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米国株は「永久保有」でいいのか。長期投資で一番難しいのは、何もしないこと


米国株に投資するべきか。
今からS&P500を買っていいのか。
高値圏では待った方がいいのか。
AIバブルが崩壊したらどうするのか。
為替リスクはどう考えればいいのか。

投資を始めようとすると、いくらでも不安材料は出てくる。

政治の分断。
政府債務の拡大。
地政学リスク。
AIバブル。
株価の割高さ。
円安・円高。
暴落への恐怖。

しかし、今回の話で一番印象に残ったのは、かなりシンプルな考え方だった。

長期投資家にとって、最も危険なのは市場から降りること。

これは当たり前に聞こえるが、実際にやるのはかなり難しい。

米国例外主義は、まだ生きているのか

米国株が長期的に強かった理由として、よく「アメリカ例外主義」が語られる。

アメリカには自由がある。
異論を言える文化がある。
権威に対して疑問を投げられる。
古い企業を新しい企業が破壊することを、社会がある程度受け入れる。

これは、日本やアジアの組織文化とはかなり違う。

日本では、組織の調和や安定が重視されやすい。
大企業が雇用を守ることにも価値が置かれる。
教授や上司に対して、その場で正面から反論することは少ない。

一方、アメリカでは「そのやり方は違うのではないか」と言える空気がある。
そして、既存企業を壊すようなスタートアップが出てきても、それを経済のダイナミズムとして評価する。

この「破壊を許容する文化」が、米国株の強さの根底にある

もちろん、今のアメリカには問題も多い。

政治的分断。
格差。
財政赤字。
政府債務。
地政学リスク。
サイバー攻撃リスク。

それでも、アメリカは過去にも多くの危機を乗り越えてきた。
第二次世界大戦、冷戦、核戦争リスク、インフレ、金融危機、ITバブル崩壊。

そのたびに米国市場は長期的には復活してきた。

だから、短期的な混乱だけを見て、米国株の長期的な強さを否定するのは早い。

S&P500の長期リターンは、少し低くなるかもしれない

ただし、強気一辺倒ではない。
米国株の長期リターンは、過去のような高水準がそのまま続くとは限らない。

歴史的に、米国株の実質リターンは年6〜7%程度とされてきた。
しかし、現在はPERがやや高い。

そのため、今後10年から20年の米国株の実質リターンは、年5〜6%程度になる可能性があるという見方が示されていた。

ここで重要なのは、「低くなるかもしれない」と言っても、それでも十分に良いリターンだということだ。

債券の実質リターンが2%未満程度だとすれば、株式は依然として魅力的である。

つまり、米国株は過去ほど安くない。
しかし、長期投資の対象としては、まだ十分に合理的である。

暴落は避けるものではなく、受け入れるもの

長期投資で避けられないのが、暴落である。

どれだけ優れた市場でも、ベアマーケットは必ず来る。
株価は下がる。
ニュースは不安を煽る。
SNSでは悲観論が増える。
「今回は違う」と言われる。

そのとき、多くの人は市場から逃げたくなる。

しかし、問題は「売ること」そのものではない。
本当に難しいのは、再び市場に戻ることだ。

暴落初期に売る。
さらに下がって安心する。
でも、反発が始まっても怖くて買えない。
気づいたら、自分が売った価格より高くなっている。
結局、長期リターンを大きく落とす。

これがマーケットタイミングの怖さである。

長期投資家がやるべきことは、暴落を完全に避けることではない。
暴落が来る前提で、持ち続けられる設計にしておくことだ。

余裕資金で投資する。
生活防衛資金を残す。
分散する。
積立を続ける。
暴落時に買い増せる現金を持つ。

これが現実的な対応になる。

「何かしたい」という欲望がリターンを壊す

インデックス投資の難しさは、退屈なことだ。

S&P500や全米株式を買う。
毎月積み立てる。
あとは放っておく。

理屈としては簡単だ。

しかし、人間は退屈に耐えられない。

もっと良い銘柄を選びたくなる。
高値だから一度売りたくなる。
下がりそうだから逃げたくなる。
暴落を当てたくなる。
ニュースを見て動きたくなる。

投資家は「自分は平均よりうまくできる」と思いやすい。

しかし、データはたいてい逆を示す。
多くの人にとって、売買を増やすほどリターンは下がる。

長期投資で難しいのは、知識ではない。
行動を抑えることだ。

AIは初期段階。ただし、利益になるかは別問題

AIについては、かなり重要な整理があった。

AIの採用は、まだ初期段階にある。
特に非テック企業がAIを使ってコスト削減や生産性向上を実現する余地は大きい。

情報収集。
問題解決。
定型業務の処理。
事務作業の高速化。
意思決定支援。

AIは、産業革命以来の大きな生産性向上技術になる可能性がある。

ただし、ここで勘違いしてはいけない。

技術が社会に役立つことと、投資家が高い利益を得ることは同じではない。

インターネットは世界を変えた。
しかし、ITバブルで高値を掴んだ投資家は大きな損失を出した。

技術が普及すると、価格比較が容易になり、企業の利益率が下がることもある。
便利な技術が広がった結果、競争が激しくなり、超過利益が削られることもある。

AIも同じである。

AIは生産性を上げる。
しかし、その利益がすべて株主に行くとは限らない。
労働者の賃金に回るかもしれない。
顧客への価格低下に回るかもしれない。
競争激化で利益率が下がるかもしれない。

