わたしたちもあなたの国から来たの|昆明の入国審査で考えたこと
中国東方航空を利用して日本を出国し、
昆明(こんめい)の空港に降り立った時
のことだ。
降機の際、私の落とし物を拾ってくれた
南アジア系の家族がいた。
「Thank you, bye」
英語で軽く挨拶を交わし、私はそのまま飛行機を降りた。
それから数十分後。
入国審査(イミグレーション)の長い列に並んでいると、偶然またその家族と再会した。
私が笑って、
「Hello again」
と言うと、お父さんが、
少しいたずらっぽく、
でもどこか嬉しそうにこう言った。
「わたしたちも、あなたの国から来たの。日本語話せるよ〜」
まさか日本語が返ってくると思わず、
私は思わず笑ってしまった。
話を聞くと、
彼らはバングラデシュ出身で、
今は栃木県に住んでいるという。
「日本、もう長いです」
穏やかに笑うお父さんに、
私が「ダッカに行ってみたい」
と言うと、
「え!本気?
うーん……バングラデシュは大変よ」
と大笑いしていた。
ほんの数十分の待ち時間だったが、
私たちはずっと日本語で話していた。
その時、ふとカズオ・イシグロの話を思い出した。
イギリスに渡った彼の両親は、
ずっと「イギリスに
住まわせてもらっている」
という感覚を持っていたという。
目の前の家族も、
「日本に感謝しています」
なんて直接言うわけではない。
でも、礼儀正しくて、少し遠慮がちで、
滞在国への“静かな敬意”
みたいな空気を私は感じていた。
「日本の小学校、楽しい?」
小学三年生だという娘さんにそう聞くと、彼女は少し恥ずかしそうに俯いて、
「……うん、楽しい」
と小さな声で答えた。
その瞬間、なんだか少し面白くなった。
ああ、もう完全に
“シャイな日本の小学生の女の子”
なんだな、と思った。
そういえば以前、
日本育ちのパキスタン人の友人が、
「私、中身ほんと日本人だから」
と何度も言っていたことも思い出した。
長い列に並びながら、
私は彼らの入国カード記入を
少し手伝っていた。
すると突然、
険しい顔をした中国人の移民局員が
やってきて、
「Bangladesh! Pakistan!」
と強い口調で呼び始めた。
私はそこで、ふと現実に引き戻された。
日本語を話して、
日本の学校へ通って、
日本で育っていても、
彼らは“日本人”ではない。
彼らは、他の南アジア系の人たちと一緒に
別室へ連れていかれた。
一方の私は、
日本のパスポートを提示し、
そのまますんなり入国ゲートを
通過した。
皆さんは、どう感じましたか?
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