売る海外投資家・買い向かう個人投資家!
財務省の週次対外対内投資動向によると、海外投資家は、先週、日本の株式・国債を11兆円売り越した。その結果、日本の金融市場は、債券安・株安・円安のトリプル安に見舞われることとなった。海外投資家の日本売りの背景を探り、今後の金融市場動向を占った。
1.海外勢投げ売りの背景
海外投資家は、日本株式を3週連続、総額9兆円近く売り越している。特に先週は、統計開始以来最高の4.4兆円を売り越した。イラン戦争が湾岸産油国にまで波及し、エネルギーインフラ施設がイランに攻撃されるに及んで、中東勢中心に海外投資家がリスク回避の日本売りを加速させた可能性が高い。高市政権発足以降、日本株高を支えてきた海外投資家が、一転リパトリに動いたことが日経平均の大幅安に繋がった格好である。今週に入り、トランプ大統領が戦争の早期終結の可能性を示唆したことで、日経平均は、一時54,000円台まで急反発となっているが、海外投資家の日本売りが一服することになるのか、注視する必要がある。
2.内容の乏しいトランプ演説を受け、トリプル安再燃
トランプ大統領による国民向け演説では、終戦に向けての具体的な説明がなかったことで、日本市場は、失望売り殺到の展開となり、日経平均は、再度53,000円を割り込むこととなった。ホルムズ海峡封鎖解除を諦めたトランプ大統領は、日本が安全確保に努めればよいなどど、責任転嫁する発言も行っている。その結果、WTI原油価格は110ドルを超え、鎮静化の兆しは見えない。
3.海外投資家が流れを決める日経平均
海外投資家が日経平均の買い越しを開始した昨年12月半ば以降、図表1のとおり、日経平均は上昇傾向を強め、5万円から6万円目前まで値を上げた。しかし、先月イラン戦争が勃発すると海外投資家は売り越しに転じ、直近3週間で、それ以前の11週連続買い越した金額以上を売却した結果、日経平均は、一時5万円付近まで急落することとなった。しかし、逆に考えれば、これ以上海外投資家の日本株売りは出ないとも言える。現に、今週に入ると、トランプ大統領による終戦が近いとの発言で、日経平均は、底打ちを感じさせる値動きとなっている。現在、イラン戦争集結の行方は見通せないが、米国が地上戦で勝利する見込みはなく、早晩、撤退に追い込まれることは間違いない。その結果、中東情勢の緊張が緩和に向かうタイミングで、海外投資家が買い戻しに転じることが日本株本格上昇のサインと見ることもできよう。

4.鍵となるのは、日本人投資家の日本株回帰?
先月の日経平均急落時に、個人投資家は、過去最高の1.5兆円を買い越した。更に個人投資家が日本株の公募投信も7千億円以上買い越している。投資信託でこのような巨額の買い越しは過去例がなく、出遅れた個人投資家が絶好の買い場と判断した可能性が高い。今後日本人投資家の日本株回帰が本格化すれば、日本株の持続的・安定的上昇が期待でき、その動向が注目される。
5.バークシャーハザウェイ買い出動か
米投資・保険会社バークシャーハザウェイが、昨年11月以来の円建て社債の発行準備に入ったと報道されている。先月には、東京海上ホールディングスへの出資を発表するなど、日本企業への投資を強める方向性には変化は見られない。先月の日経平均急落により、割高感の薄れた現在が日本株への追加投資の好機と判断している可能性がある。
6.有事の円売り
先月、海外投資家は、イラン情勢悪化を受け、日本株を8兆円超、日本国債を5兆円超売り越している。総額13兆円を超える日本売りを行えば、ドル円相場が160円を超えるのは自然であり、財務省の言う投機の円売りというより、実需の円売りである。これにエネルギー価格高騰に貿易需給の逼迫が加わると、ドル円相場が160円台に定着することも不思議ではない。
7.バークシャーハザウェイが円建て社債を発行する理由とは
バークシャーハザウェイが円建て社債を発行して、日本株に投資する背景には、円金利が低いことに加え、為替リスクを取らずに日本株を購入する意向が働いている。即ち、日本株には強気でも、日本円には弱気であることの裏返しとも言える。
8.中期的には、円安と株高は相関関係にある
イラン戦争勃発以降、海外勢力のリパトリに伴う日本資産売りに円安と株安が同時進行したが、図表2のとおり、中期的には、円安と株高の相関性は高い関係にある。円安は、企業収益とGDPを押し上げるため、株高に繋がることが理由として挙げられる。
原油高騰が米国の利下げ織り込みを消滅させ、日米金利差が縮小しにくくなっていることで、円安・株高の本来のトレンドに回帰するのか、注視していきたい。

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2026年4月3日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久

