620と占い師〜サイレントが教えてくれたこと〜
相方はサイレント中、なぜか「620」という数字をよく目にしていたという。
それは相方の誕生日だ。
彼は言った。
「なんか…死ぬのかなって思ったんだよ」
私はすぐに答えた。
「違うよ、それは“生まれ直し”のサイン。自分と向き合う時が来たってことだよ」
それからまもなく、人生で初めて同じ誕生日の人と出会ったらしい。
仕事でたまたま訪れた家の住人が、偶然その人だったという。
しかも、その人は占い師だった。
「あなた、ものすごい人に出会うわよ」
そう言われ、彼は思いがけず占ってもらったという。
それが後に出会うパワハラ社長のことだったのかは分からない。
でも、その話を聞いたとき、私はなんとなくひっかかりを覚えた。
その占い師は、のちに仮想通貨詐欺に巻き込まれて、大金を失い、人生が崩壊したと噂で聞いたという。
相方は、占い師から投資話に誘われたことがあったらしい。
だが、当時は断っていた。
「誘いを断っといて良かったよ」
そう語る姿には、どこか安堵というより
“自分は正しかった”
という誇りが滲んでいた。
サイレントを経て、相方はたしかに変化していた。
お金に執着しなくなり、物欲も消え、服も買わなくなった。
事業者時代に買った服を今も着続けている。
けれど──
“いい人”を演じる癖だけは、まったく変わっていなかった。
誰かに認められたい。
必要とされたい。
特別だと言われたい。
それが彼の奥にずっとある“承認欲求”だった。
サイレントがくれたのは、
「静けさ」と「距離」だけではない。
“外側ではなく、内側を見なさい”という問いかけだった。
「620」は、終わりのサインではなかった。
始まりのサインだったのに──
それに気づけるかどうかは、その人次第だったのかもしれない。
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