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その名は書王

気づけばそこに名を連ねていた。
あるプラットフォームから知った講座。
その名は書王。

それはライティングスクール界の王の意を示す。
この重く威厳のある名のとおり、内容もまた高いレベルを誇っている。

まずは脱落しないよう、爪の先でギリギリつかまり、逆風をものともせず、しがみつく要がある。

第1回の講座。
無風の船出だった。
これで本の著者へと順調に進む、そう胸に希望を抱き、次の回を迎えた。

わからない。
おかしい。
何を言っているのか、わからない。

日本語の講座だが、半分以上外国語が混ざっていてるかのように何を言っているのかわからない。
まるで英語が不得手な学生が夢見心地で留学しに来たかのような。
留学経験はないのに、そんな想像が頭の中を占めた。
おそるべし、まよまよ先生。

淡々としていて、長年にわたって培われたであろう膨大な智慧を、沈着冷静なインテリジェンスを纏って披露されているが、それでいて愛の香りが漂う語り口で放たれる濃厚、濃密なライティング講座。

これくらいの長さの文章での説明が必要なくらい中身が濃厚ということと言える。

言っていることがわからなさ過ぎて、絶望という黒雲が頭上を覆ってきたが、この瞬間なすすべはない。
わかったとして、およそ2割。

どういうことだ。
でも負けたくない。
そう、自分自身に負けたくない。

この時ほど、リテラシーという外国語が頭の中を渦巻いたことはない。
リテラシー。
足りない、私に基本的なライティングリテラシーが。

そうだ、京都行こう、そんなキャッチコピーが、なぜが頭に浮かぶほど混乱していた。
一体、どこへ行こうとしていたのか、今となっては霧の中。
現実からの逃避だったのかもしれない。

甘い、そう、見通しが甘かった。
言ってしまえばそれまでだ。
SNS対策。
ムリ。
それどころではない。

肝心の本の内容が思い浮かばない。
講座が進むにつれて、当初の構想だけではムリだと気付かされる。
ゼロをイチにする必要がある。
まともに考えると、気が遠くなる。

だが、やるしかない。
無理には、無の字が目につく。
無脳の無。
この言葉が連想された。
だからあえて、ここではムリと書く。

講座の内容でわかるのがせいぜい2割程度。
そうか、2割。
2割なら、パレートの法則で行こう!
根拠なんか、科学なんかどうでもいい。

違う、それは違う、誰かに言われても聞くつもりは毛頭ない。
気持ち、そう気持ちが一番大事。
2割わかれば何とかなる。
それで行こう。

とにかく走り抜ければいい。
それが先決だ。

一点突破あるのみ。

ただただ、前へ進んで、誰かを引きずってでも前へ進む。
ラグビー選手みたく。

進め、進め、進め!
そう、年齢など、能力など関係ない。
とにもかくにも突き進め。

それを後押しするように、初心者にもわかりやすい補講や外部講師の講座も始まった。
ありがたい。
あとは自分の力を上げるだけ。

書王という覇者に挑むべく、まずは闘志が芽生えた。
自分の脳にドーパミンが溢れてくるのがわかった。
ドバドバ、という音を立てて。

その日から、本文の構想が明け方に降りてくるようになった。

明け方に目覚める。
何かが頭の中に溜まっているのを感じる。
これはひらめきか?

そう思い、おもむろにスマホを手に取り、メモ機能に向かって音声入力してみる。
不思議とスラスラ言葉が出てきて、少し驚く。
こんなに喋れる?

側から見た絵柄はともかく、想像するに、恐山のイタコのように喋っていた。と思う。
しかも、涅槃の体勢で。
関係ないけど、ここまで書いてタイの有名な巨大涅槃像を思い出した。

平均で2000字越え。
多いと3000字くらい喋っているときがあった。
人間切羽詰まると、こうなるのか。

ある意味、能力開花。
そう思った。
何度か続くと、明け方のこのイベントが少し快感になってきた。
だが、その代償として、とてつもなく昼眠い。

しかし、やるしかない。
本を出す。
もはや出版という、かしこまった言葉でなく、本を出す!
その一念に突き動かされていた。

何年ぶりだろうか。いや、何十年ぶりか……
大学受験の直前くらいの緊張感とコントロールできない高揚感。
そんな感覚だった。

まだやれる、まだまだやれる。
立て、立て、立て、立つんだ。
伝説のボクシング漫画の一場面のように、倒れては立ち上がった。
負けたくない一心で。

自分の内側に眠っていた闘志が目を覚ました気がした。
スキル、テクニックを超えた闘志。
自分の中にまだこれほどのエネルギーがあったとは。
時を超え再びの覚醒。

この体験は己の使命を思い出させるほど、強く、熱い魂の存在を自分の中に感じた。
ある。確かに熱い魂が自分の内側にある。

明け方の口述筆記、日中覚醒時の編集。
これを何度も何度も繰り返した。
相棒に向かって夢中で言葉を吹き込んだ。

誰に聞いたわけでもなく、奇しくも覇者書王に追い詰められ覚醒させられた能力。

勝つ、勝つ、勝つ。
書く、書く、書く。
喋る、喋る、喋る。
覚醒に次ぐ、覚醒。

いいのか、こんなに諸々色々覚醒して。
いや、いいことにしよう。
書ける、喋れる、イタコになれる。
素晴らしいじゃないか。
イタコだ、あの天啓を受けるイタコ。

思いもしなかった、魂の扉が開く書王。
おそるべし、書王、そして、それを操るまよまよ先生。

これほどまでとは。
いや、感謝すべきか。
うん、そうだ、感謝しよう。

そして、明け方のイタコが残したもの。
結果的に、1か月以内に3冊出せるだけの原稿。
とっ散らかったメモを必死にまとめた。

卒業式でマイクを持って宣言したとおりの結果を手にできた。 
そして、曲がりなりにも海外にもその種を蒔けた。
卒業式で、まよまよ先生に直に宣言したとおり翻訳版を出版した。

無料部門とはいえ、自己啓発カテゴリで英語版2位、スペイン語版10位。
あの絶望のゼロイチへの瞬発力を考えると十分な結果だ。

還暦過ぎても、まだまだいける。
自分では思っていたものの、それを講座生に実証させる追い込みを見せた書王。

書王、お前は覇者だ。
間違いなく、ライティング講座界の覇者。
それは、私だけじゃなく、何人ものKindle作家を輩出させた力は伊達じゃない。

日本を変えろ、そして世界を変えろ、書王。
お前ならできる。
頼んだぞ。

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