夢の高級おもちゃ モノフォニックシンセ KORG MS-20
息子よ。
昭和の時代にはな、「シンセ少年」という生き物が確かに存在した。
今で言うDTM少年とは少し違う。
パソコンもソフト音源も無い時代だ。音楽を作ると言えば、楽器を弾くしかない。
ところが、その常識をひっくり返す機械が現れた。
シンセサイザーだ。
鍵盤を押すと、ピアノでもオルガンでもない、
聞いたことのない電子の音が鳴る。
当時の少年たちは、その音に雷を落とされたような衝撃を受けた。
そして、その象徴のような機械が、1978年に登場した
KORG MS-20 だった。
初めて見たMS-20
楽器屋のショーケースの中に、そいつは置かれていた。
黒いパネル。
無数のツマミ。
そして右側には、穴がずらりと並んでいる。
まるでSF映画に出てくる機械だ。
「これは楽器なのか?」
そんな疑問がまず浮かぶ。
普通のシンセはな、鍵盤を押せば音が出る。
だがMS-20は違う。
音を出す前に、まず 音を作る。
ツマミを回す。
ケーブルを差す。
音が変わる。
低くなったり、震えたり、突然ノイズになったりする。
つまりこれは、楽器というより
音の実験装置なんだ。
昭和のシンセ少年はな、これに夢中になった。
俺は青年だったがな^^
音を探す夜
息子よ。
MS-20には、今の機材のような便利な機能は何も無い。
メモリーもない。
プリセットもない。
せっかく作った音も、電源を切れば消える。
だから少年は、つまみを回し続ける。
低音を作ってみる。
宇宙船みたいな音を作ってみる。
効果音みたいなノイズも出る。
そして気が付く。
「シンセは、演奏する楽器じゃない」
音を発明する機械なんだと。
夜中まで、ツマミをいじる。
ケーブルを差し替える。
同じ設定のつもりでも、音が微妙に違う。
アナログ回路だからな。
部品の個体差や温度で音が変わる。
つまり、完全に同じ音は二度と出ない。
その偶然がまた面白い。
昭和のシンセ少年はな、
まるで研究者みたいに音を探し続けた。
机の上の研究室
やがてシンセにハマった連中の机の上は、だんだんおかしくなっていく。
MS-20の隣に
シーケンサーが置かれる。
さらに
拡張モジュールが増える。
ケーブルが蜘蛛の巣のように張り巡らされる。
もはや楽器ではない。
完全に研究室だ。
だがな、その研究室から生まれた音は、
当時のロックやポップスとはまったく違っていた。
未来の音だった。
今でも生きている音
息子よ。
あれから何十年も経った。
今はパソコン一台で、どんな音でも作れる。
シンセのソフトも山ほどある。
それでもな、
MS-20の音は今でも使われている。
なぜだと思う?
理由は簡単だ。
アナログのシンセは、
完全にコントロールできない。
少し暴れる。
少し歪む。
少し予想外の音になる。
だが、その不完全さが
音に生命を与える。
昭和のシンセ少年たちは、
それを知らずに追いかけていた。
ただ夢中でツマミを回し、
ケーブルを差し替え、
音を探し続けた。
その机の上の小さな機械――
KORG MS-20。
あれはな、単なる電子楽器じゃない。
昭和の少年たちにとっては、
未来そのものだったんだ。
それで、つづきだ。
俺はな、社会人だったから、MS-50という増設ユニットも購入したんだ。

MS-20+MS-50の最強タッグ。
ハンセン+ブロディみたいなもんだ。
特にな、このMS-50を持っている奴はかなり少なかったみたいだ。
残念ながら30年前にどっちも処分してしまった。
その時はオークションなんか無いから、楽器買取屋さんに売ったんだ。
それがまあ、びっくり価格で売れたんだ
びっくりって?
さあぁ、どーっちだ?
すげー高額で売れたんだ。
それを一番喜んだのが…
これらを場所だけ占有の邪魔な鉄くずだと思っていた
そう、お前のカーチャンだ。^^
