テニス上達メモ602. 人生は不思議――ズベレフ、伊達公子、そして全仏のシンデレラ
「あの判定さえなければ」「あの日、試合が続いていれば」――。
勝負には歴史を変えたかもしれない瞬間があります。
それでもズベレフや伊達公子は、タラレバに逃げませんでした。
人生の「不思議」について考えます。
▶ズベレフの自己肯定感
アレクサンダー・ズベレフが、フレンチオープン悲願の優勝――。
四大大会初制覇。
個人的に思い出されるのは、2年前の同じ舞台です。
ズベレフの自己肯定感の高さに、速報を打ったのでした。
▶勝負を左右した「世紀の誤審」
改めて、ザッと振り返ります。
2024年フレンチオープン男子シングルス決勝戦、死闘の末に敗れたにも関わらず、こう言ったのだとか。
「審判だってミスをする。彼らも人間だからね」。
最終セットで迎えた第4ゲーム、カルロス・アルカラスのフォールトをアンパイアがコレクション(訂正)します。
インとなり、試合の行方を左右する重要な局面のアレクサンダー・スベレフによるブレークバックはなくなりました。
ところがその後テレビ中継で流れたビデオ映像では、わずかにアウト。
つまり実際はアルカラスのフォールトであったにも関わらず、試合はそのまま続行されました。
記者会見後、スベレフはサラリと上記の言葉を口にしたというのです。
うっかり、「被害者意識」がうずきそうです。
「言い訳」したくは、ならないでしょうか。
彼にとっては初のグランドスラムタイトル戴冠となったかもしれません。
ズベレフの自己肯定感の高さが窺い知れたエピソードだと思います。
▶「神の手」に匹敵するタラレバ
これがなぜ、自己肯定感の高さに通じるのかは記事を読んでいただきたいのですけれども、なかなかサラリと言えるものではありません。
どうしても、「被害者意識」がうずきそうです。
勝負にタラレバはないと言いますが、あの判定が現実どおりに処理されていれば、テニスの歴史は変わっていたに違いありません。
個人的には1986年サッカーワールドカップ、ディエゴ・マラドーナによるゴールが「ハンド」であったとするならば、その「神の手」に匹敵する世紀の大誤審であったと位置づけたいです。
▶もうひとつの「もしも」――1996年、伊達公子 vs グラフ
そしてもうひとつは1996年ウィンブルドン準決勝。
「第1セットを高速ロケットスタートでグラフに取られ」とは振り返るものの、スロースターターの伊達公子はギアを上げ、女王ステフィ・グラフに猛追をかけます。
セットカウントはワンオール。
もう少しで逆転を手繰り寄せかけるところでした。
▶女王のしたたかな「作戦」
当時のウィンブルドンには、今のような開閉式の屋根も照明設備もなく、暗くなれば試合は日没サスペンデッド。
伊達さんは、ボールが見えていたので「え?」と不思議に思ったそうです。
しかしこれが、女王のしたたかな「作戦」。
悪い流れを断ち切りたいグラフが、延期をスーパーバイザーに持ちかけたのでした。
▶つねに「流れ」ている
翌日に持ち越された再開ではグラフが息を吹き返し、惜しくも伊達は負けたのです。
勝負にタラレバはないとしても、「流れ」はあるのです。
もしそのままの流れに乗り続けていれば、テニスの歴史は変わっていたに違いありません(関連記事「流れるようにプレーする(生きる)」)。
▶それでも「勝てた」とは言わない
しかしやはり伊達さんも、サスペンデッドになっていなかったとしても試合の結末は「未知数」と――。
「そのまま続けていたら勝てていた」などとは、言わないのです。
グランドスラム決勝の舞台は「やっぱり遠いんだと思わされた」と顧みます。
▶予選から駆け上がったシンデレラ
そして、今回の全仏女子シングルス準優勝者――世界114位マヤ・フワリンスカは予選から3週間かけて、頂まで上ってきました。
全仏オープン史上初となる、予選勝者からの女子シングルス決勝進出という快挙を達成。
彼女は言います。
「人生は不思議なもので、ひたすら自分のやることを信じて邁進すればいつか必ずうまくいくと信じるしかない」
うつ病や右ヒザの手術を乗り越えて紡いだシンデレラストーリーだったといいます。
ウェアの契約もまだなかったという24歳です。
▶人生は、何が起こるか分からない
ちょっとした「あや」なのかもしれません。
主観的に感じる良い・悪いの評価は別にして、人生って本当に「不思議」だと思います。
何が起こるか分からない。
そんな中で私たちができることといえば「人事を尽くして天命を待つ」ということになるでしょう。
▶だから努力の方向が大切になる
そしてその「不思議」は、誰にだって起こるのだと思います。
なぜなら誰もが、「人事を尽くしている」ものだからです。
ただし、ここで「きれいごと」を言うつもりはありません。
実際には、努力の方向性が大事です(書籍『ベースメソッド』P.180-181)。
北へ行きたいのに南へ向かっていたら、地球一周かかって、たどり着けないかもしれません。
そういう人は、たくさんいます。
努力していない人なんて、ホントは誰もいません(関連記事「努力してない人なんていない」)。
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テニスゼロ代表 吉田無型(よしだ・むけい)
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