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トヨタはなぜ「二刀流」を強いられたのか?ファーウェイ自動運転が仕掛ける罠

世界中の自動車会社が、自動運転技術にしのぎを削って開発している、そんなイメージありますよね?テスラより中国勢の方が一歩先を行っているなんてことも聞きます。しかしですよ!「トヨタも日産もファーウェイの自動運転技術を採用する」なんてことを聞くと、そりゃあびっくりしますよ。

こんにちは。謎解きのキキです。

今回深掘りするのは、トヨタ・日産も採用 ファーウェイ、自動運転の「頭脳」で狙う世界制覇という日経ビジネスの記事です。

記事の要約は以下のとおりです。

ファーウェイは、自動運転技術「ADS 5」と車載OS「HarmonyOS」を武器に、自動車の“頭脳”を握ろうとしている。
中国では高度運転支援の市場シェアで首位となり、大手自動車メーカー上位10社のうち9社が同社の技術を採用。トヨタや日産、アウディも中国向け車両に導入している。ファーウェイは完成車を造らず、AI、半導体、制御装置、車載ソフトを一体で提供し、商品企画や販売まで支援する。
自らを「電子のネジ」と位置付けながら、実際には自動車メーカーの競争力を左右する存在へ成長している。

なぜ世界のトヨタやアウディまでも、ファーウェイの技術を採用することになったのでしょうか?元の記事だけでは、見えてこない真相に迫るべくビジネス雑誌の編集長のおっちゃんを召喚して議論してみました。

さっそくどうぞ!


第1章:AIが直接ブレーキを踏む日。「悪魔の契約」を受け入れた自動車業界の焦燥

キキ:
おっちゃん、『日経ビジネス』のファーウェイ自動運転の記事、読みました?


おっちゃん:
おお。あれは「中国で部品が売れてまっせ」っちゅう呑気な話やない。自動車業界が根底からひっくり返る記事やで。


キキ:
ファーウェイが「車のインテル+Windows」をセット売りしているような、うまいビジネスだなと思ったんですが。


おっちゃん:
キキ、普通の自動運転ってどういう仕組みか知っとるか?
AIが「脳」、ブレーキが「筋肉」やとしたら、その間にメーカーが作る「神経(制御ソフト)」があるんや。


キキ:
なるほど。AIが「止まれ」と判断しても、最終的にブレーキを何%踏むかを決めるのは、車体を作ったメーカー側の「神経」が握っているわけですか?


おっちゃん:
せや。だから、いくらAIが賢くなっても、車を作るメーカーの存在意義は絶対に残る……はずやったんや。


キキ:
はずだった?


おっちゃん:
その「脳と神経の境界線」がな、今まさに消し飛んだんや。


キキ:
消し飛んだ……? どういうことです?


おっちゃん:
記事にあった「End-to-End(エンドツーエンド)自動運転」って言葉。あれが今の最前線であり、最大のブラックボックスなんや。


キキ:
エンドツーエンド……入り口から出口まで。まさか、間にメーカーの制御ソフトを挟まない?


おっちゃん:
せや! カメラの映像を取り込んだら、巨大な一つのAIが直接「ハンドルの角度」や「ブレーキの強さ」をバチッと制御しよる。人間のエンジニアが書いたルールは一切ナシや。


キキ:
ちょっと待ってください。それじゃあ……「AIがなぜそのタイミングで急ブレーキをかけたのか」が分からないってことですか?


おっちゃん:
そう、作った天才エンジニアでさえ後から解析できへん。入力と出力が直結した完全なブラックボックスや。


キキ:
いや、それは怖すぎますね。もし事故が起きたら、「AIの判断です、理由はわかりません」になるじゃないですか。メーカーとして安全の責任が取れないでしょ?!


おっちゃん:
そういうこっちゃ! 車は命を乗せて走るもんや。ファーウェイの技術が凄まじいからこそ、メーカーは「自社の車のコントロール権を完全に失う」という恐怖と戦っとるんやで。


キキ:
ただの部品調達じゃない、「悪魔の契約」ですね。……だとしたら、なぜ中国のトップメーカーはこぞって採用しているんですか? 矛盾してませんか?


おっちゃん:
そこや。実はメーカーも最初は「そんなもん絶対に載せへん!」と猛反発しとったんや。でもな、ファーウェイは彼らに「YES」と言わせる、とんでもなく狡猾な罠を仕掛けたんやで。


第2章:ファーウェイの逆転劇。「支配」を捨てた仲間づくりと、見えない地政学の壁

キキ:
「狡猾な罠」って、一体ファーウェイは何をしたんですか?


