植物なんて興味なかった。それなのに、気づけばテラスがジャングル化していた話。
第1章|多肉植物という“入口”
もともと、植物には一ミリも興味がなかった。
花の名前も知らない。
観葉植物を見ても、「緑だなぁ」くらいの感想しか出てこない。
そんな人間だった。
転機は、友人からもらった多肉植物の盛り合わせ。
小さな鉢に、ぷにっとした謎の植物たちが並んでいた。
「なんか…思ったより可愛いな」
そこが始まりだった。
もちろん最初は、育て方なんて分からない。
水をやりすぎて弱るもの。
逆に放置されても妙に元気なもの。
どんどん伸びるやつもいれば、静かに枯れていくやつもいた。
植物なのに、性格がある。
そんな当たり前のことに、少し驚いた。
第2章|ナチュラル寄りの家と、2畳のテラス
妻は昔から、家の中に小さな木を置くのが好きだった。
ナチュラル系というのだろうか。
木目の家具。
白い壁。
間接照明。
たまにいる観葉植物。
そういう方向の家である。
戸建てに引っ越したとき、小さなテラスが付いていた。
広さは2畳くらい。
「ここ、ちょっと植物置けそうじゃない?」
そんな軽いノリから、家庭菜園っぽいことが始まった。
第3章|トマト、敗北
家庭菜園といえば。
まず思い浮かぶのは、トマトとかきゅうりとか、その辺である。
なんとなく“夏休み感”がある。
なので当然、挑戦した。
結果。
全然うまくいかなかった。
ミニトマトが数個。
以上。
きゅうりに至っては、「これは何かの棒ですか?」みたいな姿で終了。
あとから知った。
そもそも、そんなに日当たりが良くない。
うちのテラス、日光が当たるのは1日数時間程度。
植物界では、かなり厳しい環境だったらしい。
「太陽って大事なんだな…」
小学生みたいな感想を抱いた。
第4章|空芯菜、覚醒
2年目。
YouTubeをぼんやり見ていたとき、空芯菜の動画が流れてきた。
空芯菜。
中華料理屋でよく出てくる、あのニンニクで炒めるとうまいやつだ。
スーパーで値段を見た。
「高っ。」
それが全ての始まりだった。
「これ、自分で育てた方が早いのでは?」
そう思い立ち、挑戦。
結果。
めちゃくちゃ育った。
引くほど育った。
切っても伸びる。
また切っても伸びる。
夏から秋にかけて、かなり食卓に登場した。
空芯菜炒め。
空芯菜の味噌汁。
たまに「また?」と言われるくらいには食べた。
でも、うまい。
そして何より、“自分で育てた”という謎のバフがかかる。
第5章|ズボラ人間、葉っぱに救われる
そこから学んだ。
初心者は、葉っぱを育てろ。
実ものは難しい。
気温。
日照。
受粉。
病気。
色々と気を遣う。
その点、葉っぱ系は強い。
しかも、多年育てられるものも多い。
ズボラにはありがたい。
もともと、マメな性格ではない。
毎日きっちり世話をするタイプでもない。
だから、大葉とかニラみたいな「勝手に生えてくる勢」と相性が良かった。
もう彼らは、半分うちの住人である。
たぶん一生、テラスに生え続ける。
第6章|気づけば、ちょっとした農園
今では色々育てている。
ピーマン。
枝豆。
水菜。
春キャベツ。
さらには、桑の木やオリーブの木までいる。
どうしてこうなった。
今年はモロヘイヤにも挑戦中。
完全に、植物への興味が“1ミリ”を超えてしまった。
そして最近、家族から少し苦情が出始めている。
「プール出せないんだけど」
そう。
子供用プールを置くスペースが、植物に侵食されている。
テラスの主導権が、完全に緑へ移った。
第7章|いつか、小さな畑を
昔は、土いじりを趣味にする大人の気持ちが分からなかった。
でも最近、少しだけ分かる。
植物は、急がない。
水をやっても、翌日に変化はない。
でも、気づくと伸びている。
人生に似ている。
成果がすぐ出るものばかり追いかけていると、だんだん疲れてくる。
だからなのかもしれない。
葉っぱが増えたとか。
新芽が出たとか。
そんな小さい変化が、妙に嬉しい。
いつか、小さな畑を持ちたいと思っている。
広大な農園じゃなくていい。
ちょっとしたスペースでいい。
季節ごとに何か植えて、
収穫して、
たまに失敗して。
そんな暮らしが、案外ぜいたくなのかもしれない。
