日本製鉄(5401)高配当分析|三重苦でも下限配当を設定した還元力
「鉄は国家なり」と言われた日本製鉄。USスチール買収・米国関税・最終赤字という三重苦を抱えながら、2030年に向けて下限配当24円(分割後)を新設しました。高配当株として見たとき、この会社は何が強いのか。データで確認します。
日本製鉄が高配当株になった背景

日本製鉄は2025年10月に1株→5株の株式分割を実施しました。分割後の株価は572円前後、予想配当24円、利回りは約4.2%です。
粗鋼生産量は世界4位クラスの鉄鋼大手で、製鉄が売上の約9割を占めます。残りの1割は日鉄エンジニアリング(プラント)・日鉄ケミカル&マテリアル(半導体材料)・日鉄ソリューションズ(IT)の3セグメントです。
高配当株として注目が集まった背景には、2023年3月期の配当が分割後換算で36円まで上昇したことがあります。配当性向30%を目安としつつ、業績の回復局面で増配を実施してきた実績があります。
三重苦の実態を整理する

2026年3月期の日本製鉄には、3つの逆風が同時に重なりました。
1つ目はUSスチール関連の一時損失です。 2025年6月に買収は完了しましたが、当初見込んでいた事業利益800億円の貢献がゼロに下方修正されました。コークス炉の爆発事故や米国鉄鋼市況の低迷が響き、約2,303億円の一時損失を計上しました。
2つ目は米国関税(25%)の影響です。 日本製鉄の直接輸出より、取引先の自動車メーカーが輸出減少する間接影響の方が大きく、事業利益で数百億円規模のマイナスを織り込んでいます。
3つ目は最終赤字です。 これらが重なり、2026年3月期の最終損益は約700億円の赤字見通しです。ただし一時損失を除いた実力ベースの事業利益は約6,800億円と、事業の稼ぐ力は維持されています。
減配でも下限配当を設定した理由

配当の推移を整理します。株式分割(2025年10月・1株→5株)後の換算値で確認すると、2022年3月期が32円、2023年3月期が36円、2024・2025年3月期が32円、2026年3月期予想が24円です。
2026年3月期は減配です。率直に言えば、「赤字だから配当を下げた」という側面があります。
ただし注目すべきは、2030年中長期計画で下限配当24円(分割後)を明示したことです。「今後この水準は守る」という意志表示であり、投資家への予見性を高める設計です。
有利子負債はUSスチール買収で2.5兆円から5兆円に増加しましたが、政府系金融機関(JBIC)を含む9,000億円の融資が確保されており、資金調達は安定しています。USスチールへの投資が2028年以降に収益化する段階で、配当の回復余地が生まれます。
私がポートフォリオで判断した3つのポイント

日本製鉄をポートフォリオで検討したとき、判断材料になったのは3点です。
① 実力ベース利益は黒字が続いている:赤字の主因は一時損失です。一時損失を除いた実力ベースの事業利益は約6,800億円あります。事業の現金創出力が損なわれているわけではありません。
② 下限配当24円の設定で予見性が上がった:2030年中期計画の中で下限を明示したことは、会社が配当に対してコミットしているシグナルです。配当性向だけでは読みにくかった将来の配当が、ある程度見通せるようになりました。
③ USスチールの収益化が長期の上乗せ余地になる:現時点では損失の発生源ですが、2028年以降の高炉改修・設備投資が完了すれば、北米での収益貢献が期待できます。今の株価はリスクを全部織り込んだ後の水準と見ることもできます。
同じく「赤字でも株主還元を守った大型株」の視点では、Honda(7267)の分析もあわせて参考にしてください。関税ショック全般の影響については、高配当株と関税ショックをテーマにした記事に行動記録をまとめています。
利回り4.2%の日本製鉄を長期保有の選択肢として検討している方は、まず証券口座で現在の株価と配当予想を確認してみてください。2026年5月13日の本決算発表後に、確定値と次期配当予想が更新される見込みです。
※ 本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の購入を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身でお願いします。

