ペンネ転生#せりふ三題噺#草原返却ペンネ
私が仕事の後に買い物をしてから部屋に帰ると彼は寝ねいた。
テーブルには返却された漫画の原稿があった。
表紙には草原に建つお城が描いてあり、タイトルは輪廻転生をもじった「ペンネ転生」だった。
今回の作品に彼は自信を持っていたみたいだけど、やっぱりダメだったみたい。そのことは、仕事中のLINEで知った。
私は、彼を起こさないようにとなるべく静かに着替えをした。
「おかえり・・・、仕事お疲れ様・・・」
「ゴメン、起こしちゃった・・・」
「いや、大丈夫だ。十分寝たから・・・」
「そう、それじぁシャワー浴びたら、私は夕食の支度するから。今日は本格イタリアンよ、上手くできるかわからないけど・・・」
「うん、ありがとう・・・」
やっぱり、声に元気がないわね・・・。
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本格イタリアンなんて私には縁遠いものだった。せいぜい、スパゲッティを作った程度かな。
それが本格イタリアンを作りたいと思ったのは「ペンネ転生」がきっかけ。
イタリアンのシェフを目指していた主人公が事故で亡くなり、その後に中世ヨーロッパ風の世界に転生するという物語なの。
転生した主人公はペンネのような体に顔と手足が付いた姿になったという設定、結構面白いと私は思ったわ。
そして、ひょんなことから騎士団の専属料理人になり、騎士団や国王に降りかかる問題を料理や現代の知識を使って解決してゆくという、笑いや友情、冒険の物語になるはずだった・・・。
彼は、この漫画のためにいくつかのイタリア料理を詳しく調べたの。
レシピはもちろん、その料理の由来まで調べたのよ。
皿に盛られた料理のデッサンを何枚も描いたわ。
それを見ているうちに、作って食べてみたいと思うようになったの。
料理だけじゃないわ、中世ヨーロッパの歴史や風物にも詳しくなったよ。
彼の夢に付き合うのも楽しいことがあるの・・・。
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シャワーから出てきた彼はテレビを見ながら缶ビールを飲み始めた。ときおり、深いため息をつきながら。
私は背中でそれを気にしながら料理をした。
「はい、おまたせ」
「えっ!?カプレーゼにサルティンボッカ、それにティラミス」
彼の前に料理を並べたら彼の顔が一気に明るくなった。
「カプレーゼとサルティンボッカは私が作ったけれで、ティラミスは買ってきたものよ」
「それでもすごいよ。漫画に描いたけど、まさか本物を食べれるなんて思わなかった」
「でも、味の方は保証できないわよ・・・」
「ううん、匂いだけで美味しいとわかるよ」
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ビールで酔ったせいもあるけど、彼は私の料理で元気が出たみたい・・・。
夕食の後片付けが済んだころ、いきなり彼が後ろから抱き付いてきたのよ。
「ちょっと待って、シャワーを浴びて・か・ら・よ、うふっ♡♡」
「うん♡」
デレっとした彼の顔がカワイイ・・・・。
私は彼に小さくキスをしてシャワー室に入った。
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ところが・・・。
私が髪を乾かし終え部屋に戻ると、彼は机に向かっていた。
何か良いストーリーでも思い浮かんだのかな・・・。
時々あるのよねえ、夜中に突然起き出して漫画を描き始めたり。
私は、丸くなっている彼の背中に声をかけた。
「コーヒーでも買ってこようか?」
「うん、頼むよ」
「サイズは?」
「ショート……….いや、グランデサイズで」
どうやら、今日も徹夜みたい。
私は彼のペンを走らせる音を聞きながら寝なきゃならないのね。
でも、それは私にとって最高の子守歌なの♡
おわり
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はらとけいさんの企画「せりふ三題噺」の参加作です。
セリフ
「ショート………いや、グランデサイズで」
お題
草原・返却・ペンネ