おっちゃん:
それを解く鍵はな、数年前に起きた「魂と肉体」事件や。


キキ:
魂と肉体? なんです?それ


おっちゃん:
中国最大手の上海汽車ってメーカーがな、ファーウェイの自動運転を名指しで拒否したんや。「彼らに頭脳を任せるのは、自社の『魂』を渡すことだ。我々はただの『肉体(ドンガラ)』になってしまう」ってな。


キキ:
なるほど。さっきの「脳と神経」の話と同じですね。メーカーが下請けの組み立て屋に成り下がる恐怖を、中国メーカー自身が一番分かっていたと。


おっちゃん:
せや。だから最初はファーウェイも苦戦したんや。そこで彼らは「支配者」になるのを諦めた。


キキ:
諦めた? でも記事には、今や中国のトップ10社のうち9社が採用していると……。


おっちゃん:
自動運転部門を別会社として切り離してな、自動車メーカーたちに「出資」させたんや。「ファーウェイのシステムを買え」やのうて、「みんなでお金を出し合って、最強の頭脳を『共同保有』しようや」と誘った。

ファーウェイ自動運転部門の別会社
引望(インワン、Yinwang)
正式名称は深圳引望智能技術有限公司

元々はファーウェイ社内の「智能汽車解決方案BU(自動車ソリューション事業部)」でしたが、2024年に独立会社として分社化された。
分社化の際、自動車メーカー側に出資を呼びかけ、単独の「ファーウェイの製品」ではなく「業界で共同保有する頭脳」という位置づけに転換。

出資構成
ファーウェイ:80%
阿維塔科技(Avatr Technology、長安汽車系):10%
賽力斯集団(Seres Group、問界の親会社):10%

キキ:
……なるほど! 「支配される」から「仲間になる」へ見せ方を変えたんですね?


おっちゃん:
その通り!「これはファーウェイの頭脳やない、ワシら中国連合の頭脳や!」と思わせることで、メーカーの警戒心を一気に溶かしたんや。マジで恐ろしいしたたかさやで。


キキ:
確かにそれは逆らえないですね。……でもおっちゃん、一つ引っかかります。


おっちゃん:
お、なんや?


キキ:
もしその「共同保有の頭脳」がそれほど優れているなら、中国向けと言わず、世界中で使えばいいじゃないですか。なぜトヨタや日産は、中国市場だけで使う「二刀流」なんて面倒なことをしているんですか?


おっちゃん:
キキ、鋭いな。実はそこが、この記事で一番見落とされがちな「裏側のリアル」なんや。彼らは二刀流を「選んだ」んやない。


キキ:
選んだんじゃない?


おっちゃん:
「強制されとる」んや。キキ、最新の自動運転車って、カメラやセンサーの塊やろ?


キキ:
はい。周囲の状況を常に読み取って……あっ。


おっちゃん:
気づいたか。


キキ:
それって、街中を走り回る「超高画質の監視カメラ」じゃないですか。道路も、建物も、人の動きも、全部データとして吸い上げられる。


おっちゃん:
その通りや。だからアメリカやヨーロッパは「データ安全保障」を理由に、中国系の自動運転システムを絶対に自国の道路に入れへん。事実上の締め出しや。


キキ:
なるほど……地政学的な壁ですか。じゃあ、トヨタや日産は、ファーウェイの技術がいくら喉から手が出るほど欲しくても、欧米では使えないから自社で開発するしかないと。


おっちゃん:
そういうこっちゃ。中国という血みどろの激戦区を生き残るために「悪魔の契約」を結びつつ、西側諸国のためには莫大な金を使って自前の頭脳を育て続けなあかん。これが、今の自動車メーカーが直面しとる地獄の分断(デカップリング)の正体や。


第3章:業界の国会「AUTOSAR」を完全無視せよ。未来のプラットフォームを巡る残酷なサバイバル

キキ:
地獄の分断……。でもおっちゃん、国や陣営でシステムが分断されるなら、せめて業界全体で「共通のルール」を作ればいいんじゃないですか?


おっちゃん:
共通のルール?


キキ:
ええ。さっきの「神経」の部分、つまりソフトウェアを繋ぐ規格だけでも世界標準にすれば、各社がゼロから開発する手間は省けますよね。AUTOSAR(オートザー)のような、ルールを決める業界団体があるって聞いたことがあります。


おっちゃん:
おお、よう知っとるな! AUTOSARはまさに車メーカーや部品会社が350社以上集まって共通仕様を作る、いわば「業界の国会」や。


キキ:
じゃあ、その国会でしっかり話し合って、自動運転のルールを世界で統一すれば……。


おっちゃん:
ところがどっこい。その「国会」が、今、最大の弱点になっとるんや。


キキ:
弱点? みんなで合意したルールなら安全じゃないですか。


おっちゃん:
安全やし確実や。でもな、350社で「この仕様書の文言、どうしましょ?」ってちんたら会議しとる間に、中国勢やテスラは何をしとると思う?


キキ:
……まさか。


おっちゃん:
「そんなトロい会議、付き合ってられるか!」って、国会を完全無視して、自分たちだけで超高速・超軽量な独自ルールを作ってしもうたんや。


キキ:
ええっ!? 業界標準を無視ですか!?


おっちゃん:
日本や欧州の巨大メーカーが真面目に会議室でハンコをつき合ってる間に、スマホ屋上がりのファーウェイやシャオミは、スマホを作るのと同じスピードで1年半ごとに最新のAIを積んだ新型車をバンバン市場に出しとる。国会を通さず、独裁で決めるから早いんや。


キキ:
……なるほど。おっちゃん、ようやく今回のニュースの本当の恐ろしさが繋がりました。


おっちゃん:
ほう、言うてみぃ。


キキ:
これって、「どうやって良い車を作るか」という製造業の話じゃないんですね。結局、いつも行き着くところと同じだ。「誰がルールを決める側になるか」、つまり主導権の奪い合いなんだ。


おっちゃん:
せや! そこに気づいたんはデカいで。


キキ:
テレビがGoogleにOSを握られたように、車も「走るスマホ」になれば、結局プラットフォームとデータを握った者が全てを支配する。トヨタや日産が戦っているのは、ファーウェイの技術そのものじゃなくて、「未来の支配権」なんですね。


おっちゃん:
その通りや。「ええ車を作れば勝てる」っちゅう時代は終わったんや。


キキ:
ルールを守る者が勝つか、ルールを破壊するスピードが勝つか……。


おっちゃん:
車メーカーがただの「ドンガラ(肉体)の組み立て屋」に成り下がるか、それとも自分たちの「魂(頭脳)」を守り抜くか。この歴史的な下克上の決着は、あと数年で確実に出るで。


第4章:問界の業績不振

~キキの頭の中~

おっちゃんとの会話が終わって、キキはパソコンの画面を見ていた。

第1章は、AIがブレーキまで飲み込んで、脳と神経の境界線が消えた話。
第2章は、魂を売り渡すのを恐れた中国メーカーが、結局は取り込まれていった話。
第3章は、ルールを作る側と、無視して突っ走る側の、スピード勝負。

——筋は通ってる。10社中9社。トヨタも、日産も。もう答えは出たようなものだ。

そこまで考えて、私は指を止めた。

待てよ。

9社が選んだ。それは事実だ。でも、選んだ先で、みんな笑えてるんだっけ?

検索窓に、指が勝手に走った。「問界 業績」。
出てきた数字に、目を疑った。

問界(AITO)
ファーウェイ(Huawei)と中国の自動車メーカーであるセレス・グループ(賽力斯集団)が共同で展開する人気の高級電気自動車(EV)・スマートカーブランド


2026年上半期、問界の純損失、10.5億元から13億元。1年前は黒字だった、あの問界が。損失が増えている……

なんということだ!

原材料費の高騰。それだけじゃない。智界享界尊界尚界——ファーウェイは同じ技術を積んだ兄弟ブランドを、次々に増やしていた。問界の客も、販売網も、他でもないファーウェイ自身の手で食い合っていた。

智界(Zhijie / Luxeed)
ファーウェイ(Huawei)と中国の自動車大手・奇瑞汽車(Chery)が共同展開するハイエンドEV(電気自動車)ブランドです。最新の自動運転技術や「HarmonyOS」コックピットを搭載している。

享界(Stelato)
ファーウェイ(Huawei)と中国の北京汽車(BAIC)グループが共同で立ち上げた高級新エネルギー車(NEV)ブランドです。フラッグシップEVセダンの「享界S9」などを展開している。

尊界(MAEXTRO)
ファーウェイ(Huawei)と安徽江淮汽車集団(JAC)が共同で立ち上げた最上位の超高級車ブランドであり、初モデルとして「S800」などを展開している。

尚界(Shangjie)
ファーウェイ(Huawei)と上海汽車集団(SAIC)が共同で立ち上げた新エネルギー車(NEV)の自動車ブランドです。15万元(約300万円)台からの主力ボリュームゾーンをターゲットとしている。

覇権を握った、その手の中で。血が流れていた。

——でも、待てよ。

原材料費だけで、ここまで急に転ぶか? 私はもう一度、ネットを検索した。「問界 華為 部品 費用」。

出てきた言葉に、今度は声が出そうになった。

「華為依存症」。

問界は、ファーウェイから自動運転やコックピットといった中核部品を買うたびに、高額な費用を払っている。中国の証券メディアは、それを「ファーウェイ依存症」と呼んでいた。つまり問界の利益を削っている犯人の一人は、まさに問界が採用している、そのファーウェイの技術自体だった。

そして——引望。ファーウェイの技術供給部門。
2022年、2023年と大赤字を垂れ流していたその会社は、2024年、静かに黒字に転じていた。

私は、その2つの数字を並べて、しばらく動けなかった。

問界が血を流すたびに、その血の一部は、ちゃんとファーウェイの口座に流れ込んでいる。

——そういうことか。

技術が強いから勝つ、なんて単純な話じゃなかった。仕組みそのものが、そう作られていた。車を作る側がどれだけ苦しんでも、土俵と看板を持つ側は、必ず取り分だけは確保できるようにできている。負けても取られる。勝っても取られる。

トヨタも日産も、これを知らないはずがない。

——それでも、選んだ。

選びたくて、選んだんじゃない。

このゲームの盤面が、自分たちにとって有利じゃないことくらい、とっくに分かっている。分かった上で、それでも選んだ。選ばなければ、そもそも盤面に呼ばれすらしないから。

「トヨタ・日産も採用 ファーウェイ、自動運転の「頭脳」で狙う世界制覇」

これが、私が記事のタイトルに違和感をもった正体だったのだ...…








最後まで読んでいただきありがとうございました。

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