だから、AIはすごい。
しかし、AI関連株を何でも買えば儲かるわけではない。

この区別はかなり大事だ。

AIバブルを見る指標はPER

AIバブルをどう見ればいいのか。

一つの目安は、やはりPERである。

もしAI関連企業が80倍、100倍のPERで買われるようになれば、かなり危険な領域に入る。
2000年のITバブルでは、テクノロジー株が異常なバリュエーションまで買われた。

ただ、現在の主要テック企業は、当時ほど極端ではない。
多くは利益を出しており、PERも異常値というほどではない。

つまり、AI期待は高いが、少なくとも現時点ではITバブル末期と同じとは言い切れない。

ただし、注意すべき点はある。

株価だけが上がり、利益がついてこない。
PERが30倍台後半から40倍台に上がっていく。
AI投資の回収が見えない。
競争が激しくなり、利益率が下がる。
中国や新興企業が既存企業の堀を崩す。

こうした兆候が出てくれば、警戒が必要になる。

Magnificent 7が10年後も同じとは限らない

今の米国市場では、Magnificent 7が圧倒的な存在感を持っている。

Apple、Microsoft、NVIDIA、Amazon、Alphabet、Meta、Tesla。

しかし、10年後も同じ7社が市場を支配しているとは限らない。

過去を見れば、IBMも、Ciscoも、かつては圧倒的な存在だった。
しかし、時代が変わると主役も変わる。

今の巨大企業も同じである。

規制で分割されるかもしれない。
新しいAI企業に脅かされるかもしれない。
利益率が競争で下がるかもしれない。
中国や他国から技術的な突破口が出るかもしれない。

ただし、それは今すぐ売れという意味ではない。

現在のバリュエーションには、ある程度そうしたリスクも織り込まれている。
重要なのは、盲信しないことだ。

「今強い企業が、永遠に強い」と思うのは危ない。

バフェットの凄さは、タイミングを狙わないこと

ウォーレン・バフェットについての話も印象的だった。

バフェットは偉大な投資家だが、その本質は市場のタイミングを当てることではない。

企業を見る。
財務を見る。
価値を見る。
そして長く持つ。

彼は市場全体の上げ下げを頻繁に当てようとはしなかった。
良い企業を見つけて、長く保有する。

有名な言葉がある。

理想の保有期間は永遠。

これは単なる美談ではない。
長期投資の本質をかなり正確に表している。

売買の回数を増やすほど、判断ミスの機会も増える。
税金や手数料も発生する。
感情に振り回される。

だから、優れた投資家ほど、実はあまり動かない。

日本人投資家に必要なのは「始めること」

日本人が米国株投資をためらう理由は多い。

為替が怖い。
円安が進みすぎている気がする。
米国株が高値に見える。
暴落が来そう。
いつ始めればいいか分からない。

しかし、長期投資で最も多い失敗は、
「下がったら買おう」と言いながら、結局いつまでも始めないこと
である。

下落を待つ。
少し下がると、もっと下がる気がする。
上がると、もう高い気がする。
結局、何年も投資できない。

もちろん、一括投資が怖いなら積立でいい。
為替が気になるなら、為替ヘッジ付きの商品を検討してもいい。
しかし、長期で考えるなら、為替変動はインフレ率の差などである程度ならされる面もある。

本当に重要なのは、完璧なタイミングを探すことではない。

始める。
続ける。
暴落を受け入れる。
分散する。
余計な売買をしない。

この基本を守ることだ。

長期投資とは、楽観ではなく設計である

米国株を長期保有するという考え方は、単なる楽観論ではない。

アメリカにも問題はある。
AIにもバブル化のリスクはある。
Magnificent 7も永遠ではない。
暴落も必ず来る。
政治リスクもある。
為替も動く。

それでも、長期で株式を持つ理由がある。

資本主義は、企業が利益を生み、成長し、イノベーションを起こす仕組みだからだ。
その中心に、まだアメリカがいるからだ。
そして、短期の恐怖で市場から降りることの方が、長期リターンを壊しやすいからだ。

長期投資とは、何も考えないことではない。

リスクを理解したうえで、持ち続けられるように設計することだ。

自分のリスク許容度を知る。
生活防衛資金を確保する。
株式と債券、現金の比率を決める。
過度に一つのテーマへ集中しない。
暴落時の行動を事前に決めておく。
そして、相場の騒音に反応しすぎない。

投資で一番難しいのは、正しい情報を集めることではない。

正しい行動を続けることだ。

米国株を永久保有するという考え方は、強い言葉に聞こえる。
しかし、そこにある本質はかなり地味である。

市場を当てようとしない。
長期で持つ。
積み立てる。
暴落を受け入れる。
過熱しすぎたテーマには注意する。
それでも資本主義の成長に居続ける。

結局、長期投資で勝つために必要なのは、派手な予測ではなく、退屈に耐える力なのだと思う。

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