テニス上達メモ531:「一つ一つ」で遠く高く──ノーベル賞・坂口志文先生のやり方
「一つ一つ」。ノーベル生理学・医学賞を受賞した坂口志文先生の座右の銘だといいます。シンプルだけど、それが遠く高くへ続く道。テニスも同じ。「2つも3つも」は、人の脳には不可能。ゆっくりのようで、いちばん速い。
▶「一つ一つ」が、遠く高くへ続く道
ノーベル生理学・医学賞を受賞した免疫学者で大阪大学特任教授の坂口志文(しもん)先生の座右の銘は、四字熟語のような信念はないけれど、自分に言い聞かせるとすれば「一つ一つ」なのだそうです。
シンプルで当たり前だけど、その「一つ一つ」が、とんでもなく遠く高くへたどり着く道なのだと、思い知る。
言い換えれば「一時にひとつ」。
人の認識システムがそうなっているのだから、仕方がありません(関連記事「目で聞けない。耳で見えない」)。
「2つも3つも」「一度にたくさん」は、刹那に切り分けると成り立たないのです。
▶「2つも3つも」は、人の脳には不可能
テニスでいえば、テークバックを意識しながらボールを見る、ボールを見ながらコースを狙う、コースを狙いながら相手のポジションを確認するという「2つも3つも」は、人の認識システムとして、成り立たないのです。
なのに、かくも多くのアドバイスが、コーチや顧問より伝えられます。
改めて引いてみます。
「ラケットを立てて引きなさい」
「ラケットダウンしてボールの下から振り出しなさい」
「フォワードスイングは、グリップエンドを先行させなさい」
「左足をボールに向けて踏み出しなさい」
「後ろ側の足から前側の足へと、体重移動しなさい」
「打点は踏み込んだ足よりも、ボール2個分前にしなさい」
「インパクトでは、ボールを2個分押すイメージを持ちなさい」
「打ったあとのフォロースルーは、首に巻きつけなさい」
あるいは「打ったボールを追いかけるように振り抜きなさい」
挙げればキリがありませんけれども、ほかにもフォームに関するさまざまなアドバイスが、コーチからプレーヤーへと、伝えられます。
そして指導者は、こう言うのです。
「では、それらを意識しながら、打ってみましょう!」……できるはずが、ありません(残念!)
▶「目隠し」しながら打つのは、難しいから……
テニスを上手くプレーする上で本質は何かというと、やっぱり「ボールを見る」なのです。
先述した、「シンプルで当たり前」です。
だけど「見方」が大事です
そしてそれが、とんでもなく遠く高くへたどり着く道なのです。
それが証拠に相手コート側から飛んでくるボールを、「目隠し」しながらクリーンヒットできるプレーヤーはほとんどいないでしょう。
仮に目隠しして打てるプレーヤーがいたとしても、目隠しせずに打つほうが、発揮されるパフォーマンスは高いですよね(関連記事「『ボールに集中』はテニス上達のための本質」)。
とはいえ「一時にひとつ」なのだから、テイクバックを意識しながら、ボールは見えない(関連記事「ボールが『スッスと消える』」)。
それは、目隠ししながら打とうとするようなものなのです。
▶同時になんて、できなくて当然
いつも同じたとえばかりで恐縮です。
今、この文章をある程度集中して読んでいるとき、鳴っていたとしても、空調の音は、聞こえなかったはずですよね。
私に指摘されと、聞こえてきました。
しかし一方、その空調の音に聴き入ると、今度はこの文章を、今までのようにスラスラとは読み進められなくなる相関です。
同時には、不可能。
ボールをよく見なければ、テニスの唯一のミスの原因である「打球タイミング」は、絶対に合いません(関連記事「テニスでミスする原因は、『たったひとつ』しかなかった!」。
たけど同時にはできないのだから、テイクバックについて考えると、その瞬間、ボールが見えなくなるのです。
▶「ボールに集中」してもミスする理由by村上春樹
あるいはボールをよく見ていても打球タイミングが合わない(=ミスする)というのであれば、上手くいく前提条件である現実に対するイメージが、ズレているのです。
イメージのズレに関して、村上春樹流にたとえると、待ち合わせの時刻と場所は合っているのに、日付が違うようなもの。
スケジュール帳に、デートの日付を1日間違えて記している。
それでは、どうしても「合わない」のです(関連書籍『女のいない男たち』)。
「順序が大事」なのでしたね。
パスタソースをかけてから、麺を茹でたら、出来上がりはベチャベチャになって台無しです。
どんなにボールに集中したとしても、イメージがズレていたら、やっぱりテニスは台無しになるのです(関連記事「パスタソースをかけてから茹で始めると……」)。
▶「一つ一つ」は、最速の近道
改めまして「一つ一つ」。
まず、現実に対するイメージのズレをなくし、次にボールに集中すれば、テニスは何の問題もなく上手くいきます。
考えてみれば、「一つ一つ」が最も簡単です。
同時に「2つも3つも」やろうとするから、難しくなる(残念!)。
ゆっくりのように思えて、結局「いちばん速い」のです(関連記事「『ゆっくり速く』の威力」)。
今からでも遅くありません。
というよりも、今日という日から始めるのがいちばん早い(関連記事「追伸2・今日がいちばん若い日」)。
「一つ一つ」、言い換えれば「一時にひとつ」が、いちばん簡単で、いちばん確実な方法だと思います。
そして繰り返しになりますが、それがいちばん速いのです。
最後にもう一度さらっておくと、テークバックを意識しながら、ボールを見て、コースを狙いつつ、相手のポジションを確認するというのは、難しすぎる以前に、そもそも人の認識システムとして成り立たないのです。
つまりそれらを意識させる常識的なテニス指導は、上達する方法論として、成り立たないのです。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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テニスゼロ代表
吉田無型(よしだ・むけい)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero