上司に病気のことを伝えられました。実は、何度かうつの波に飲まれて会社を休まざるを得ないくらい、しんどくなったこともあります。
でも、そのときやっと、「今の自分を守らなきゃ」と思えて、上司に病気のことを話すことができました。
今も体調や気分に波はありますが、少しずつ自己理解を深めて、コントロールできるようになってきています。
1年前と比べて明らかに、できることは増えています。
しんどいばかりの日々だったけれど、あの時に比べたらこれは逆境のような向かい風じゃない。むしろ、「追い風」の環境で私は働いていて、そのスピードについていくのが苦しかっただけなんだと気づきました。
そして、あのときの手紙に書かれていた「大丈夫だよ」の一言が、今の私に深く刺さりました。
忘れていた“私の力”を、これからも信じていくために
社会人になると、学生時代の価値観やこだわり、思い込みが少しずつリセットされていきます。 でも「逆境に強い」という言葉を読んだ瞬間、たくさんの記憶が一気によみがえってきました。
・コロナ禍で留学が難しくなったからこそ、将来を見直すきっかけになり、その結果デザインに出会えたこと。
・志望大学に行けなかったからこそ、地方の経済学部という環境でデザイナーとしてのキャリアを築こうと思えたこと。
・釧路という情報の少ない地方にいたことで、自分から手を挙げることでまちづくりや地域デザインを実践的に学べたこと。
・当時の恋人に振られたことで未来が見えなくなったからこそ、自分のやりたいことを優先し札幌に移住&デザイン修行という道を選べたこと(笑)。
・休学を経て、世間とのズレや焦りを感じながらも、1年以上自分の進路を見つめ直す時間を得られたこと。
・フリーランスとして働いていた時期に、将来への不安を抱えながらも、自分の適性に気づいてディレクターを目指せたこと。
・うつ病を経験したからこそ、“世の中の理不尽”に敏感になり、「生きやすい社会にしたい」という想いを持てるようになったこと。
そうだった。私は、「マイナスをプラスに変える力」をちゃんと持っていたんだ。それすら忘れていたけど、忘れていただけだった。
1年前の私が、「それを忘れないでね」って教えてくれました。
だから、私はまた手紙を書きに行きました。 来年の私に、「大丈夫だよ」「ワクワクを忘れないで」と伝えるために。

「今」を生きるって、すごく立派なことなんだけど、同時にとても不器用なことでもあると思うのです。
目の前のことに必死になればなるほど、もともと大切にしていた気持ちや、自分らしさみたいなものが、ふっと手のひらからこぼれてしまったりする。
私は、過去の自分をたくさん置き去りにしてきました。「しっかりしなきゃ」と思うあまり、自分を無理やり引っ張って、いろんなものを忘れてきました。
だからこそ、未来の自分に届けるための言葉を、そっと残しておきたくなったのです。
潰れないように。潰れてしまっても、また起き上がれるように。
そういう「自分を守るためのひとこと」が、未来のどこかで、そっと手を差し伸べてくれるかもしれません。
もし、今「もう無理かも」って感じることがあったら、ぜんぶ抱えようとしなくてもいいし、大きなことを書こうとしなくていい。
スマホのメモに一言でも、日記に点みたいな言葉でも、それはちゃんと“今”のあなたが残したものです。
それは、未来のあなたにとって、思いがけず支えになるかもしれないし、もう一度、自分を好きになれる小さなきっかけになるかもしれません。
どうか、そんな言葉を少しでも良いから残してあげてくださいね。
