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本雑綱目 30 富士川游 日本医学史綱要 1

 これは乱数メーカーを用いて手元にある約4000冊の本から1冊を選んで読んでみる、ついでに小説に使えるかとか考えてみようという雑な企画です。

今回は富士川游著『日本医学史綱要1』です。
東洋文庫258の978-4582802580。
NDC分類では自然科学>医学に分類しています。

1.読前印象
 以前スポット的に少し読んだことがある。その時知りたかったのは明治期の医学で、わりと総覧的な記載をしていたような記憶。僕の話には医者がよくでてくるけど、明治の話も大正の話も医者が出てくるから(しかも同じ一族)わりとよく調べるのです。
 はりきって開いてみよう~。

2.目次と前書きチェック
 わお。序文の主語が余だ。強い。
 この本が書かれたのは今から30年前の明治37年だから、僕が知りたいジャストだったわけだな。どんな治療がされていたかというのは文献で残っているんだけど、当時の空気感がわからないので時代感がわかる本って重要。
 目次は『太古の医学』から始まり『奈良朝以前の医学』、『奈良朝の医学』、『平安朝の医学』、『鎌倉時代の医学』、『室町時代の医学』、『安土・桃山時代の医学』、『江戸時代の医学(ただし江戸中期まで)』と続く。江戸後期以降は2に記載されているのだろう。各章では内科や外科といった近代の分類法に則って記載され、冒頭に当時の医学に影響を与えたものや書物が記載されている。分類がわかりやすくて良い。
 各小項目の分量は薄いので、読むとすれば1つの時代という気はするけれど、当然ながら昔の記述のほうが分量が少ない。2章『奈良朝以前の医学』と3章『奈良朝の医学』、8章江戸時代の医学の中から江戸時代前期及び中期の主に『和蘭流外科』を読んでみることにします。ちょうど奈良後期から平安の頭までを書いてる(そして止まっている)ので。
 この時代は隋唐から医学が入ってきていた時期だが科学と宗教の境目は曖昧で、仏教が今で言うところの最新科学だった時代だ。

3.中身
『奈良朝以前の医学』及び『奈良朝の医学』について。
 時代区分的には文武天皇まで。神功皇后新羅以来、韓医方から外来医学が始まり、その後仏教伝来によって快癒のために祈る対象が神から仏に移り変わり、僧が医師を兼ねることになった。その後唐に人を送り唐医方を学ばせた。
 大宝律令によって様々な決まりが制度化されたた中で医疾令は散逸しているが、逸文を集めればおよそ当時の医学や教育の状況が見えてくる。その後僧医に加えて光明子の時に施薬院ができる、医学の内容というよりは制度論。
 まあ、医科に符咒科が入っている時代なので。
『和蘭流外科』について。
 初期の外科は主に腫瘍治療が主で、灸、海洋治療、針が主だったところ、和蘭医に師事することによって様々な外科が本邦に誕生する。このころの病因は四原液が疾病潰瘍の原因で、潰瘍治療方法は散薬、針または糸の浸潤による膿出し、創傷治療は局所縫合、卵液を塗布した木綿による圧迫止血、結紮、摩擦、冷却であり、手術としては小規模切開程度だった。
 中期、この状況が変わったのは古医方による実験的な解剖学の発展で、解体新書に基づき人の体の内側というものが日本語によって再定義された。
 今回は和蘭外科を読んだけれども、それぞれの体の部位に応じてそれぞれの時代でどのような治療を行われていたのかが書かれている。それぞれの項目が短いので、江戸時代以前の医者を書くのであればざっと一読するといい感じ。派閥なんかも書いてあるから、弟子入りとかの参考にもなります。でも昔の医者を真面目に書く人ってあんまりいないような気はする。

4.結び
 医学といっても太古は祈祷から始まるものだから、それが時代が下るにつれてどのように疾病について解釈されていくかという点でなかなか興味深いものの、それぞれの記述が少ないので、リアリティを出すには追加の書籍が必要と思う。主に内科分野になるけれど、これ系統で一推しは『「腹の虫」の研究』という本で、特に明治大正あたりを書くならおすすめです。
 次回は『史學雑誌 No108-7』です。
 ではまた明日! 多分!

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