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【人生の栞】21歳の脱出 —— 夢の貯金を切り崩して掴んだ「はじめての一歩」

こんにちは、てるてるです。

「はじめての一歩」と聞いて思い出すのは、晴れやかな門出ではなく、予定よりずっと早く、背中を押されるようにして始まった一人暮らしのことです。

母子家庭で育ち、経済的な厳しさを幼い心に刻みながらも、私は「教員になりたい」という夢を大切に抱き続けてきました。不登校という長いトンネルを抜けた先に待っていたのは、都会の大学へ進む友人たちの眩しい声と、私の前で静かに閉じられた進学の扉。それでも諦めきれず、3年間アルバイトをかけ持ちして貯めた大切な通帳。


その重みだけが、私の未来を繋ぎ止める唯一の「栞」でした。

けれど21歳の春、その通帳を手に、私は想像もしなかった場所へと一歩を踏み出すことになります。


手からこぼれ落ちた、明日への約束

「教員になりたい」という夢を捨てきれず、奨学金を借りて普通科高校へ進みました。

意を決して、母に相談した進学の道。

「大学には出せない」という一言は、半分覚悟していたとはいえ、都会のキャンパスを夢見る友人たちの輪から、私を遠ざけるには十分な冷たさでした。


出会って3日目、知らない人が家に上がり込んだ

高校卒業後、私はただ夢だけを見つめて、アルバイトをかけ持ちしました。


すべては、大学進学費用を貯めるため。


そんな21歳のある日、母から紹介された一人の男性。


「母の新しい人生を祝福したい」


そう思っていた私の予想を裏切り、事態は猛スピードで動き出します。

出会って3日目、彼は当たり前のようにわが家に泊まり、そのまま「同居」が始まりました。


沈黙の食卓と、届かない声

知らない男性が家の中にいる。


その違和感以上に私を追い詰めたのは、彼から放たれた「アルバイトをしているなら家にお金を入れるべきだ」という言葉でした。

私が3年間、どれほどの思いでそのお金を貯めてきたか。


朝から晩まで働き、夢を繋ぎ止めるために積み上げた1円1円の重みを、この人は何も知らない。

悔しさをこらえ、震える心で母の顔を見つめました。


「お母さん、私は……」

けれど、一人の女性としての時間に光を見出した母には、私たちの切実な声はもう聞こえていないようでした。

その瞬間、私の中で何かが静かに、けれど決定的に音を立てて崩れました。

私の居場所は、もうここにはない。


母の選んだ「光」の中に、私たちの影が入り込む隙間はどこにも残されていなかったのです。

私はその夜、自分の部屋で大切な通帳を握りしめました。


これを切り崩せば、大学は遠のく。

教員への道は、また霞んでしまう。

けれど、今ここで自分を守らなければ、私は私でいられなくなる。


窓の外の暗闇を見つめながら、私は初めて、自分一人の足で歩き出す覚悟を決めたのです。


夢の貯金で行き先を変える


「行こう」


私は3年間、教員になるために必死で貯めてきた通帳を手にしました。


大学進学のための大切な資金。


けれど、今の私に必要なのは、未来の教壇よりも、ただ静かに息をつける、私だけの居場所でした。

物件探しから引越しまで、わずか1週間。

パートナーを紹介されてから2週間後、私は身一つで家を飛び出しました。


減った残高と、消えなかった情熱

一人暮らしを始めた私の貯金は、見る影もなく減ってしまいました。


けれど、後悔はありません。


あの息苦しい静寂の中に閉じ込められたままだったら、きっと夢を見る気力さえ失っていたはずだから。


教員になる夢は、まだ終わっていません。


また今日から、新しい部屋で、新しいアルバイトに励む日々。


これが私の、ヒリヒリとした痛みを伴うけれど、最高に自由な「はじめての一歩」の記録です。


がらんとした部屋で、自分との約束

引っ越したばかりの、まだ何も馴染んでいない、がらんとしたアパートの部屋。


窓から差し込む光は、実家の居間にあったものと同じはずなのに、どこか新しくて、少しだけ心細い匂いがしました。


大学進学のために積み上げてきた貯金は、生きるための「自由」と引き換えに、大きくカタチを変えてしまいました。


通帳の残高を見るたび、夢が少し遠のいたような気がして、胸の奥がチリリと痛みます。


けれど、誰にも邪魔されずに眠れる夜と、自分の心を守り抜いたという確かな感覚。


それは、どんなにお金を積んでも買えない、私にとって初めての「自分の人生」でした。


夢への道のりは、また少し遠回りになったけれど。


この静かな部屋で、私はもう一度、自分との約束を書き直そうと思います。


空になった段ボール箱の隅っこに、小さな希望を詰め込んで。



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