サロン楽屋話093:きれいじゃない感情を受け入れて、人はレジェンドになる
きれいな感情だけで生きられたら、どんなに楽でしょう。でも現実には、誰かの失敗に救われたり、人の成功を素直に喜べなかったりする瞬間があります。そのたび、自分を責めてしまう――。感情をありのまま受け入れると、人は前に進める。それを教えてくれる「レジェンド」の物語。
▶ダブルスパートナーのミスに、ホッとする瞬間
ダブルスの試合――。
自分のパートナーがミスして「安心する」心理って、ないですか?
昨夜のNHK『新・プロジェクトX 挑戦者たち』では、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックを直前に控え、スキージャンプ日本代表を特集。
葛西紀明と原田雅彦が、当時の胸の内を率直に語っていました。
▶「自分じゃなくてよかった」という本音
1994年リレハンメル冬季オリンピック――。
スキージャンプ団体戦、優勝のかかったジャンプで原田が失速したときのことを、葛西が振り返ります。
「自分じゃなくてよかった」。
「ドンマイ」などと言いながら、ダブルスパートナーのミスに胸をなで下ろす――あの瞬間と、よく似た感情だったのだと思います。
▶「落ちろー」と叫びたくなることもある
次の1998年長野冬季オリンピックでは、大会直前の練習中にサッカーで左足首を負傷し、葛西は団体メンバーから落選します。
そのとき、日本が「メダルを取れないほうがいい」とさえ思ったと、打ち明けました。
原田が飛ぶとき、「落ちろー」と叫んだ葛西。
しかし原田は、団体2本目で137メートルの大ジャンプを記録。
日本はその流れを手放さず、見事金メダルを獲得しました。
葛西は会場のジャンプ台から宿舎まで、大泣きして帰ったといいます。
それくらい「悔しい思い」をしたのだと。
▶「ひどい感情」は、人として未熟なのか?
VTR明け、「正直すぎる葛西さんの告白がありました」と、MCの有馬嘉男氏が評しました。
もちろん味方の失敗を願うなど、褒められた言動ではありません 。
仲間の敗北を祈るなんて、ひどいやつだと思うでしょうか?
人として未熟なのでしょうか?
後述するとんねるず・木梨憲武のエピソードと、ぴったり 符合します。
▶過去のひどかった感情を、今語る勇気
しかし今、こうして告白できるようになった経緯には、いろんな要因があったのだろうとは思いますけれども、ひとつには、自己肯定感が高まったからではないでしょうか。
過去のひどい感情を語っても、今の自分は、今の自分。
自己肯定感が低いと、他者を「下げる」ことで自分を「上げる」操作をしがちです。
そして自己肯定感が低いうちは、「負けろ」と思ってしまうことは、人として、むしろ「自然」なのだと思います。
ここで「勝ってほしい」などと自分を偽っていたら、葛西のその後の長きに渡る活躍は、なかったのかもしれません。
▶レジェンドになった理由
悔しみをバネに、葛西は現役を続行。
押し殺さなかった悔しみが、葛西にとって、長年現役であり続ける原動力となった。
そして、「レジェンド」となりました。
選手を続けながら小林陵侑をスカウトし、後進の指導にもあたる葛西。
教えている相手は、いずれ自分を超えるかもしれないライバルです。
それでも「心は穏やかだった」と葛西。
そして2022年北京冬季オリンピック。
小林が個人ノーマルヒルで金メダルを獲ったとき、葛西の目には、かつて悔しさで大泣きしたころとは違う「喜びの涙」が溢れました。
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