本雑綱目 35 黒田日出男 謎解き 洛中洛外図
これは乱数メーカーを用いて手元にある約5000冊の本から1冊を選んで読んでみる、ついでに小説に使えるかとか考えてみようという雑な企画です。
今回は黒田日出男著『謎解き 洛中洛外図』です。
ISBN-13は978-4004304357。
NDC分類では芸術. 美術>日本画に分類しています。
1.読前印象
日本画はあんまり詳しくないけど洛中洛外図は知っている。京都市中と郊外を描いたもので、同名の画はたくさんあるのだろうけど、一番有名なのは金ピカなウォーリーを探せみたいなわちゃわちゃした画のはず。謎……、なんだろ。
2.目次と前書きチェック
目次は『<謎>としての上杉本洛中洛外図』、『楽梅雨洛外図の探求案内』、『研究史とその諸画期』、『「一五四七年の京都」説と反論・批判』、『「公方の構想」説と推理の立脚点』、『貴人の大行列と最初の仮説』、『疑問と再考』、『史料の発見と<謎>の解決』、『結論と新たな旅立ち』で構成される。
なるほど、この本における謎とは、いつの時代の京都が描かれたかとその思惑のもよう。それを史料をもとに紐解く本だな。確か上杉本だと確か織田から上杉に送られた版だった記憶だから、その時の京を描くのに何らかの思惑があったとするとそれは興味深いかも。
『<謎>としての上杉本洛中洛外図』と『結論と新たな旅立ち』を読んでみることにします……。ごめん、謎と答えだけみる展開で。
3.中身
『<謎>としての上杉本洛中洛外図』について。
たくさんある図のうち、戦国から安土桃山までに描かれた洛中洛外図が初期のものらしい。平安時代とかは描かれていなかったのかと思ったが、平安時代だと貴族と平民は種族が違うので、一緒に描く発想はなかったかもしれない。
それで問題の上杉本だが、謎のもととなる今谷説によれば、建物の様式から作成期間が天文一六年七月から閏七月の短い期間に限定できるそうだ。それを前提とすれば著者とされた狩野永徳の作ではない(当時4歳)。ってそんなに期間の限定が可能であることに驚き。この今谷説に対して様々な反論がなされたが、著者が述べるにはそのいずれも結論は謎を解決するものではなかった。
そこで著者は①制作時期、②制作者、③注文者、④上杉謙信に贈った者とその時期、を史料をもとに明らかにしたいと述べる。
これは『~の謎』的な本と違って物証と伝聞証拠(文献)から謎を解く、真面目な謎解き本の気がする。論建て方がよくある文系論文と違って筋道だっているので……。それなのにいきなり結論に飛ぶのが心苦しいけれど、今全部読む時間はない(読みやすいから読むのにそれほど時間はかからない気はする。)。でもよく考えたら僕は推理小説は後ろから呼んだりするわけで?
『結論と新たな旅立ち』について。
あっこれ、結論ここで書いちゃいかんやつや(普通に推理モノだわ)。
ふわふわした根拠の薄い誰々が犯人だみたいなものではなく、詳細検討がされてる空気感がある。すごく気に入った一文を紹介してみる。
ーはっきりしていることは、<史料>は発見するものであって、ただやみくもに探すのでも、偶然に頼ってそれが現れるのを待つのでもないということである。<史料>は推理によって発見される。推理なくして発見なしといいたいのである。
まさに探偵の心意気。そうして史料の読み解き自体も其々の解釈によるものだと述べている。これはまさにその通りで、歴史で小説を書くなら史料の隙間を縫って論文では書けないようなオリジナル歴史をクリエイトするところが楽しい、と僕は思っています(が逃げでこの作品はフィクションですとかファンタジーですとか書いちゃう。)。
小説を書くのに役に立つかどうかといえば、信長あたりを書くなら役に立つかもしれない。それはこの洛中洛外図が描かれたのがその時期で、情勢等について検討がされているから。それとは別に推理ものを書くなら手法の参考に読んでみてもいいのかも。
4.結び
内容よりも著者が魅力的な作品……。
ていうかこれ、途中を飛ばし飛ばし呼んだけどこの作者を主人公にしてこの本で小説家いちゃだめかな、駄目だよね。そのくらい、推理探偵的な意気込みを感じる。
次回は明治大学人文科学研究所『明治大学公開文化講座 8 悪』です。
ではまた明日! 多分!
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