本雑綱目 33 陸軍省 歩兵操典
これは乱数メーカーを用いて手元にある約5000冊の本から1冊を選んで読んでみる、ついでに小説に使えるかとか考えてみようという雑な企画です。
(自炊蔵書が4500冊超えたので約5000冊に変更しました。)
今回は陸軍省著『歩兵操典』です。
NDC分類では社会科学>陸軍に分類しています。
読むのは復刻版で、原本というか当時のものも持ってはいるんだけど砂まみれなのでSCANできなかった(使用品)。手のひらに入る小さいサイズの本。
1.読前印象
言わずとしれた日本帝国陸軍の歩兵のための教本。確か漢字カタカナ混じり文だった記憶。歩兵というと銃器の扱いとか塹壕の作り方が書いてあるような気はする。
はりきって開いてみよう~。
2.目次と前書きチェック
この間読んだ前書きの主語が余で時代を感じたが、これの前書きの主語は朕なので明治天皇かと思ったら、署名は陸軍大臣子爵桂太郎だった。朕って皇帝以外使わない印象だったんだけど混乱する。今度調べてみよう。
さて目次だが、1部『基本教練』、2部『戦闘』となっている。正直なところ、集団ベースの近代戦闘についてはあんまり詳しくないのでどこを呼んでいいか悩むところ。一番書きそうなのが小隊の気がする。
1部から第二章小隊修練のうち『散開隊次』、少し長いが2部より第一章『一般ノ原則』を読んでみよう。
3.中身
条文形式になっていて、元々の本が小さいためか字がすごく大きい。
『散開隊次』について。
最初から目からウロコ。軍隊において最も重要なのは命令の正確な伝達で、最初にどの命令がどの行動を求められているかを正確に書いてある。正確にというのは日本語の平易文としてではなく命令の構文としてのもので、『右向け散れ』と『右散れ』は意味する行動が違うのだ。しかも戦時の命令は極力短く行う必要があるものだから、号令の規則を最初に持ってくるのは当然と言える。このへんの書く順番から実用書だなと強く感じる。
それから散開時における射撃の用法と注意点について書かれている。考えれば当然のことでも改めて規律として簡潔に記載されているのはよい。ところどころ理由が付されているところも。
『一般ノ原則』について。
一番最初に練兵場を使う際の心構えが記載されている。確かに戦闘訓練を行う際に、一番に注意すべきところは戦闘技術ではないかもしれない。その後も練兵場の効果的な使用方法や意義が続く。帝国陸軍というと精神論というイメージで、確かにその影響が色濃くあるけれど、この精神論が科学的に正しいかどうかは別として、理屈の通った、というかより精神論を兵士に心理的に影響及ぼし効果を発揮させるような文章になっている、気がする。
全体的に、とても良く考えられた簡潔なマニュアルだ。必要最低限というには十分な情報量(ただし、最低限とか十分とかの評価には個人差はある)があるが、これをいかに簡潔に短くそして伝わることを主眼としたマニュアルで、よほど文を作るのが上手い人か推敲を重ねて作られたのかなという気はする。
簡単な用兵指針も含まれているから、明治から太平洋戦争あたりまでの戦争を描く際の一兵卒というよりはむしろ小隊長用の資料としてはとても有用と思われる。ただしこれはマニュアルで、当然ながら血肉の色がないため、戦闘自体を描くには追加の資料が必要。
4.結び
漢字カタカナまじり文ってパッと見読みづらいけれど、ひらがなにまるっと置き換えられるので目は意外とすぐに慣れる。むしろ「~とす」という語尾が慣れないかもしれないな。
次回はリンスホーデン著 大航海時代叢書 8 『東方案内記』です。
ではまた明日! 多分!
