雨男#せりふ三題噺#傘グミ地平線
俺は、筋金入りの「雨男」だ。
子どものころから、自分にとって何か大事なことがある時はいつも雨だった。
運動会の時も朝は晴れていても、自分が走る番が回ってくる頃には空模様が怪しくなり雨が降ってくることが多々あった。
同級生たちには気の毒だが、小中高の修学旅行では必ず一日以上は雨が降った。
何か大事なことがある日は、降水確率0%でも傘を持たなければならなかった。
そんな俺でも彼女は出来た。
彼女は、こんな雨男でも理解し、結婚もしてくれた。
だが・・・・。
新婚旅行で行ったオーストラリアで最悪なことが起こった。
着いた日も次の日も雨模様だったが、まさかの観光名所エアーズロックに行ったときにも雨だったのだ。
彼女は、一生に一度でいいから地平線に沈みゆく夕日に照らされ赤く輝くエアーズロックを見たいと言っていた。
それなのに、砂漠の真ん中にあるエアーズロックで、俺たちは土砂降りのスコールに遭ってしまった。
その後のホテルでも帰りの飛行機の中でも、彼女は一言も口をきいてくれなかった。
俺たちは、そのまま成田離婚となってしまった。
離婚後、俺は何もする気になれなくなった。
何かしようとすれば雨なのだ。俺は、ただただ会社と家との往復だけの日々を過ごした。
そんなある日、俺は街中で怪しげな老婆に声をかけられた。
「ちょっと、お兄さん、なんか天気のことで悩んでないかい?」
「えっ、何でわかるの?」
「あたしゃあ、占い師をやってるんだ、何でもわかよ。ひとつお兄さんを占ってやろう」
俺は「怪しい・・・」と思いながらも、老婆の後について路地の奥にあった建物の中に入った。
やはり、占い方も怪しいものだった。老婆は「水晶玉」と言っていたが、どう見てもプラスチック製だった。
老婆は、意味不明な呪文を唱えた。
「はっ!見えたぞ!」
「えっ?何が・・・」
俺がプラスチック製の水晶玉を覗くと、当然ながら何も見えず、反対側の老婆の目と目が合っただけだった。
「何も見えないけど・・・」
「お兄さんには見えぬ、あたしにだけ見えるのだ・・・」
「で、何が見えたんですか?」
「グミじゃ・・・」
「グミ?」
「そうじゃ、ただしお菓子のグミではない、グミの木だ」
「?」
「グミの木の実を食べれば、お兄さんの悩みである”雨男”から解放されるだろう・・・」
俺は、藁にも縋るおもいで老婆を信じてみようと思った。
それは、俺が「雨男」とは言っていないのに、老婆がそれを口にしたからだった。
そして、俺は庭にグミの木を植え木の実を食べた。
なんと、老婆の言う通りだった。
だが・・・。
それから数年後、街中であの老婆と出くわした。
「どうだね、お兄さん、あたしの言った通りだったろう?」
「まあ、確かに、晴れ男にはなれるようだが・・・」
「で、感想は?」
「毎回、グミの木の実を百個も食べると、俺のお腹が”土砂降り”になって困るんだよ・・・」
おわり
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はらとけいさんの企画「せりふ三題噺」参加作です。
どうぞよろしくお願いします。
